ペットショップや通販で「ドイツ製」と書かれたドッグフードを見ると、なんとなく品質が高そう、安全そうと感じませんか。ドイツは環境や食への意識が高い国というイメージがあり、「オーガニック大国のフードなら間違いない」と考える飼い主さんも多いはずです。ただ、そのイメージのまま選ぶと、袋の表示が本当に伝えている中身を読み落としてしまうことがあります。
先に結論をお伝えすると、袋に書かれた「原産国:ドイツ」は原料がドイツ産という意味ではなく、最終加工工程を完了した国がドイツという意味です。また、ドイツで作られたフードでも日本で売られる以上は日本のペットフード安全法と表示ルールに従っていて、「ドイツ基準だから日本の基準より上」という単純な話ではありません。見るべきなのは国名ではなく、表示区分・原材料の並び・輸入業者の情報です。
この記事では、農林水産省・環境省・ペットフード公正取引協議会の資料と、EUの業界団体FEDIAFの表示規範、EU議会の有機表示の資料をもとに、ドイツ製ドッグフードの表示を「理屈から読む方法」を編集部が整理しました。特定ブランドのおすすめではなく、どのブランドの袋を手に取っても使える読み方をお伝えします。
・「原産国:ドイツ」が原料の産地を示さない理由(最終加工工程のルール)
・ドイツ製でも日本で売るなら必ず載る義務表示5項目と添加物の上限
・EUの「complete pet food」と日本の「総合栄養食」の違い
・ドイツの「Bio」と日本の「無添加」表示が別制度である理由
ドイツ製ドッグフードが「品質が高い」と言われるのはなぜ?

背景にあるのはドイツ独自の法律ではなく「EU共通のルール」
ドイツ製フードの評判の土台にあるのは、ドイツ一国のルールというより、EU加盟国に共通する飼料の規則です。ペットフードも対象になる規則として、EUにはRegulation (EC) No 767/2009(飼料の上市と使用に関する規則)があり、ラベルに何をどう書くかの基本がここで決まっています。
なぜこれが大事かというと、「ドイツ製だから特別」と思われている点の多くが、実はフランス製やイタリア製など他のEU加盟国の製品にも同じように当てはまるからです。原材料を重量の多い順に並べる、ラベルに問い合わせ先を示すといったルールは、EU域内で共通しています。
やりがちなのが、「ドイツ製>EUの他国製」と国名だけで序列をつけてしまうことです。同じ規則のもとで作られている以上、国名の違いで品質を推し量る根拠は弱くなります。むしろ差が出るのは、同じ国の中でもメーカーごとの原材料選びや製造管理のほうです。
パッケージを見るときは、「ドイツ」という国名に反応する前に、原材料の並びと表示区分を確認しましょう。国名はあくまで「どこで最後に加工されたか」の情報で、中身の良し悪しを直接示すラベルではありません。
欧州の栄養の物差しは業界団体FEDIAFのガイドライン
栄養面の基準として欧州でよく参照されるのが、FEDIAF(欧州ペットフード産業連合)が発行するFEDIAF Nutritional Guidelinesです。現在確認できる版は2021年10月の発行で、2010年に設立された科学助言機関(European Pet Food Industry Scientific Advisory Board)が、独立した栄養学の研究者の立場から科学文献の評価を支えています。
ここで押さえておきたいのは、このガイドラインは業界団体の指針であって、EUの法律そのものではないという点です。日本で「総合栄養食」と表示するときに参照される栄養基準(AAFCOの基準など)とも別の物差しになります。つまり「欧州の基準を満たしている」ことと「日本の総合栄養食の条件を満たしている」ことは、同じ意味ではありません。
よくある誤解は、「欧州の栄養基準のほうが厳しいから日本の総合栄養食より上」という比較です。物差しが違うものを並べて優劣をつけることはできません。当編集部ではFEDIAFガイドラインの栄養素ごとの数値を本記事の範囲で比較していないため、どちらが厳しいかという断定もしません。
コツは、日本で買う以上は日本の表示区分で判断することです。ドイツ製でも、日本向けのパッケージに「総合栄養食」と書かれているかどうかを見れば、主食として使えるかの判断ができます。
有機表示「Bio」もEU全体のルールで決まっている
ドイツ製フードの袋でよく見かける「Bio」の文字。これもドイツ独自の認証ではなく、EUの有機規則にもとづく表示です。EU議会の資料によると、ペットフードを有機と表示するには、農産原料の重量で95%以上が有機であることが条件になりました。
この規則は2024年5月1日から適用されていて、比較的新しいルールです。それまでペットフードの有機表示には、食品ほど明確な共通ルールが整っていなかったという背景があります。「bio」「eco」といった言い回しも対象に含まれるため、表現を変えて有機っぽく見せることにも一定の歯止めがかかっています。
ありがちな勘違いは、「Bio=無添加」「Bio=ドイツの国家認証」と受け取ることです。Bioは農産原料の有機比率に関するルールで、添加物をまったく使っていないことを示すものではありません。詳しくは後半で整理します。
パッケージにBioの表記があったら、「農産原料の大部分が有機」という情報として受け取り、添加物や栄養バランスは原材料欄と表示区分で別に確認する、と覚えておくと混乱しません。
Regulation (EC) No 767/2009=EUの飼料の上市と使用に関する規則。ペットフードのラベル表示の基本を定める。
FEDIAF=欧州ペットフード産業連合。表示規範や栄養ガイドラインを発行する業界団体で、法律の制定機関ではない。
Bio=EUの有機規則にもとづく有機表示。ペットフードは農産原料の重量で95%以上が有機であることが条件。
実は「人間が食べられない原料は使えない法律」は一次資料で確認できない
ドイツ製ドッグフードを紹介するページでは、「ドイツには人間が食べられない原料をペットフードに使ってはいけない法律がある」という説明をよく見かけます。意外と知られていないのですが、当編集部が一次資料をあたった範囲では、この主張の根拠となる条文を確認できませんでした。
なぜこうした説明が広まるのかというと、「ドイツは食の安全に厳しい」というイメージと、販売ページの宣伝文句が結びつきやすいからです。出典が示されないまま引用が繰り返されると、いつの間にか「事実」のように扱われてしまいます。
確認できないことを断定して書くのは、読者のみなさんに誤った安心感を与えることになります。そのためこの記事では、この種の主張は扱いません。仮に販売ページでこうした説明を見かけたら、「どの法律の何条か」が示されているかを見てみてください。示されていなければ、宣伝としての表現である可能性を頭に置いておくのが安全です。
「ドイツ製だから」という理由だけで選ぶより、この記事で紹介する表示の読み方を使って、1袋ずつ中身を確かめるほうが確実です。国名の評判ではなく、袋に書かれた事実で判断していきましょう。
袋に書かれた「原産国:ドイツ」は何を意味している?
原産国は「最終加工工程を完了した国」のこと
日本で売られるペットフードの原産国について、農林水産省「ペットフード安全法に関するQ&A」は「原産国は、ペットフードの製造工程のうち、最終加工工程を完了した国を記載します」と説明しています。最終加工工程が完了した国とは「実質的な変更をもたらす行為が最終的に行われた国」のことです。
ここが一番大事なポイントです。原産国の欄に書かれるのは、原料がどこで育ったか、どこで獲れたかではありません。「そのフードとしての形が最後に仕上がった国」です。ですから「原産国:ドイツ」は、ドイツの工場で最終的にフードとして完成した、という意味になります。
たとえば、肉や穀物を複数の国から集め、ドイツの工場で成型して仕上げたフードも、原産国はドイツと表示されます。逆に、原料がドイツ産でも、別の国で最終加工されていればその国が原産国になります。
パッケージを見るときは、「原産国」を「完成した国」と読み替えてください。原料の産地を知りたい場合は、メーカーや輸入業者の公式サイトで原料の調達先について説明があるかを確認するのが近道です。
ドライはエクストルーダー、ウェットはレトルト殺菌が最終工程
では「最終加工工程」とは具体的に何を指すのか。同じ農林水産省のQ&Aでは、フードのタイプごとに示されています。ドライ及びソフトドライタイプは押し出し成型工程(エクストルーダー)、ウェットタイプはレトルト殺菌工程が最終加工工程です。
エクストルーダーとは、原料を混ぜて加熱・加圧し、押し出して粒の形にする機械のことです。ドライフードの粒の形や食感はこの工程で決まるため、ここが「実質的な変更」をもたらす工程と位置づけられています。ウェットフードの場合は、容器に詰めて加熱殺菌する工程で製品として完成します。
この仕組みを知っていると、「どの工程がどこで行われたか」で原産国が決まることが腑に落ちます。粒になった時点、あるいは缶やパウチで殺菌された時点の国が、パッケージに書かれる国名です。
ドライとウェットで最終工程が違うので、同じブランドの製品でもタイプによって原産国が異なる場合があります。ドライとウェットを組み合わせて使う飼い主さんは、それぞれの袋や缶の原産国欄を別々に確認しておくと安心です。
| 場面 | 最終加工工程 | 原産国の扱い |
|---|---|---|
| ドライ・ソフトドライ | 押し出し成型工程(エクストルーダー) | 成型した国が原産国 |
| ウェット | レトルト殺菌工程 | 殺菌した国が原産国 |
| 日本でフレーバー混合 | 最終加工工程に当たらない(ドライ) | 製造国のまま |
| 日本でリパック | 製造行為だが最終加工工程ではない | 国産とは表示できない |
| 最終加工国が不明な輸入品 | — | 通関申告時の原産国を表示 |
出典:農林水産省「ペットフード安全法に関するQ&A」をもとに犬ごはんノートが整理
日本でフレーバーを混ぜても、小分けしても原産国は変わらない
輸入したフードに日本で手を加えた場合はどうなるのでしょうか。農林水産省のQ&Aは、ドライフードの最終加工工程はエクストルーダーなので「その後にフレーバーを混合しても、原産国はA国となります」と説明しています。つまり、ドイツで成型された粒に日本で風味づけをしても、原産国はドイツのままです。
小分けの詰め替え(リパック)についても明確で、「リパックは製造行為には該当しますが、最終加工工程には該当しません。そのため、日本でリパックしても国産とは表示できません」とされています。大袋で輸入して日本で小袋に詰め直しても、「国産」にはならないということです。
これは飼い主にとって安心材料でもあります。日本で少し手を加えたからといって、海外製のフードが「国産」の顔をして売られることは、ルール上認められていないわけです。
一方で注意したいのは、パッケージに日本の会社名が大きく書かれていると、国産品と思い込んでしまうケースです。事業者名の欄と原産国名の欄は別の項目なので、両方を見て「日本の会社が輸入したドイツ製品」なのか「日本で作った製品」なのかを区別しましょう。
最終加工国がわからない輸入品は「通関申告時の原産国」
輸入品の中には、どこで最終加工されたかを輸入業者が把握しにくいものもあります。そうした場合について、農林水産省のQ&Aは「輸入の際の通関申告時の原産国を表示してください」としています。
ルールとして空白を作らないための規定ですが、読み手の立場から見ると、原産国の表示には「最終加工国が明確にわかっているもの」と「通関時の申告にもとづくもの」がありうる、ということになります。いずれにしても、原料の産地を示す欄ではない点は同じです。
ここで起こりがちなのが、「原産国がドイツ=ドイツの原料を使ったドイツ品質のフード」という連想です。これは原産国の定義から見ると飛躍があります。
原料の調達や製造の管理体制を詳しく知りたいときは、パッケージに書かれた事業者(輸入業者)に問い合わせるのが確実です。日本のルールでは、表示や製品について輸入業者がまず責任を負う立場にあるからです。
状況:「原料の産地にこだわりたいからドイツ製を選んだ」のに、実は原料は複数の国から調達されていた。
原因:原産国は「最終加工工程を完了した国」の表示で、原料の産地は義務表示5項目に含まれていないため。
対策:原料の産地を重視するなら、メーカー・輸入業者の公式サイトで調達先の説明を確認するか、事業者欄の問い合わせ先に尋ねる。
日本で売られるドイツ製フードに必ず載っている表示はどこ?

ペットフード安全法の義務表示は5項目
ドイツで作られたフードでも、日本国内で販売されるなら日本のペットフード安全法の基準(環境省)が適用されます。表示が義務づけられているのは、ペットフードの名称、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名及び住所の5項目です。環境省のページでは、原産国名に「最終加工工程を完了した国」と説明が添えられています。
この5項目が「最低限、必ず日本語で確認できる情報」になります。海外製品の袋はデザインが外国語中心のことも多いですが、日本で正規に販売されているものなら、この5項目は確認できるはずです。
やりがちなのは、外国語のラベルを見て「読めないから表示の確認はあきらめる」ことです。日本向けに流通している製品なら、日本語のシールや併記で5項目が示されています。逆に言えば、5項目が日本語で確認できない商品は、日本の流通ルールに沿って販売されているかを慎重に見たほうがよいサインです。
買う前の確認は、この5項目がそろっているかどうかから始めましょう。特に賞味期限と事業者名及び住所は、保管や問い合わせのときに必要になる情報です。
「事業者名」は日本の輸入業者であることが多い理由
ドイツ製フードの袋の事業者欄を見ると、ドイツのメーカーではなく日本の会社の名前が書かれていることがよくあります。これは、日本の制度では製品の輸入や表示について「まずは輸入業者が、その製品に対する責任を負うこととなります」と農林水産省のQ&Aで説明されているからです。
つまり、日本の飼い主から見た窓口は、多くの場合ドイツのメーカーではなく日本の輸入業者になります。原材料の詳しい内容や給与方法の疑問、ロットごとの情報などを知りたいときは、事業者欄の輸入業者に問い合わせるのが筋道です。
ありがちな失敗は、ドイツのメーカーの公式サイトの情報だけを頼りにしてしまうことです。欧州向けと日本向けで表示や仕様の説明が異なる場合もあり、手元の袋の中身と一致しないことがあります。
手元の製品について確かめたいときは、まず袋に書かれた日本の事業者の情報を優先してください。EUのラベル規範でも問い合わせ手段の表示が求められていますが、日本で買った製品なら日本の事業者が最初の窓口です。

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添加物の上限も輸入品に同じように適用される
ペットフード安全法では、表示だけでなく成分の規格も定められています。たとえば酸化防止剤のエトキシキン・BHA・BHTは合計で150μg/g(犬用はエトキシキンが75μg/g以下)、発色剤の亜硝酸ナトリウムは100μg/gが上限です。
この規格は国産品だけでなく、日本で販売される輸入品にも同じように適用されます。「海外製だから日本の基準が及ばない」ということはなく、ドイツ製でも日本の店頭に並ぶ以上は同じ上限を守る必要があります。
ここでよくある誤解が、「ドイツ製は添加物ゼロ、国産は添加物が多い」といった国単位のイメージです。添加物の使い方は国ではなく製品ごとに違いますし、日本で売られるものはどの国の製品であっても共通の上限の中にあります。
添加物が気になる場合は、原材料名の欄を確認しましょう。原材料名には添加物も含めて記載されるので、どんな酸化防止剤が使われているか、あるいは天然由来の成分で酸化を防いでいるかといった情報をここから読み取れます。
目的・内容量・給与方法・成分は公正競争規約が定める
義務表示の5項目以外にも、袋にはさまざまな情報が書かれています。農林水産省のQ&Aによると、目的、内容量、給与方法、成分については、ペットフードの公正競争規約が表示を定めています。
ここでいう「目的」が、総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食といった区分のことです。ドイツ製のフードでも、日本で販売されるなら公正競争規約に沿ってこの目的を表示するのが基本になります。主食として与えられるかどうかは、この目的の表示で判断します。
やりがちなのは、「成分表に数字がたくさん並んでいるから栄養は十分だろう」と、目的の表示を見ずに主食に使ってしまうことです。成分値が書かれていても、それが総合栄養食の条件を満たしているかは別の話です。
袋の裏を見るときは、「5項目(安全法)」と「目的・内容量・給与方法・成分(公正競争規約)」の二層で考えると整理しやすくなります。前者は安全面の最低限、後者はどう与えればよいかの情報です。
ドイツ製でも日本で売られるなら、①義務表示5項目(名称・賞味期限・原材料名・原産国名・事業者名及び住所)②添加物の上限(エトキシキン・BHA・BHT合計150μg/g など)③公正競争規約の目的表示、の3つは国産品と同じルールです。「ドイツ基準だから日本の基準とは別」ではありません。
ドイツから届くフードに、日本の輸入業者はどんな義務を負っている?
輸入業者は事業を始める前に届出が必要
環境省のペットフード安全法の手続きページによると、ペットフードの輸入業者は事業を始める前に、主たる事務所の所在地を管轄する地方農政局等へ届出をする必要があります。農林水産省のQ&Aでは、この届出は「税関申告で貨物の輸入者となる者が行ってください」とされています。
この仕組みがあることで、日本に入ってくるペットフードには、誰が輸入したのかという責任の所在がはっきりします。ドイツ製フードを日本で販売するには、日本側に届出をした輸入業者がいる、ということです。
飼い主が見落としがちなのは、「海外ブランドの製品=海外の会社が直接売っている」と考えてしまうことです。実際には、日本での流通には日本の輸入業者が関わっていて、その業者が日本のルールに沿う責任を担っています。
パッケージの事業者欄に書かれている会社は、この届出と責任を担う立場にあることが多いと考えてよいでしょう。問い合わせや回収情報の確認をするときにも、この事業者名が手がかりになります。
届出だけでなく帳簿・表示・安全基準の遵守も求められる
輸入業者の義務は届出だけではありません。農林水産省のQ&Aには「届出の他に、帳簿の備付け、表示の基準、安全基準(成分規格、製造方法の基準)等を遵守する必要があります」とあります。
帳簿の備付けは、どの製品をいつ、どこから輸入し、どこへ出荷したかを記録しておくことです。万が一問題が起きたときに流通経路をたどれるようにするための仕組みで、回収などの対応にもつながります。表示の基準と安全基準は、前の見出しで見た5項目や添加物の上限などのことです。
ここで押さえておきたいのは、「ドイツ製だから欧州のルールだけ守っていればよい」わけではないということです。日本で販売する以上は、日本の成分規格や製造方法の基準も満たす必要があります。
飼い主として確認できるのは、表示が日本語でそろっているか、事業者の連絡先が明記されているか、といった外から見える部分です。表示がきちんと整っていることは、輸入業者が日本のルールに向き合っているかを判断する材料のひとつになります。
国とFAMICが原則として無通告で立入検査を行う
ルールを定めるだけでなく、守られているかを確かめる仕組みもあります。農林水産省のQ&Aでは、法の遵守状況の確認について「国及び独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が原則として無通告で立入検査を行います」と説明されています。
無通告というのが大事な点です。事前に知らせてから検査するのでは、その日だけ体裁を整えることもできてしまいます。抜き打ちで確認することで、日常的にルールが守られているかを見る仕組みになっています。
この検査は国産品を作る事業者だけでなく、輸入業者も対象です。ドイツ製フードを扱う輸入業者も、日本の制度のもとで監視を受ける立場にあります。「海外製は日本の監視の外」というイメージは、日本で正規に流通している製品については当てはまりません。
飼い主にできることは、日本の事業者がはっきり表示されている製品を選ぶことです。そうすれば、日本の届出・表示・検査の仕組みの中にある製品を手に取っている、と判断しやすくなります。
動物検疫などは安全法とは別の手続き。個人輸入の可否は断定しない
環境省の手続きページでは、ペットフード安全法とは別に、動物検疫・植物防疫の手続きや、動物用医薬品に該当しないことの確認については、事業者自身が担当部署に確認するよう案内されています。肉や植物を原料にするフードは、安全法以外の制度にも関わる可能性があるということです。
ここで気になるのが、海外の通販サイトからドイツのフードを個人で取り寄せられるのか、という点です。当編集部が確認したのは事業者向けのQ&Aと手続きページまでで、個人輸入の可否や手続きについては一次資料で確かめられていません。そのため、この記事では個人輸入ができる・できないを断定しません。
やりがちなのは、「海外通販で買えば安い・珍しい製品が手に入る」と、日本の表示が付いていない商品を気軽に注文してしまうことです。この場合、日本の義務表示5項目や日本の輸入業者という窓口が存在しないことがあります。
個人での取り寄せを考えている場合は、動物検疫を所管する窓口など公的機関に事前に確認しましょう。迷ったら、日本の事業者が輸入し日本語表示がそろった製品を選ぶのが、情報の確かさという点で無理のない選択です。
「complete pet food」と「総合栄養食」は同じものとして読んでいい?
EUのラベルは「complete」と「complementary」の2本立て
ドイツ製フードの外国語ラベルには、英語なら「complete pet food」や「complementary pet food」、ドイツ語ではそれにあたる言葉が書かれていることがあります。FEDIAFの表示規範(2019年版)は、ペットフードでは「A complete pet food for X」または「A complementary pet food for X」の形が最も一般的だと説明しています。
ざっくり言えば、completeはそれだけで食事として成り立つことを意図したフード、complementaryは他の食事と組み合わせて使う補助的なフードという位置づけです。おやつやトッピング用の製品は、多くの場合complementaryの側に入ります。
ただし、この区分はEUのルールの中での言葉です。日本の表示区分とは制度の成り立ちが違うため、用語の響きが似ていても、そのまま日本語に置き換えて読むのは危険です。
外国語のラベルでcompleteかcomplementaryかを確認するのは、製品の性格をつかむうえで役に立ちます。ただし最終的な判断は、日本向けの表示にある目的の区分で行いましょう。
日本の目的分類は4つ。総合栄養食には試験と届出が必要
日本では、ペットフード公正取引協議会が示す目的分類として、総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食の4つがあります。総合栄養食と表示するには、分析試験または給与試験で証明し、ペットフード公正取引協議会への届出が必要で、協議会の会員が表示できる、とされています。
ほかの区分にも表示の条件があります。間食には給与限度量と給与回数や与え方の表示、療法食には対象の状態・体重ごとの給与量や回数・獣医師の指導に基づく給与であることの表示、その他の目的食には給与の仕方と給与量、別途栄養補給が必要な旨の表示が求められます。
つまり日本の総合栄養食は、「日本の制度に沿った試験で証明し、届出をした」という手続きを経た表示です。EUでcompleteとされていることと、日本で総合栄養食と表示できることは、それぞれ別の手続きにもとづいています。
ドイツ製フードを主食にしたい場合は、日本語表示に「総合栄養食」と明記されているかを必ず確認しましょう。療法食と書かれた製品は、獣医師の指導のもとで与えるものです。
| 項目 | 日本 | EU(ドイツ含む) |
|---|---|---|
| 根拠となるルール | ペットフード安全法+公正競争規約 | Regulation (EC) No 767/2009+FEDIAF表示規範 |
| フードの区分 | 総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食 | complete / complementary が一般的 |
| 主食の条件 | 分析試験または給与試験で証明し、公取協へ届出 | 栄養の物差しとしてFEDIAF栄養ガイドライン(業界指針) |
| 原材料の並び | 使用量の多い順(公正競争規約) | 重量の多い順(mixing bowl principle)。重量%の併記も可 |
| 問い合わせ先 | 事業者名及び住所(義務表示) | フリーダイヤルまたはその他の適切な連絡手段 |
| 有機・無添加の表示 | 「無添加」は何が無添加かの併記が条件 | 有機は農産原料の重量で95%以上(2024年5月1日から適用) |
出典:農林水産省Q&A、環境省、ペットフード公正取引協議会、FEDIAF表示規範、EU議会資料をもとに犬ごはんノートが作成
原材料の並び方は「重量の多い順」という点で近い
日本とEUで考え方が近いのが、原材料の並べ方です。FEDIAFの表示規範は、原材料を重量の多い順に記載する(mixing bowl principle)とし、重量のパーセンテージを併記してもよいとしています。ドイツの連邦食糧農業省(BMLEH)の飼料表示のガイドも、半開示方式で原材料を含水状態の重量の多い順に記載すると説明しています。
「含水状態の重量」というのがポイントです。水分を多く含む生肉は、乾燥した穀物に比べて重量が大きく出るため、並び順の先頭に来やすくなります。加工後の粒の中で肉が占める割合と、並び順の印象が一致するとは限らない、ということです。
日本でも公正競争規約で使用量の多い順に記載するルールがあり、並び順から主原料を推測するという読み方は共通しています。ドイツ製の袋でも、先頭に何が来ているかで主原料の見当をつけられます。
コツは、先頭の1つだけでなく上位のいくつかをまとめて見ることです。似た原料が名前を変えて複数並んでいる場合もあるので、全体の組み立てを見て判断しましょう。
「completeと書いてあるから総合栄養食」と読み替える落とし穴
この見出しの話を、ありがちな失敗としてまとめておきます。外国語ラベルにcompleteと書かれているのを見て、「日本でいう総合栄養食だ」と判断し、日本語表示の目的欄を確認せずに主食として使ってしまうケースです。
原因は、似た意味の用語を同じ制度だと思い込むことにあります。前に見たとおり、日本の総合栄養食は日本の試験と届出の手続きを経た表示で、EUのcompleteはEUのルールの中での区分です。用語が近くても、根拠となる手続きは別物です。
特に注意したいのが、日本語表示が十分にそろっていない商品や、海外向けの製品をそのまま扱っている販売ページです。こうした場面では、日本の目的分類がどこにも書かれていないこともあります。
状況:外国語ラベルの「complete pet food」を見て、日本語表示を確かめずに主食として与え続けた。
原因:EUのcompleteと日本の総合栄養食は、根拠となる制度と手続き(日本は分析試験または給与試験+公取協への届出)が別であるため。
対策:主食にするなら日本語表示の目的欄に「総合栄養食」とあるかを確認する。書かれていなければ事業者に問い合わせる。
ドイツの「Bio」と日本の「無添加」はどこが違う?
Bioは「農産原料の重量で95%以上が有機」という条件
EUの有機ペットフード表示は、EU議会の資料によると、ペットフードが農産原料の重量で95%以上有機であることが条件です。根拠はRegulation (EU) 2018/848にもとづくRegulation (EU) 2023/2419で、bioやecoといった表現も含まれます。
注目したいのは「農産原料の」という部分です。有機かどうかが問われるのは農産物由来の原料で、ビタミンやミネラルのような原料は、そもそも有機・非有機という分け方になじみません。つまりBioの表示は、「使っている農産原料の大部分が有機栽培・有機飼育のもの」という情報を伝えています。
ありがちな受け取り方は、「Bio=体にいいものしか入っていない」という広い意味で理解することです。Bioはあくまで原料の生産方法に関する表示で、栄養バランスや添加物の有無を保証するものではありません。
Bioの表記を見たら、「原料の作られ方にこだわった製品」と受け取り、栄養面は目的分類(総合栄養食かどうか)で、添加物は原材料欄で、それぞれ確認しましょう。役割の違う情報を1つの表示に背負わせないのがコツです。
2024年5月から始まった比較的新しいルール
この有機表示ルールは2024年5月1日から適用されています。EU議会の資料では、EU有機ロゴの表示について6か月の猶予が設けられていたことも示されています。
新しいルールだということは、市場に出回っている製品の中に、適用前に作られた在庫や、移行期間中の表示が混在していた時期があったということでもあります。今は適用から時間がたっていますが、古い情報を載せたままの販売ページや紹介記事が残っている可能性はあります。
やりがちなのは、数年前の紹介記事にある「ドイツ独自のオーガニック認証」といった説明をそのまま信じることです。現在の有機表示はEU共通の規則で整理されているので、国独自の認証というイメージで理解するとずれが生じます。
有機にこだわって選びたい場合は、パッケージにEU有機ロゴがあるか、日本向けの説明で有機の根拠がどう書かれているかを確認しましょう。気になる点は、事業者欄の輸入業者に問い合わせると確実です。
日本の「無添加」は何が無添加かの併記が条件
一方、日本で「無添加」と表示するには、ペットフード公正取引協議会の表示ルールが条件を定めています。無添加である原材料名等が明確に併記され、かつ、全ての製造工程でその原材料が使われていないことが確認できる、または添加物便覧に記載の添加物を一切使っていないことが確認できる場合に限り表示できる、というものです。
ポイントは「何が無添加なのか」をはっきり書かなければならない点です。「無添加」とだけ大きく書くのではなく、「着色料無添加」「保存料無添加」のように対象を示す必要があります。ドイツ製フードを日本で「無添加」と売る場合も、このルールが当てはまります。
よくある勘違いは、「無添加と書いてあれば添加物はゼロ」と受け取ることです。併記された特定の原材料が使われていないという意味の場合、それ以外の添加物は使われていることがあります。
無添加の表示を見たら、すぐ近くに「何が」無添加なのかが書かれているかを探しましょう。そのうえで原材料名の欄を見れば、実際にどんな添加物が入っているかを確かめられます。

「無添加のドッグフードなら安心」と思ってパッケージを手に取ったのに、裏返すと原材料欄にカタカナの添加物名が並んでいて首をかしげた。そんな経験はないでしょうか。表…
「Bioだから無添加」「無添加だからBio」はどちらも成り立たない
ここまでをつなげると、BioとBio以外、無添加と無添加以外は、それぞれ別の軸の話だとわかります。Bioは「原料の生産方法」の表示で、日本の無添加は「特定の原材料を使っていないこと」の表示です。
そのため、Bioの製品に添加物が使われていることもありえますし、無添加と表示された製品の原料が有機でないこともありえます。2つの表示を同じ意味のように扱うと、期待していた中身と実際の中身がずれてしまいます。
やりがちなのは、「ドイツのBioなら日本でいう無添加と同じくらい安心」と、別制度の言葉を横並びで理解してしまうことです。制度の出どころがEUと日本で違ううえに、見ている対象も違うので、置き換えはできません。
Bio(EU有機表示)=農産原料の重量で95%以上が有機であることが条件。原料の「作られ方」を示す表示で、添加物ゼロの意味ではない。
無添加(日本)=何が無添加かを明確に併記し、製造工程で使われていないことなどが確認できる場合に限り表示できる。特定の原材料を「使っていない」ことを示す表示。
ドッグフードをドイツ製から選ぶとき、袋のどこをどう読めばいい?
初めて輸入フードを試すなら「日本語表示のそろい方」から見る
海外製フードを初めて選ぶ飼い主さんには、中身の比較より先に、日本語表示がそろっているかを見ることをおすすめします。義務表示の5項目、目的分類、給与方法が日本語で確認できれば、日本の制度に沿って流通している製品だと判断する土台ができます。
理由はシンプルで、表示がそろっていないと、そもそも比較するための情報が手に入らないからです。どれだけ評判のよいドイツ製フードでも、どのくらい与えればよいかがわからなければ、日々のごはんに組み込めません。
ありがちな失敗は、パッケージのデザインや「ドイツ製」の文字に惹かれて買い、家で開けてから給与方法が外国語しか書かれていないことに気づくパターンです。量の目安がわからないまま与えると、与えすぎや不足につながります。
店頭でも通販でも、購入前に日本語表示の画像や説明を確認しましょう。通販なら、商品ページに袋の裏面の画像が載っているかどうかも判断材料になります。
子犬・シニア犬・体調に配慮が必要な犬の場合
子犬やシニア犬、体調に配慮が必要な犬のフードを選ぶときは、国名よりも「その犬のライフステージや状態に合った目的の表示」が最優先です。総合栄養食の表示に、どの成長段階に向けたものかが示されているかを確認しましょう。
なぜかというと、成長期と成犬期、高齢期では必要な栄養やエネルギーの考え方が変わるからです。ドイツ製だからといって、どの年齢の犬にも同じように合うわけではありません。
体調に関わるフードで注意したいのが療法食です。ドイツ製の療法食もありますが、療法食は獣医師の指導のもとで与えるものです。外国語ラベルや販売ページの説明を頼りに、飼い主の判断だけで選ぶのは避けてください。食欲や便の様子がいつもと違うときは、フードを替える前に獣医師に相談しましょう。
ライフステージ別の選び方は、フードの原産国とは切り離して考えるのがコツです。まず年齢や状態に合った区分を決め、そのうえで候補の中にドイツ製があれば表示を読んで比べる、という順番がぶれません。
通販で買うなら「事業者名」と「賞味期限の表示」を確認
ドイツ製フードは通販で探す人も多いと思います。通販では手に取って袋を確認できないので、商品ページで事業者名(輸入業者)と賞味期限の表示の仕方を確認しておきましょう。
事業者名がわかれば、届いた製品について疑問があったときの問い合わせ先がはっきりします。日本の制度では輸入業者が製品についてまず責任を負う立場なので、ここが明記されていることは大事です。
やりがちなのは、価格や送料だけで販売ページを選び、日本語表示のない並行輸入品のような商品を手にしてしまうことです。販売ページの説明が薄い場合、原産国や目的分類、事業者の情報がどこにも見当たらないこともあります。
通販で選ぶときは、商品ページの説明文だけでなく、袋の裏面の写真が掲載されているか、事業者名と住所が読めるかを確認しましょう。確認できない場合は、販売者に問い合わせてから購入を決めると安心です。
グレインフリーや原材料の並びは「国名」と切り離して読む
ドイツ製フードの中には、穀物を使わないグレインフリーをうたう製品もあります。ただ、グレインフリーは国ごとの特徴ではなく製品ごとの設計です。ドイツ製だからグレインフリー、国産だから穀物入り、ということはありません。
原材料の読み方は、日本もEUも「重量の多い順」という点で共通していました。ドイツの表示では含水状態の重量で並べるため、水分の多い生肉が先頭に来やすいことも頭に置いておきましょう。並び順の先頭だけを見て「肉がたっぷり」と判断するのは早計です。
ありがちな失敗は、「ドイツ製・グレインフリー・Bio」と魅力的な言葉が重なった製品を、主食の条件を確認せずに選んでしまうことです。言葉がいくつ重なっても、総合栄養食かどうかは別に確認する必要があります。

「穀物は犬の体に合わないって聞いたけど、グレインフリーに変えたほうがいいの?」「グレインフリーは高いけれど、そのぶん体にやさしいのでは?」。ペットショップの棚で…
まとめ:「ドイツ製」は完成した国。中身は日本の表示で読む
ドイツ製ドッグフードの評判の背景には、EU共通の規則Regulation (EC) No 767/2009や、FEDIAFの表示規範・栄養ガイドライン、2024年5月1日から適用されたEUの有機表示ルールがあります。ただし、これらはドイツ一国の特別な法律ではなく、FEDIAFの栄養ガイドラインは業界団体の指針です。そして日本で売られる以上、ドイツ製のフードも日本のペットフード安全法の表示基準・成分規格に従い、輸入業者が届出や帳簿の備付けを行い、国とFAMICの立入検査の対象になっています。
だからこそ、選ぶときに頼りにしたいのは国名ではなく、袋に書かれた日本語の表示です。原産国は「完成した国」、原料の産地は5項目に含まれない、completeと総合栄養食は別の制度、Bioと無添加は別の軸。この4つを押さえておけば、ドイツ製に限らず、どの国のフードでも表示に振り回されずに読めるようになります。
最初の一歩として、今お使いのフード、または気になっているドイツ製フードの袋の裏を見て、「目的分類の表示」「原材料の先頭にある原料」「事業者名」の3か所を確認してみてください。そこから、そのフードが主食向きか、何を主原料にしているか、困ったときに誰に聞けばよいかがわかります。
※最新情報は各公的機関・メーカー・輸入業者の公式サイトでご確認ください。

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