「うちの子、1日に何グラムあげればいいの?」と袋の裏を見ても、体重の欄が「2〜3kg」「3〜5kg」とざっくりしていて、どの数字を選べばいいか迷う飼い主さんは多いはずです。特に小型犬は1日のごはんの量そのものが少ないので、スプーン1杯の差が思いのほか体重に響きます。
結論から言うと、小型犬の餌の量は「理想体重」「係数」「フードのME(代謝エネルギー)」の3つがわかれば計算できます。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」には、体重から1日に必要なエネルギーを出し、それをフードに表示されたカロリーで割ってグラムに直す式がそのまま載っています。
この記事では、その式を小型犬に当てはめる手順を、3kgの成犬を例に1ステップずつ計算します。係数の選び方、パッケージの給与量表との付き合い方、体型での答え合わせ、おやつを与える日の組み立て方まで、「なぜその数字になるのか」から説明していきます。
・RER(体重×30+70)→DER(×係数)→グラム換算(÷ME×100)の3ステップ
・去勢・避妊、子犬、シニア、肥満傾向で係数がどう変わるか
・パッケージの給与量表と計算結果がずれたときの考え方
・BCSと週1回の体重測定で量を微調整するコツ
小型犬の餌の量計算は「理想体重・係数・ME」の3つで決まる

計算と聞くと身構えてしまいますが、使うのは掛け算と割り算だけです。まずは式の全体像と、それぞれの数字が何を意味しているのかを押さえましょう。
必要なのは「理想体重」「係数」「袋のME」の3つだけ
1日のごはんの量を出すのに必要な材料は、愛犬の理想体重、成長段階や活動量に応じた係数、そしてフードの袋に書かれたME(代謝エネルギー)の3つです。環境省のガイドラインでは、まず体重から安静時のエネルギー要求量(RER)を出し、係数を掛けて1日当たりのエネルギー要求量(DER)を求め、最後に「1日当たりの食事量=A÷B×100」(A=DER、B=フードに表示された代謝エネルギー)でグラムに換算する流れが示されています。つまり「どれだけエネルギーが要るか」と「そのフードが100gでどれだけエネルギーを持っているか」を突き合わせているだけなんです。よくあるのが、係数やMEを飛ばして「体重3kgだから表の3kgの欄」とだけ決めてしまうパターン。これだと、同じ3kgでも子犬と去勢済みの成犬の違いや、フードごとのカロリーの差が反映されません。3つの数字をメモ帳に書き出してから計算を始めると、どこで数字を選んだかが後から見直せるので、量を調整するときにも迷いにくくなります。
RERは「一日じっとしていても使うエネルギー」
RER(安静時エネルギー要求量)は、散歩も遊びもせず静かに過ごしていても、体温の維持や呼吸、内臓の働きのために使うエネルギーのことです。環境省ガイドラインの簡易式は「RER(kcal)=体重(kg)×30+70」。たとえば体重5kgなら5×30+70で220kcal、3kgなら3×30+70で160kcalになります。ここで「+70」が付いているのがポイントで、体重に単純に比例するわけではなく、小さな体でも最低限の土台となるエネルギーがある、という考え方が式に表れています。やりがちな誤解は、RERをそのまま「1日に食べさせる量」だと思ってしまうこと。RERはあくまで安静時の値なので、実際に動き回って暮らす犬にはここに係数を掛けたDERが必要です。RERだけで給餌量を決めると、多くの犬で不足側に振れてしまいます。計算するときは「RERは土台、DERが本番」と覚えておくと取り違えません。
RER=安静時エネルギー要求量。簡易式は体重(kg)×30+70(体重2〜45kgの場合)。
DER=1日当たりのエネルギー要求量。RER×係数で求める。
ME=代謝エネルギー。食事中のエネルギーから尿や便に出ていく分を差し引いた、体が実際に利用できるエネルギー。袋には「○kcal/100g」の形で書かれていることが多い。
簡易式と0.75乗の式、小型犬はどちらを使う?
RERの出し方には、環境省ガイドラインの簡易式のほかに「RER=体重(kg)の0.75乗×70」という指数式もあり、栃木県動物愛護センターはこちらの式で解説しています。小型犬の多くはどちらを使っても近い値になり、3kgなら指数式で約160kcal、簡易式でも160kcalとほぼ一致します。注意したいのは、環境省の簡易式には「体重2〜45kgの場合のみ計算可」という適用範囲があることです。チワワやトイ・プードルなどで、体重がこの範囲の下限に届かない超小型犬の場合、簡易式は範囲外になります。そのため指数式を使うか、かかりつけの獣医師に必要カロリーを確認するのが確実です。指数式は電卓の「x^y」キーやスマートフォンの関数電卓で計算できます。やりがちな失敗は、範囲外の体重に簡易式を当てはめて、出た値をそのまま信じてしまうことです。式には「使ってよい条件」がある、という点だけは頭の片隅に置いておきましょう。
今の体重で計算すると、太り気味の子はもっと太る理由
計算に使う体重は「今の体重」ではなく「理想体重」です。環境省のガイドラインにも「このときの体重とは、現在の犬や猫の体重ではなく、理想体重のことを示しています」とはっきり書かれています。理由はシンプルで、少し太っている犬の今の体重で計算すると、その体重を維持するためのエネルギーが出てしまい、体型が戻らないからです。逆に痩せている犬を今の体重で計算すれば、必要量を低く見積もることになります。飼い主さんがやりがちなのは、「最近ちょっと増えたけど、いまの体重で計算しておけば安全だろう」という判断。これは安全側ではなく、現状維持側の計算です。理想体重は体型の評価(BCS)を参考に求めますが、環境省は「現在の体重とBCSから理想体重を求めるには、獣医師に診てもらうことをおすすめします」としています。健康診断やワクチン接種のついでに「この子の理想体重はどれくらいですか」と聞いておくと、計算の土台がぶれません。
係数1.6は誰向け?年齢・去勢・体型で変わる掛け算の中身
RERに掛ける「係数」は、その犬の暮らし方や成長段階を数字にしたものです。ここを間違えると、計算の他の部分が正確でも結果がずれます。
去勢・避妊済みの成犬は「1.6」が出発点
環境省ガイドラインの計算例は、体重5kgで避妊・去勢済みの犬を想定し、「220×1.6(係数)=352キロカロリー」としています。去勢・避妊済みの成犬は1.6、未去勢・未避妊の成犬は1.8とする獣医師監修の解説が複数あり、家庭で暮らす小型犬の多くはこのどちらかが出発点になります。去勢・避妊後に係数が下がる理由は、ホルモンの変化で必要なエネルギーが減りやすいとされているためです。やりがちな失敗は、手術前と同じ量を手術後もそのまま続けてしまうこと。係数1.8から1.6への変化は、同じ体重でも1日のカロリーがそのぶん下がることを意味します。手術を受けたタイミングは、ごはんの量を見直すきっかけとしてカレンダーに書いておくとよいでしょう。ただし係数は「目安の出発点」であって、その子にぴったりの値を保証するものではありません。後で紹介する体型チェックと組み合わせて使うのが前提です。
| 区分 | 獣医師監修コラムA | 獣医師監修コラムB | 環境省ガイドの計算例 |
|---|---|---|---|
| 去勢・避妊済みの成犬 | 1.6 | 1.6 | 1.6 |
| 未去勢・未避妊の成犬 | 1.8 | 1.8 | 記載なし |
| 生後4ヶ月未満 | 3 | 3.0 | 記載なし |
| 生後4〜9ヶ月 | 2.5 | 2.5 | 記載なし |
| 1歳手前 | 9〜12ヶ月未満:2 | 10〜12ヶ月:2.0 | 記載なし |
| 高齢犬 | 1.1〜1.4 | 1.4 | 記載なし |
| 肥満傾向 | 1.2〜1.4 | 1.4 | 記載なし |
| 減量中 | 1 | 1.0 | 記載なし |
子犬は3→2.5→2と月齢で下がっていく
成長期の子犬は、体を維持するだけでなく骨や筋肉をつくるためのエネルギーも必要なので、係数が大きく設定されています。獣医師監修の解説では、生後4ヶ月未満が3、4〜9ヶ月が2.5、1歳手前が2と、月齢が進むにつれて段階的に下がっていきます。成長のスピードが落ち着いてくると、同じ体重でも必要なエネルギーが減っていくためです。小型犬は大型犬よりも早く成犬の体格に近づくことが多いので、係数の切り替えどきを見逃すと、成長が止まったあとも子犬時代の係数で食べ続けることになります。やりがちなのは「子犬用フードを食べている間は子犬の係数」と思い込むこと。フードの種類と係数は別の話で、係数は月齢と体の成長で決まります。月齢の区切りを迎えたら計算をやり直し、あわせて体重の伸び方も記録しておくと、量の変化に納得感が出ます。子犬の月齢別の量については、こちらの記事でくわしく扱っています。

子犬を迎えて最初に手が止まるのは、「このフードを1回にどれだけ入れればいいの?」という場面ではないでしょうか。パッケージには体重ごとの給与量表があるのに、月齢の…
シニア・肥満傾向の係数が媒体で違うのはなぜ?
上の比較表を見ると、去勢済み成犬や子犬の係数は媒体間でほぼそろっているのに、高齢犬と肥満傾向の犬だけは「1.1〜1.4」と「1.4」のように幅が違います。これは、シニア期や肥満の程度は個体差が大きく、一律の数字に落とし込みにくいからだと考えられます。同じ10歳でも毎日しっかり散歩する子と、ほとんど寝て過ごす子では使うエネルギーがまるで違いますよね。やりがちな失敗は、ネットで見つけた1つの表の数字を「正解」として固定してしまうこと。媒体によって区切りや幅が違う以上、どれか1つを絶対視するより、幅のある値だと理解しておくほうが実態に合っています。シニア犬や肥満傾向の犬の係数は、体型や持病の有無も含めて判断する必要があるため、ここは獣医師に相談して決めるのが近道です。家庭でできるのは、決めた係数で計算した量を与え、体重と体型の変化を記録して次の受診時に見せることです。
季節や散歩の量でも、必要なエネルギーは動く
係数は一度決めたら終わりではありません。環境省のガイドラインでも、季節や運動量によって必要なエネルギー量は変わるため、定期的に体重をはかって食事量を見直すよう書かれています。たとえば、夏の暑い時期に散歩の時間が短くなった、冬に室内で過ごす時間が長くなった、家族の生活が変わって遊ぶ時間が増えた——こうした変化は、表の係数には現れませんが体重には現れます。やりがちなのは、係数の数字だけを見直そうとして「今の季節は1.5くらいかな」と独自の値を作ってしまうこと。出所のない係数を足しても精度は上がりません。代わりに、計算で出した量を基準に、体重の推移を見ながら少しずつ増減させるほうが確実です。生活の変化があった月は、体重測定の記録に「散歩が減った」などひと言メモを添えておくと、量を変えた理由が後から振り返れます。
kcalをグラムに直す——袋の「ME」で割るだけの理由

DERが出たら、いよいよ「何グラム」に変換します。ここで使うのが、フードの袋に書かれている代謝エネルギー(ME)です。
MEは「100gあたり何kcal使えるか」の表示
MEは代謝エネルギーの略で、食事に含まれるエネルギーから尿や便に出ていく分を差し引いた、体が実際に利用できるエネルギーを指します。袋の成分表示の近くに「ME=○kcal/100g」「代謝エネルギー○kcal/100g」のように書かれていることが多く、環境省のガイドラインにも「多くのフードではkcal/100gも記載されています」とあります。動物用医薬品メーカーの解説では、犬の代謝エネルギーの計算に、たんぱく質と炭水化物は3.5kcal/g、脂肪は8.7kcal/gという係数が使われると説明されています。脂肪が多いフードほどMEが高くなりやすいのはこのためです。やりがちな見落としは、「粗たんぱく質」「粗脂肪」などの成分値の欄だけを見て、カロリーの欄を探さないこと。100gあたりの表示なのか、1カップあたりや1袋あたりなのかも必ず確認しましょう。単位が違うまま計算すると、答えが大きくずれます。
3kgの去勢済み成犬で実際に計算してみる
理想体重3kgの去勢済み成犬で、ME350kcal/100gのドライフードを与えるケースを計算してみます。Step1で3×30+70=160kcalのRERが出ます。Step2で係数1.6を掛けると約256kcal、これが1日に必要なエネルギー(DER)です。Step3で256÷350×100を計算すると約73g。これが1日分のフードの量になります。朝夕の2回に分けるなら、この73gを2つに分ければ1回分です。この計算の良いところは、途中の数字がすべて意味を持っていることです。「256kcal」は、おやつを与える日の上限計算にも使えますし、フードを替えたときの再計算にもそのまま流用できます。一方で注意したいのは、73gはあくまで計算上の出発点だということ。フードメーカーの給餌量ガイドにも「この食事量は開始時の目安です」と書かれている通り、実際にはこの量でしばらく続けて体重と体型を見ながら調整していきます。計算は答えではなく、調整のスタート地点を決める作業です。
フードを替えたら、同じグラム数でも量が変わる
MEはフードごとに違うので、フードを替えたら計算もやり直す必要があります。たとえば同じ256kcalを与えたい場合、ME350kcal/100gのフードとME400kcal/100gのフードでは、MEが高いほうが必要なグラム数は少なくなります。見た目の量が減るので物足りなく感じるかもしれませんが、摂っているエネルギーは同じです。逆にMEの低いフードへ替えたときは、グラム数を増やさないとエネルギーが不足します。フードの切り替え時は、新旧のフードそれぞれでStep3の割り算をしておき、混ぜる割合に合わせて量を組み立てると過不足が出にくくなります。
【状況】前のフードで体重が安定していたので、新しいフードも同じグラム数で与え続けた。【原因】MEが違えば同じグラム数でも摂取カロリーが変わる。MEの高いフードに替えれば多めに、低いフードに替えれば少なめに食べていることになる。【対策】袋が変わったらMEを確認し、DER÷ME×100で必ず計算し直す。切り替え後2〜3週は体重測定の記録を細かめに取る。
パッケージの給与量表と計算結果、ずれたらどちらを信じる?
計算した量と袋に書かれた給与量が一致しないことはよくあります。どちらかが間違っているわけではなく、それぞれの役割が違うのです。
総合栄養食には体重ごとの給与量が表示されている
ペットフード公正取引協議会の説明では、総合栄養食には「成長段階」と「体重ごとの給与量、給与回数」を表示することになっています。一方、おやつなどの間食には「給与限度量」と「給与回数や与え方」を表示します。つまり、主食として与える総合栄養食の袋を見れば、メーカーがその製品について想定している体重別の量が必ずわかるわけです。環境省のガイドラインでも、フードを与える際には「製品のパッケージに表示されている食事量を目安に与えるようにしましょう」とされています。やりがちな見落としは、一般食(その他の目的食)の缶詰やトッピング用フードの給与量を、主食の量と同じ感覚で読んでしまうこと。表示区分が違えば、給与量の意味も違います。袋の裏では、まず「総合栄養食」の表示があるかを確認し、そのうえで給与量表を読みましょう。
表の数字が「○〜○g」と幅になっている理由
パッケージの給与量表は、多くの場合「体重2〜3kg:○〜○g」のように幅で書かれています。これは、同じ体重でも去勢・避妊の有無、年齢、運動量によって必要なエネルギーが違うため、一つの数字に絞れないからです。表の幅は、係数の違いをまとめて吸収しているとも言えます。子犬用フードの給与量表には、月齢と成犬時の体重の目安を縦横に並べ、交わるマスを読む形式のものもあります。やりがちなのは、幅の上限を「満腹にさせてあげたい」という気持ちで選んでしまうこと。運動量が少なめの室内犬や去勢済みの子なら、下限寄りから始めて体型を見るほうが合う場合が多いはずです。獣医師監修の解説でも、フードパッケージの給餌量は「あくまで目安」とされています。表の幅のどこに自分の犬が入るかを判断する材料として、前の章で出した計算結果が役立ちます。
パッケージの給与量表は「その製品を与える前提でメーカーが想定した体重別の目安」、計算式は「この子の条件(理想体重・係数)を反映した目安」。どちらも出発点なので、表の幅の中で計算値に近いところから始め、体重と体型で調整するのがいちばんぶれにくい使い方です。
計算とパッケージがずれたときの考え方
計算値が表の幅の中に収まっていれば、計算値を採用して問題ありません。幅から外れる場合は、どこかの前提が違っていないかを見直すサインです。よくある原因は、今の体重(理想体重ではない)で計算している、係数を未去勢の1.8のまま使っている、MEを100gあたりではない単位で読んでいる、の3つです。前提を直しても差が埋まらない場合は、表の範囲内で計算値に近い量から始め、2〜4週間ほど体重の変化を見て判断しましょう。読者のタイプ別に言うと、犬を迎えたばかりで計算に自信がない人は、まずパッケージの表の中央付近から始めて体重記録を習慣にするのがおすすめです。フードを替えたりトッピングを足したりする人は、kcalで管理できる計算式のほうが扱いやすくなります。体型が気になり始めた人は、計算に使う体重を理想体重に置き換えるところから見直すと、量の根拠がはっきりします。
体重1kgあたりで見ると小型犬ほど食べる?1gの誤差が効く理由
小型犬の餌の量で特に気をつけたいのが「量が少ないゆえの誤差」です。ここでは、小型犬ならではの事情を理屈から見ていきます。
1kgあたりの必要エネルギーは、体の小さい犬ほど多い
意外と知られていないけれど、体重1kgあたりで比べると、小さい犬ほど多くのエネルギーを必要とします。動物用医薬品メーカーの解説では、体重1kgの犬で132kcal/kg、10kgの犬で74.2kcal/kg、60kgの犬で47.4kcal/kgという試算が示されています。体が小さいと体重に対して体の表面積の割合が大きく、熱が逃げやすいことなどが理由として挙げられます。RERの簡易式に「+70」という固定の上乗せがあるのも、この性質を反映したものです。実は、「小さい犬だから大型犬の何分の一でいい」という単純な割り算は成り立たないんですね。やりがちなのは、多頭飼いで大きい子の量を基準に、小さい子の量を体重比で決めてしまうこと。これだと小型犬のほうが不足側に振れやすくなります。犬が複数いる家庭でも、1頭ずつ理想体重で計算するのが基本です。
数gの目分量が、小型犬では割合で大きく響く
小型犬は1日の量そのものが少ないので、同じ数gの誤差でも、全体に占める割合が大きくなります。3kgの成犬の例では1日約73gでしたから、ひとつかみ多めに入れるだけで、その日の摂取カロリーは目に見えて上振れします。大型犬なら誤差の範囲で済む量でも、小型犬では毎日積み重なって体重に表れやすいのです。ペットフードメーカーの解説でも、フードは目分量ではなくきちんと量って与えることが勧められています。
【状況】付属の計量カップで「すりきり半分」を毎回すくっていたら、数か月で体重がじわじわ増えていた。【原因】ドライフードは粒の形や大きさで同じ容積でも重さが変わり、すくい方によっても量がぶれる。小型犬は1日量が少ないため、そのぶれが割合で大きく出る。【対策】キッチンスケールで重さを量る。スケールがないときは、一度スケールでカップ1杯の重さを確認し、線を引いておく。
キッチンスケールで量るときの小さなコツ
環境省のガイドラインでも、フードははかりで重さを量り、はかりがない場合は計量カップを使うよう案内されています。小型犬の量を量るなら、1g単位で表示できるキッチンスケールが扱いやすいでしょう。コツは、食器をスケールに載せて表示をゼロに戻してからフードを入れること。器の重さを差し引く手間が省けます。1日分をまとめて量り、朝・夕の分を分けて小分け容器に入れておくと、家族の誰があげても量がそろいます。やりがちなのは、家族それぞれが「少なそうだから」と足してしまうこと。1日分を最初に決めて取り分けておけば、追加の一握りが起こりにくくなります。食器の選び方は、こちらの記事も参考にしてください。

犬を迎えたとき、フードより先に迷うのが食器かもしれません。ステンレス、陶器、プラスチック、シリコン。売り場には形も高さもさまざまな器が並び、「どれでも同じでは?…
なお、スケールで量るようになったら、その数値と体重をいっしょに記録しておくと、量と体重の関係が見えてきます。「73gで2週間、体重は変わらず」といった記録が、次の調整の根拠になります。
計算が合っているかは体型で答え合わせ——BCSと週1回の体重測定
計算式で出した量は、あくまで出発点です。実際にその量が合っているかは、愛犬の体型と体重の推移が教えてくれます。
BCS3(理想)は、さわって肋骨がわかる体型
環境省のガイドラインでは、ボディコンディションスコア(BCS)について「見た目と触れた状態から、体型(特に脂肪の付き具合)を9または5段階で評価します」と説明しています。5段階では、1が痩せ、2がやや痩せ、3が理想体重、4がやや肥満、5が肥満です。BCS3の犬は、過剰な脂肪の沈着なしに肋骨が触れ、上から見て肋骨の後ろに腰のくびれがあり、横から見てお腹が吊り上がって見えます。小型犬、特に毛量の多い犬種は、見た目だけでは体型がわかりにくいので、手でさわって確かめるのが大切です。やりがちなのは、ふわふわの被毛のせいで「ちょうどいい」と思い込むこと。脇腹に手を当てて、肋骨が軽く触れるかを確かめましょう。
| さわったとき | BCS3:過剰な脂肪の沈着なしに肋骨が触れる/BCS4:脂肪の沈着はやや多いが肋骨は触れる |
| 上から見たとき | BCS3:肋骨の後ろに腰のくびれが見られる/BCS4:腰のくびれは見られるが顕著でない |
| 横から見たとき | BCS3:腹部の吊り上がりが見られる/BCS4:腹部の吊り上がりはやや見られる |
| 量の考え方 | BCS3なら今の量を維持、BCS4以上なら理想体重を獣医師に確認して計算をやり直す |
体重は週1回、抱っこして引き算で測る
環境省のガイドラインでは、体重の測定は週1回程度がおすすめとされ、人が犬を抱いて体重計に乗り、あとで人の体重を引き算する方法が紹介されています。小型犬は抱っこしやすいので、家庭の体重計でも無理なく続けられます。ポイントは、同じ曜日・同じ時間帯(たとえば朝ごはんの前)に測ること。食後や排泄の前後で数値が揺れるので、条件をそろえるほど変化が読み取りやすくなります。やりがちなのは、たまに測って増減に一喜一憂すること。1回の数値より、数週間の流れを見るほうが大切です。スマートフォンのメモやカレンダーに「体重・その週のフード量・気づいたこと」の3点を書くだけでも、立派な記録になります。小型犬はわずかな体重の変化でも体型に出やすいので、記録が量の調整を支えてくれます。
増えた・減ったときの量の動かし方
体重が数週間続けて増えている、BCSが4寄りになってきた、というときは、まず計算の前提を見直します。今の体重で計算していないか、おやつやトッピングのカロリーを差し引いているか、係数は今の暮らしに合っているか。前提を直したうえで、それでも増えるなら少しずつ量を減らし、また数週間様子を見ます。一度に大きく減らすと空腹でストレスがたまり、盗み食いや催促が増えることもあるので、小刻みに動かすのがコツです。逆に痩せてきたときも同じで、前提を確認してから少しずつ増やします。やりがちなのは、体重が増えた途端にごはんを大幅に減らすこと。環境省のガイドラインも、本格的なダイエットが必要な場合は必ず獣医師の指導の下で行うよう書いています。減量が必要そうなら、自己流で削る前に理想体重と目標のペースを獣医師と決めましょう。

散歩の距離は変えていないのに体重がじわじわ増えている、健康診断で「少しふっくらしてきましたね」と言われた。そんなときに真っ先に浮かぶのが「ダイエットフードに替え…
子犬・シニア・おやつがある日はどう組み立てる?
ここからは、生活のステージや場面ごとに、計算をどう応用するかを見ていきます。
子犬は係数も回数も大きい——栃木県の計算例で見る
栃木県動物愛護センターは、生後2ヶ月・体重3kg・代謝エネルギー400kcal/100gのフードを1日2回与えるケースで計算例を示しています。RERは159.56、活動係数3を掛けたDERは479kcal、1日の給餌量は479÷400×100で約120g、1回あたり60gという流れです。同じ3kgでも、去勢済み成犬の例(約73g)と比べると、子犬の必要量がどれだけ大きいかがわかります。子犬期は係数が大きいうえ、成長にあわせて体重が変わっていくので、計算も頻繁にやり直す必要があります。回数については、6〜12週齢は1日4回、3〜6ヶ月は1日3回、6〜12ヶ月は1日2回を目安とするメーカーの解説があります。子犬は消化機能が未熟で、空腹が長く続くと低血糖を起こしやすいとされているためです。栃木県の例は1日2回の設定ですが、回数は月齢や体格で考え方が分かれるので、特に超小型犬の子犬は獣医師に相談して決めると安心です。
| 項目 | 子犬(6〜12週齢) | 子犬(3〜6ヶ月) | 6ヶ月以降・成犬・シニア |
|---|---|---|---|
| 回数の目安 | 1日4回 | 1日3回 | 1日2回(成犬は朝・夕、7歳以上も2回を継続) |
| 1回量の出し方 | 1日量(DER÷ME×100)を4等分 | 1日量を3等分 | 1日量を2等分 |
| 気をつけたい点 | 空腹の時間を長くしない | 月齢の区切りで係数と量を再計算 | 規則正しい時間帯で与える |
シニア犬は「量を減らす」より体型を見て決める
シニア犬の係数は、獣医師監修の解説で1.1〜1.4や1.4と幅があり、一律には決められません。年齢を重ねると運動量が落ちて必要なエネルギーが減る子がいる一方で、食が細くなって体重が落ちていく子もいるからです。「シニアになったから減らす」と年齢だけで判断すると、痩せ始めている子の量まで削ってしまうおそれがあります。やりがちな失敗は、7歳の誕生日を境に機械的に量を減らすこと。まずは今の体重とBCSを確認し、太り気味なら係数を下げ、痩せ気味なら今の量を維持するか見直す、という順で考えます。1日の回数は、成犬期と同じく2回を続けるのが一般的とされています。持病がある場合はフードの選び方そのものが変わることもあるので、量の見直しは定期健診のタイミングで獣医師と相談するのが確実です。シニア期の食事の変え方は、こちらの記事でも取り上げています。
おやつは20%以内、与えたぶん主食を減らす
環境省のガイドラインは「おやつは一日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、また、与えた分だけ主要な食事の量も減らすようにしましょう」としています。3kgの去勢済み成犬なら、DERは約256kcal。おやつはこの20%以内に収め、そのぶんを主食のkcalから差し引いて、残りをMEで割ってグラムに直します。つまり計算の順番は「DERを出す→おやつのkcalを決める→残りを主食に割り当てる」です。やりがちなのは、おやつのカロリーを数えずに主食はいつもの量のまま、というパターン。小型犬は1日のDERそのものが小さいので、ジャーキー数本でも枠を圧迫しやすいのです。おやつの袋には給与限度量が表示されているので、まずはそこを確認しましょう。トッピングで加える肉や野菜も、同じ20%の枠の中で考えると管理しやすくなります。

体重が少しずつ増えてきた、健康診断で脂質の話が出た、シニアになっておなかの調子が変わってきた。そんなきっかけで「せめておやつだけでも脂肪の少ないものに変えたい」…
1日の量を何回に分けるか
計算で出てくるのは「1日分」の量なので、最後に回数で割って1回分を決めます。成犬なら朝と夕方の2回が一般的です。1日1回にまとめると、空腹の時間が長くなり、次の食事でがっついて早食いにつながることもあります。やりがちな失敗は、回数を増やしたときに1回の量をそのままにしてしまい、結果として1日の総量が増えること。回数を変えるときは、必ず1日の総量を先に決めてから割り算しましょう。おやつをしつけのごほうびに使う日は、朝夕の主食から少しずつ取り分けてごほうびに回すと、1日の総量を変えずに済みます。
まとめ:小型犬の餌の量計算で押さえたいこと
小型犬の餌の量計算は、難しい知識がなくても、3つの数字とひと続きの手順さえ押さえればできます。理想体重からRERを出し、係数を掛けてDERにし、袋のMEで割ってグラムに直す。3kgの去勢済み成犬なら、RER160kcal、DER約256kcal、ME350kcal/100gのフードで1日約73gという流れでした。
ただし、計算結果もパッケージの給与量表も、どちらも「開始時の目安」です。小型犬は体重1kgあたりのエネルギー必要量が大きく、1日の量そのものが少ないので、目分量の誤差やおやつの足し算が体重に表れやすい体質でもあります。だからこそ、キッチンスケールで量ること、週1回同じ条件で体重を測ること、BCSで体型をさわって確かめることが、計算と同じくらい大切になります。子犬期は月齢の区切りごとに、シニア期は体型の変化に合わせて、計算をやり直していきましょう。
最初の一歩としては、今日フードの袋を手に取って「ME(kcal/100g)」の欄を探し、メモすることから始めてみてください。そのうえで次の健康診断のときに理想体重を獣医師に確認すれば、この記事の3ステップで、愛犬のための1日量が自分で出せるようになります。計算の根拠は、環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」、栃木県動物愛護センターの解説、ペットフード公正取引協議会の表示ルール、動物用医薬品メーカーの解説、フードメーカーの給餌量ガイドで確認できます。
※最新情報は公式サイトでご確認ください。

コメント