子犬を迎えたとき、ペットショップやブリーダーから渡されたフードをそのまま続けるべきか、それとも自分で選び直すべきか迷う方は多いと思います。売り場には「子犬用」「パピー」「全犬種用」などの言葉が並び、袋の裏には原材料や成分の数字がぎっしり書かれています。どこを見れば「うちの子に合う子犬用」と言えるのか、手がかりがつかみにくいのが正直なところです。
先に結論をお伝えすると、子犬ドッグフード選びでまず確認するのは、ブランドや原材料の順番よりも「成長期用の総合栄養食」と書かれているかどうかです。総合栄養食はそのフードと水だけで指定された成長段階の健康を維持できるように設計された区分で、成長期は成犬期より高い栄養基準が設けられています。そのうえで、月齢に合わせた回数に分けて与え、成長期が終わる目安の時期に1〜2週間かけて成犬用へ切り替える。この流れを押さえれば、大きく外すことはありません。
この記事では、ペットフード公正取引協議会の表示ルール、AAFCOの栄養基準、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」の記述をもとに、子犬のごはんを「なぜそうするのか」から解説します。商品の比較ではなく、どのフードを手に取っても自分で判断できる読み方を持ち帰っていただくのが目的です。
・子犬ドッグフードを「成長期用の総合栄養食」から選ぶべき理由と、パッケージで確認する場所
・AAFCOの成長期と成犬期で、タンパク質と脂肪の最低値がどう違うか
・小型犬・中型犬・大型犬で異なる成長期の長さと、月齢別の食事回数
・ふやかし方、成犬用への切り替え方、開封後の保存と避けたい食材
子犬ドッグフードは「成長期用の総合栄養食」から選ぶのが基本

パッケージの「総合栄養食」表示が最初の関門になる理由
子犬のごはんは、まず「総合栄養食」と表示されたものを選ぶのが出発点です。ペットフード公正取引協議会は、総合栄養食を「毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの」と定義しています(ペットフード公正取引協議会「総合栄養食とは」)。
この表示は名乗るだけでは使えません。分析試験または給与試験で基準を満たしていることを証明し、協議会への届け出を経て、会員が表示できる仕組みになっています。つまり「総合栄養食」の4文字は、栄養バランスについて一定の手続きを通ったという目印なのです。体がぐんぐん大きくなる子犬期は、栄養の過不足がそのまま骨や筋肉のつくりに響きやすい時期なので、この目印の有無は大人の犬以上に意味を持ちます。
やりがちなのは、袋の表に大きく書かれた「パピー」「子犬用」という商品名だけを見て安心してしまうことです。商品名の「子犬用」と、表示区分としての「総合栄養食」は別物です。見るべきは袋の裏や側面にある「目的」の欄。ここに「総合栄養食」と書かれているかを最初に確認し、書かれていなければ主食候補から外す、という順番で見ていくと迷いが減ります。
一般食・間食・療法食を主食にしてはいけない理由
総合栄養食以外の区分は、単独で毎日の主食にする前提で作られていません。ここを理解しておくと、売り場で見かける「一般食」「おかずタイプ」の缶やパウチを主食と取り違えずに済みます。
環境省のガイドラインでは、「総合栄養食」「療法食」「間食」のいずれにも当てはまらないものを「その他の目的食」と総称し、パッケージには「副食」「一般食(おかずタイプ)」「栄養補完食」などと記載されると説明しています(環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」)。これらはトッピングや嗜好性を高める目的のもので、それだけで必要な栄養をまかなう設計ではありません。
療法食は、特定の疾病や健康状態にあるペットの栄養学的サポートを目的に、獣医師の指導のもとで使うことを意図したフードです(ペットフード公正取引協議会「療法食とは」)。成長期の子犬に自己判断で与えるものではありません。
よくある失敗は、食いつきが良いからとウェットタイプの一般食を主食にしてしまうケースです。見た目は立派なごはんでも、目的欄が「一般食」なら栄養は足りない前提で作られています。トッピングとして少し混ぜる程度に留め、主食はあくまで総合栄養食にしておくのが安全な使い方です。
総合栄養食=そのフードと水だけで、指定された成長段階の健康を維持できるよう栄養バランスが整えられた区分。分析試験または給与試験で基準を満たすことを証明し、ペットフード公正取引協議会へ届け出たうえで表示される。
その他の目的食(一般食など)=総合栄養食・療法食・間食のどれにも当てはまらないフードの総称。「副食」「一般食(おかずタイプ)」「栄養補完食」などと書かれる。
「指定された成長段階」の一文を見落とさない
総合栄養食の定義には「指定された成長段階における」という条件がついています。同じ総合栄養食でも、どの成長段階を想定しているかはフードごとに違う、というのがポイントです。
理由は単純で、子犬と成犬では必要な栄養の量が違うからです。次の章で詳しく触れますが、成長期は成犬期よりもタンパク質や脂肪の最低基準が高く設定されています。成犬用の総合栄養食は、成犬の体を維持するには十分でも、成長期の基準を満たしているとは限りません。環境省のガイドラインでも、成長期について「市販製品では、成長期用(子犬用または子猫用)のフードがあります」と触れられています。
具体的な場面として多いのが、先住犬用に買ってある成犬用フードを、子犬にもそのまま分けてしまうケースです。一緒に食べられて手間は省けますが、成長期の基準を満たしていない可能性があります。多頭飼いの家庭ほど起こりやすいので注意しましょう。
確認するのは、目的欄の「総合栄養食」の近くに書かれた成長段階の記載です。「成長期用」「子犬用」、または成長期を含む成長段階が明記されていれば子犬に使えます。成犬期だけを対象にした表記なら、子犬期の主食には選ばないのが基本です。
裏面の5項目と成分表示はここを読む
パッケージ裏面には、法律で決まっている表示と、業界の自主ルールで決まっている表示が混在しています。どちらがどちらかを知っておくと、情報を取捨選択しやすくなります。
ペットフード安全法で義務づけられているのは、名称・賞味期限・原材料名・原産国名・事業者名及び住所の5項目です。問題が起きたときに製品や原因を速やかに特定するための表示とされています(農林水産省「ペットフード安全法に関するQ&A」)。一方、目的・内容量・給与方法・成分の表示は、公正競争規約によるものです。
成分はたんぱく質・脂質・粗繊維・灰分・水分の5つが重量百分比で書かれ、たんぱく質と脂質には「以上」、粗繊維・灰分・水分には「以下」がつきます(ペットフード公正取引協議会「成分の表示」)。原材料は添加物以外を重量の多い順に並べ、添加物は最後にまとめるルールで、これは安全法ではなく公正競争規約側の決まりです(同「原材料の表示」)。
やりがちなのは「無添加」の文字だけで選ぶことです。無添加表示は、何が無添加なのかを明確に併記した場合に限って使える表示なので(同「無添加」表示)、「何を使っていないのか」まで読んで初めて意味がわかります。
| 区分 | 位置づけ | 子犬の主食に使えるか |
|---|---|---|
| 総合栄養食 | フードと水だけで指定された成長段階の健康を維持できる | 成長期を対象にしたものなら使える |
| 間食(おやつ) | 給与限度量などの表示が必要 | 主食にはしない |
| 療法食 | 獣医師の指導のもとで食事管理に使う | 自己判断では使わない |
| その他の目的食 | 「副食」「一般食(おかずタイプ)」「栄養補完食」など | トッピング程度に留める |
成長期と成犬期で栄養基準はどれくらい違う?
タンパク質の最低値は成長期22.5%、成犬期18.0%
子犬用と成犬用の違いを数字で見ると、最もわかりやすいのがタンパク質です。AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、粗タンパク質の最低値が成長期(Growth & Reproduction)で22.5%、成犬期(Adult Maintenance)で18.0%と定められています。どちらも乾物基準、つまり水分を除いた状態での割合です(AAFCO Dog Food Nutrient Profiles)。
成長期の基準が高いのは、子犬が「今の体を維持する」だけでなく「体を新しく作っている」最中だからです。筋肉、内臓、皮膚や被毛など、体の材料の多くはタンパク質から作られます。体重あたりで見たとき、成長中の体は維持だけの成犬よりも多くの材料を必要とする、という理屈です。
ありがちな誤解は「タンパク質は多ければ多いほど良い」と考えて、数字の大きさだけでフードを選ぶことです。AAFCOの値はあくまで最低値で、総合栄養食はそれを含めた栄養全体のバランスで設計されています。タンパク質だけを突出させるより、成長期の総合栄養食という枠の中で選ぶほうが、栄養の偏りを避けやすくなります。
脂肪も8.5%と5.5%で成長期が上回る理由
脂肪についても、AAFCOの粗脂肪の最低値は成長期で8.5%、成犬期で5.5%と、成長期のほうが高く設定されています(乾物基準)。タンパク質と同じく、子犬期は成犬期よりも多く求められる栄養素です。
脂肪はエネルギー源になるだけでなく、脂溶性ビタミンの吸収や、皮膚・被毛の健康にも関わる栄養素です。子犬は体が小さいわりに成長と活動に多くのエネルギーを使うため、少ない量のごはんで効率よくエネルギーを取れる設計が求められます。胃の容量に限りがある小さな体に、必要なエネルギーを収めるという意味でも、脂肪の基準が高いことには理由があります。
具体的な場面でいうと、先住犬と同じ成犬用フードを子犬に与え続け、なかなか体重が増えないと感じるケースがあります。量を増やして帳尻を合わせようとしても、子犬の胃に入る量には限りがあります。原因をフードの設計から考えると、成長期用に替えるという判断にたどり着きやすくなります。
注意点として、脂肪が多いフードはエネルギーも高くなりやすいので、パッケージの給与量表を守ることがセットになります。体型の変化が気になる場合は、次章以降の体重管理の考え方も合わせて参考にしてください。
| 項目(乾物基準の最低値) | 成長期(Growth & Reproduction) | 成犬期(Adult Maintenance) |
|---|---|---|
| 粗タンパク質 | 22.5% | 18.0% |
| 粗脂肪 | 8.5% | 5.5% |
| 子犬に使えるか | 成長期の基準を満たす設計 | 成長期の基準を満たすとは限らない |
出典:AAFCO Dog Food Nutrient Profiles をもとに犬ごはんノート編集部で整理
実はパッケージの%とAAFCOの%はそのまま比べられない
意外と知られていないのですが、袋の裏にある成分表示の%と、AAFCOの基準値の%は、同じ土俵の数字ではありません。AAFCOの値は水分を除いた「乾物基準」、パッケージの成分表示は水分を含んだ製品そのものの重量百分比だからです。
どういうことかというと、水分の多いフードほど、同じ栄養を含んでいても成分表示の%は小さく見えます。水が重さの多くを占めるぶん、タンパク質や脂質の割合が薄まって表示されるためです。ドライフードとウェットフードの成分表示を並べて「こちらはタンパク質が少ない」と判断するのは、乾物に直さない限り正確な比較になりません。
やりがちな失敗は、袋の「たんぱく質 ○%以上」をAAFCOの22.5%と直接見比べて、「足りていない」「十分だ」と判断してしまうことです。成分表示のたんぱく質・脂質は「以上」がつく保証値でもあるので、実際の含有量とも一致しません。
だからこそ、子犬のフード選びでは、自分で%を読み解くより「成長期用の総合栄養食」という表示を信頼の軸にするほうが確実です。数字は、同じ水分帯のフード同士で傾向をつかむ参考程度に使いましょう。
何か月まで子犬用?小型犬と大型犬で成長期の長さが違う

環境省の目安は小型犬10か月・中型犬1年・大型犬1年半
子犬用フードをいつまで続けるかは、犬のサイズによって変わります。環境省のガイドラインは成長期を「生後50日から、小型犬では10か月ぐらい、中型犬では1年ぐらい、大型犬では1年半ぐらい」の期間と説明しています(環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」)。
「1歳になったら成犬用」という言い方をよく耳にしますが、この目安で見ると、小型犬はそれより早く、大型犬はそれより遅く成長期が終わります。同じ「子犬」でも、成長のペースは体の大きさで違うということです。メーカー公式FAQでも、超小型犬は生後約8〜10ヵ月で成犬の体重に達し、超大型犬は生後18〜24ヵ月で成犬のサイズになると説明されています(メーカー公式の子犬の栄養解説)。
具体例として、トイ・プードルやチワワのような小型犬と、ゴールデン・レトリーバーのような大型犬を同じ家庭で育てると、この差がよくわかります。小型犬が成犬用へ移る頃、大型犬はまだ成長の途中です。
コツは、誕生日ではなくサイズと体の成長ぶりを見て判断することです。ミックス犬などで将来のサイズが読みにくい場合は、健康診断の機会に獣医師へ成長の段階を聞いておくと判断しやすくなります。
大型犬ほど子犬用を長く続ける理由
大型犬は、成犬になったときの体重が子犬期の何倍にもなります。そのぶん体を作る期間が長く、成長期用の栄養が必要な時間も長くなる、というのが基本的な理屈です。
骨格が大きく育つ犬ほど、成長が落ち着くまでに時間がかかります。成長期用の総合栄養食は、この「体を作る期間」に合わせて設計されているので、成長が続いているうちに成犬用へ移ると、成長期の基準より低い栄養設計のフードで体を作ることになります。逆に、成長が止まった後も子犬用を続けると、成犬に必要な量以上のエネルギーを取り続けることになりやすく、体重が増えすぎる原因になり得ます。
やりがちな失敗は、小型犬と同じ感覚で大型犬を早めに成犬用へ切り替えてしまうこと、あるいは逆に、小型犬を大型犬の感覚で長く子犬用のまま育ててしまうことです。どちらも「子犬用は1歳まで」という一律の思い込みから起きます。
注意点として、大型犬の子犬向けに「大型犬の子犬用」とサイズを分けたフードも売られています。選ぶときは、サイズの表記に加えて、目的欄に成長期を対象にした総合栄養食であることが書かれているかを確認しましょう。
月齢で変わる1日の食事回数
子犬は1日分を1回で与えず、月齢に合わせて回数を分けます。メーカー公式FAQでは、超小型犬や小型犬は生後4ヵ月齢まで、中型犬や大型犬は生後6ヵ月齢までは1日3回以上の食事がすすめられ、その時期を過ぎたらだんだんと1日2回にしていけると説明されています(メーカー公式「子犬のフードに関するよくある質問」)。
回数を分ける理由は、犬の食べ方の習性にあります。環境省のガイドラインによると、犬は1回で1日分のフードを食べられるほど大きい胃を持っていて、目の前のフードをお腹いっぱい食べる習性があります。1日1回だと慌てて飲み込んでのどに詰まらせたり、肥満の原因になったりするため、1日分を数回に分けて与えるよう勧められています(環境省ガイドライン)。
よくある失敗は、仕事の都合で朝と夜の2回にまとめてしまい、生後4ヵ月前の小型犬に1回あたり多すぎる量を与えることです。食後に吐き戻したり、次のごはんまでに空腹が長く続いたりしやすくなります。
コツは、1日の総量はパッケージの給与量表で決め、それを回数で割ることです。回数を増やしても総量は増やさない。この考え方を守れば、回数の調整で食べすぎになることはありません。
離乳期は子犬用とは別に考える
迎えたばかりの子犬がまだ幼い場合は、成長期とは別に「離乳期」の考え方が必要です。環境省のガイドラインでは、離乳期は生後20〜60日ぐらいとされ、やわらかくしたフードを少しずつ与える時期とされています。この時期には離乳期用または成長期用のフードが使われます。
離乳期は、母乳から固形のフードへ移っていく途中の段階です。歯や消化の働きがまだ固いフードに慣れていないため、いきなり硬いドライフードをそのまま与えると、うまく食べられなかったり、お腹に負担がかかったりしやすくなります。そこで、フードをふやかしてやわらかくし、食べやすい状態から始めるわけです。
メーカー公式FAQでは、7〜8週齢くらいになると離乳が完了し、ふやかしていない固形のドライフードを食べられるようになると説明されています。ペットショップやブリーダーから迎える時期によっては、まだふやかしたフードに慣れている段階のこともあります。
迎えた直後は、前の環境で食べていたフードと与え方(ふやかしの有無や回数)を聞いておき、しばらくはそれに合わせるのが無難です。環境の変化だけでも子犬には負担になるので、フードの変更は落ち着いてからにしましょう。
| 項目 | 小型犬 | 中型犬 | 大型犬 |
|---|---|---|---|
| 成長期の長さ(環境省) | 10か月ぐらい | 1年ぐらい | 1年半ぐらい |
| 1日3回以上の目安 | 生後4ヵ月齢まで | 生後6ヵ月齢まで | 生後6ヵ月齢まで |
| その後 | だんだんと1日2回へ | だんだんと1日2回へ | だんだんと1日2回へ |
1日にどれだけ?給餌量の決め方とふやかし方の理屈
量はパッケージの給与量表を「理想体重」で読む
子犬のごはんの量は、まずパッケージに表示された給与量を目安にします。環境省のガイドラインでも、製品のパッケージに表示されている食事量を目安に与え、はかり(ない場合は計量カップ)でフードの重さを量るよう勧めています(環境省ガイドライン)。
このとき注意したいのが、表の「体重」が何を指すかです。ガイドラインでは、食事量が対応している体重は現在の体重ではなく理想体重を示しているとされ、理想体重はボディコンディションスコア(BCS)を参考に求められると説明されています。成長期の子犬の場合、パッケージの表は月齢や成犬時の予想体重で区切られていることもあるので、表の見出しをよく読むことが大切です。
計量カップより、はかりで量るほうがよい理由もあります。粒の大きさや形でカップ1杯の重さは変わるため、同じ「1杯」でもフードが違えば量がずれます。フードを切り替えたときに、以前と同じカップの感覚で与えてしまうのはよくある見落としです。
体型の変化は見た目では気づきにくいので、ガイドラインでは週1回程度の体重測定がすすめられています。子犬期は体重が増えていくのが自然ですが、増え方の記録を残しておくと、量が合っているかの判断材料になります。
計算で確かめるなら「RER×係数」で考える
パッケージの表だけでは不安な場合、環境省のガイドラインに載っている計算式で考え方を確認できます。まず安静時のエネルギー要求量(RER)を「体重(kg)×30+70」で求めます。この式は体重が2〜45kgの場合にのみ使えるとされています。
次に、1日当たりのエネルギー要求量(DER)を「RER×係数」で求めます。係数は成長段階や活動量によって変わり、成長期の子犬は成犬とは違う係数が使われます。最後に「DER÷ペットフードに表示された代謝エネルギー(ME)×100」で、1日当たりの食事量が出ます。フードのMEは100gあたりのキロカロリーとして袋に書かれていることが多いので、その数字を使います。
この式の良いところは、「なぜフードによって量が違うのか」が理屈でわかることです。同じ子犬でも、MEが高いフードなら量は少なく、低いフードなら量は多くなります。子犬の月齢に応じた係数の考え方は、別の記事で詳しく解説しています。

注意点は、計算結果はあくまで目安で、個体差があることです。計算とパッケージの表が大きくずれる場合や、体重の増え方が気になる場合は、健康診断のときに獣医師に確認するのが確実です。
ふやかすなら60℃程度のぬるま湯を重さの2倍、15分ほど
離乳期や迎えたばかりの幼い子犬には、ドライフードをふやかして与えることがあります。メーカー公式FAQでは、ドライフードの重さの2倍の量のぬるま湯(60℃程度)を注ぎ、15分ほどふやかす方法が紹介されています(メーカー公式「子犬のフードに関するよくある質問」)。このお湯の量や時間はあくまで一例で、愛犬の好みに応じて調整してよいともされています。
ふやかす理由は、まだ固いものを噛んで飲み込むことに慣れていない子犬でも食べやすくするためです。水分を含んでやわらかくなると、粒が崩れやすくなり、飲み込みやすさも増します。熱湯ではなくぬるま湯なのは、熱すぎると与えるまでに冷ます手間がかかり、冷め切らないまま与えてしまうと口の中を傷める心配があるからです。
やりがちなのは、ふやかした後の温度を確かめずに与えてしまうことです。与える前には、指で触って熱くないことを確かめましょう。また、ふやかしたフードは水分が多くなり傷みやすいので、作り置きせずその都度用意するのが基本です。
そして、ふやかしはずっと続けるものではありません。メーカー公式FAQでは、7〜8週齢くらいで離乳が完了し、それ以降はドライフードをふやかす必要はないとしています。
やりがちな失敗:今の体重で量を決め、成長に追いつかない
子犬の給餌量でよく起きる失敗は、「迎えたときの体重」でパッケージの表を読んだまま、同じ量を何週間も続けてしまうことです。
原因は、子犬の体重が週単位で変わっていくことにあります。成犬なら体重はほぼ一定なので、一度量を決めればしばらく同じでも大きな問題になりにくいのですが、成長期の子犬は体が大きくなるにつれて必要なエネルギーも変わります。最初に決めた量のままだと、成長に対してごはんが足りなくなることがあります。逆に、成長期の終わりが近づくと必要量の伸びが落ち着くため、同じペースで量を増やし続けると、今度は食べすぎになりやすくなります。
対策は、週1回程度の体重測定と、その都度のパッケージ表の見直しをセットにすることです。体重を記録しておけば、成長のペースと量の関係が見えてきます。
迎えた日の体重で量を決め、そのまま続けてしまう。成長期の子犬は必要な量が変わっていくため、週1回程度の体重測定を習慣にし、そのたびにパッケージの給与量表を見直しましょう。おやつを与えた日は、その分を主食から減らすことも忘れずに。
子犬用から成犬用へ、切り替えで失敗しないコツ
切り替えは1〜2週間かけて割合を増やす理由
フードを替えるときは、一度に全部を入れ替えず、少しずつ混ぜて割合を増やしていくのが基本です。環境省のガイドラインでは「犬や猫の状態を見ながら1〜2週間かけて新しいフードの割合を徐々に増やしていきましょう」とされています(環境省ガイドライン)。
時間をかける理由は、お腹がフードの変化に慣れるのに時間がかかるからです。原材料や成分の構成が変わると、消化のされ方も変わります。急に全部を入れ替えると、便がゆるくなったり、食べなくなったりすることがあります。少しずつ混ぜることで、お腹が新しいフードに順に慣れていく時間をつくれます。
これは子犬用から成犬用への切り替えだけでなく、子犬用同士でブランドを変えるときにも当てはまります。迎えたばかりの子犬のフードを、飼い主が選んだものに替えたい場合も同じ手順です。
コツは、決まった日数に縛られず「状態を見ながら」進めることです。便の状態や食べ方を毎日確認し、様子が落ち着いていれば次の段階へ、気になる変化があれば割合を戻して様子を見る、という進め方が安心です。
やりがちな失敗:1歳の誕生日に一気に入れ替える
子犬用から成犬用への切り替えで多い失敗が、「1歳になったから」と誕生日を境に、その日から成犬用だけに替えてしまうことです。
この失敗には2つの原因が重なっています。1つめは、切り替えのタイミングをサイズに関係なく「1歳」で一律に決めてしまうこと。前の章で見たとおり、小型犬は10か月ぐらい、大型犬は1年半ぐらいが成長期の目安なので、1歳という区切りは犬によって早すぎたり遅すぎたりします。2つめは、1日で全部を入れ替えてしまうこと。お腹が慣れる時間がないため、便がゆるくなるなどの変化が起きやすくなります。
具体的には、子犬用の残りがちょうどなくなったタイミングで成犬用の新しい袋を開け、そのまま全量を入れ替えるパターンがよくあります。フードの在庫の都合で切り替えのタイミングが決まってしまうわけです。
対策は、切り替えを始める時期から逆算して、子犬用が1〜2週間ぶん残っているうちに成犬用を用意しておくことです。そうすれば、混ぜながら置き換える期間を無理なく確保できます。
切り替えのタイミングはサイズ別の成長期を目安に
成犬用に替える時期は、環境省のガイドラインにある成長期の目安(小型犬10か月ぐらい、中型犬1年ぐらい、大型犬1年半ぐらい)を基準に考えるのがわかりやすい方法です。
成長期を過ぎても子犬用を続けると、成長期向けの高い栄養設計のまま、成長の終わった体にごはんを与えることになります。子犬用は成長を支えるためにエネルギーが高めに作られていることが多いので、同じ量を続けると体重が増えすぎる原因になり得ます。反対に、成長途中で成犬用に替えると、成長期の基準を満たさないフードで体を作ることになります。どちらの方向にずれても、フードの設計と体の段階が噛み合わなくなるということです。
目安の時期が近づいたら、体重の増え方を見てみましょう。週1回程度の測定で体重の伸びが落ち着いてきたら、成長が終わりに近づいているサインと考えられます。
避妊・去勢手術の時期などと重なる場合は、手術の前後で体の状態が変わることもあるため、切り替えの時期を獣医師に相談しておくと安心です。
子犬に食べさせてはいけないもの・誤飲に注意したいもの
タマネギ・ネギ類は加熱しても成分が残る
人の食事で最も気をつけたいのが、タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニクといったネギ類です。環境省のガイドラインでは、タマネギなどに含まれる犬や猫に有害な成分(アリルプロピルジスルフィド)が赤血球を破壊し、大量に食べると血尿や下痢、嘔吐、発熱などを引き起こすおそれがあると説明されています(環境省ガイドライン)。
見落としやすいのは、加熱してもこの成分は分解されないという点です。生のタマネギだけでなく、ハンバーグやカレーのようにタマネギが入った加工食品、さらにタマネギそのものではなくても、エキスがしみ出た味噌汁やすきやきの煮汁なども与えてはいけないとされています。
子犬の場合によくあるのは、家族が食べていたハンバーグのかけらや、煮物の汁がかかったごはんを「少しだけなら」と分けてしまう場面です。子犬は好奇心が強く、テーブルから落ちた食べ物もすぐに口にします。
対策は、人の料理をそもそも与えないことを家族全員のルールにすることです。子犬のごはんに風味をつけたい場合は、味付けをしていない食材を使う、という線引きにしておくと迷いません。
チョコレート・キシリトール・ブドウは少量でも避けたい
お菓子や果物の中にも、犬に与えてはいけないとされるものがあります。環境省のガイドラインでは、犬にチョコレートを与えると、テオブロミンが原因で嘔吐、下痢、発熱、けいれんの発作などを引き起こすとされています。ブドウ・干しブドウは犬や猫にとって腎不全の原因になり、特にブドウの皮は与えてはいけないと書かれています。
キシリトール入りのガムなども、犬が食べてしまうと少量でも血糖値の低下や嘔吐、肝不全などを引き起こすとされています。ガムやタブレットは人のカバンやポケット、机の上に置かれがちで、子犬の手が届きやすいのが難点です。
具体的な場面としては、子どもがおやつに食べていたチョコレートやレーズン入りのパンを、子犬が横から食べてしまうケースが考えられます。家族の人数が多いほど、食べ物の置き場所の管理が甘くなりやすいものです。
コツは、これらの食べ物を子犬の生活スペースに持ち込まないこと、そして置き場所を子犬の届かない高さや扉つきの棚に決めることです。もし食べてしまった可能性があるときや、食欲や便の様子がいつもと違うときは、自己判断で様子を見続けず、早めに獣医師に相談してください。
鶏の骨・生の魚介・生卵は「形」と「加熱」が分かれ目
肉や魚、卵は犬のごはんにも使われる食材ですが、与え方によっては注意が必要なものがあります。環境省のガイドラインでは、鶏の骨は縦にさけやすく、噛んで割れるととがった形状になり、のどや消化管を傷つけることがあるため与えてはいけないとされています。
環境省のガイドラインでは、生のイカや貝などの魚介類、カニやエビなどの甲殻類はビタミンB1を分解する酵素を持っており、猫がこれらを生で与えられ続けるとビタミンB1が欠乏して後脚の麻痺を引き起こすとされています。犬についても、魚介類は必ず加熱調理をして与えるようにと案内されています。生の卵白も、与え続けるとビオチンが欠乏し、皮膚炎や成長不良の症状を引き起こすことがあるとされ、加熱調理をすれば問題ないとされています。成長不良が挙げられている点は、子犬の飼い主として特に覚えておきたいところです。
また、レバーはビタミンAが多く、過剰に摂取すると食欲不振や関節炎を引き起こすことがあるとされ、ホウレン草はシュウ酸が多く、茹でてアク抜きをすることでシュウ酸の量を減らせるとされています。
つまり、食材そのものが良い・悪いではなく、「どんな形で」「加熱したか」「どれくらいの量か」が分かれ目になるものがあるということです。トッピングに使う場合も、主食はあくまで総合栄養食で、少量に留めるのが基本です。
| 食材 | 一般に避けるとされる理由 | 扱い方 |
|---|---|---|
| タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニク | 赤血球を破壊する成分を含み、加熱しても分解されない | 煮汁や加工食品も与えない |
| チョコレート | テオブロミンが嘔吐・下痢・けいれんなどの原因に | 与えない・届かない場所に保管 |
| ブドウ・干しブドウ | 腎不全の原因になるとされる | 与えない |
| 鶏の骨 | 割れるととがり、のどや消化管を傷つけることがある | 与えない |
| 生の魚介・生の卵白 | 猫は生イカ等でビタミンB1欠乏、生卵白ではビオチン欠乏のおそれ | 加熱調理してから少量 |
食べ物以外の誤飲と観葉植物にも目を配る
子犬期は、食べ物以外のものを口にしてしまう事故にも気を配る必要があります。環境省のガイドラインでは、誤飲とは本来食べるものでない「モノ」を飲み込んでしまう事故で、ちょっと目を離した隙に起きる場合が多く、命にかかわる事故にもつながるとされています。特に子犬は色々なものを口にしてしまうので注意が必要だと書かれています(環境省ガイドライン)。
子犬がものを口にするのは、口で周囲を確かめる時期だからです。床に落ちた小物や、おもちゃのちぎれた破片なども対象になります。
観葉植物にも注意が必要です。ガイドラインでは、ユリ(植物全体)、チューリップ(球根)、ポインセチア(茎、葉)、アサガオ(種子)など、犬や猫に嘔吐、心臓麻痺、痙攣など中毒を起こすものが多くあるとされています。部屋の飾りとして置いた鉢植えが、子犬の届く高さにあることは珍しくありません。
対策は、子犬の目線の高さで部屋を見回し、口に入る大きさのものや植物を片づけることです。子犬を迎える前に一度、床に座って部屋をチェックしておくと見落としが減ります。
おやつ・保存・トッピングとどう付き合う?
おやつは1日のエネルギーの20%以内、その分主食を減らす
しつけのごほうびなどで、子犬期はおやつを使う場面が増えます。環境省のガイドラインでは、おやつは1日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、与えた分だけ主要な食事の量も減らすよう勧めています(環境省ガイドライン)。
この目安が大切なのは、子犬期の主食が成長期の栄養基準に合わせて設計されているからです。おやつが増えて主食を食べる量が減ると、成長期の栄養バランスが崩れやすくなります。おやつの多くは総合栄養食ではなく間食なので、それだけでは必要な栄養を満たしません。
やりがちなのは、トレーニングのたびに小さなおやつを与え、1回あたりは少なくても合計すると主食に響くほどの量になってしまうことです。家族それぞれがおやつをあげていると、合計量が把握できなくなりがちです。
コツは、1日分のおやつをあらかじめ小分けにしておき、それ以上は与えないというルールにすること。主食のフードの一部をごほうびとして使うのも、栄養バランスを崩さない方法の1つです。おやつの「無添加」表示の読み方は、別の記事で詳しく解説しています。

ドライフードは開封後約1か月、冷蔵庫に入れない理由
子犬用のドライフードは、開封後の保存方法で品質が変わります。環境省のガイドラインでは、ドライフード・ソフトドライフードの使用期限の目安は開封後約1か月とされ、袋をしっかり閉じて、直射日光が当たらない、温度・湿度が低い場所で保存するよう書かれています(環境省ガイドライン)。
意外に思われるかもしれませんが、ドライフードを冷蔵庫に入れるのは勧められていません。冷蔵庫で保存すると、出し入れのたびにフード表面に結露が生じ、カビ等の発生原因になるためです。常温保存が基本とされています。
子犬は体が小さく1日の量も少ないため、大袋を買うと開封後約1か月の目安を超えてしまうことがあります。割安だからと大きな袋を選び、最後のほうは湿気や酸化が進んだフードを与えている、というのはよくあるパターンです。
対策は、1か月で使い切れる量の袋を選ぶことです。子犬の成長で1日の量は変わっていくので、その時々の量から逆算して袋のサイズを決めましょう。ドライフードの性質については、別の記事でも詳しく解説しています。

ウェットやセミモイストを混ぜるときの保存の違い
食いつきを良くするために、ウェットフードやセミモイストフードを混ぜることもあるでしょう。この場合、フードの種類によって開封後の扱いが大きく違う点に注意が必要です。
環境省のガイドラインでは、セミモイストフードの使用期限の目安は開封後2週間程度で、袋をしっかり閉じて冷蔵庫で保存し、使う分だけ取り出して与えるとされています。ウェットフードは開封後1日が目安で、開封したらすぐに与え、余った場合は別の容器に移し替えて冷蔵保存し、その日のうちに使い切るとされています。1日以上保存する場合は冷凍保存して解凍する方法も可能ですが、食味等を損なう場合があるとされています。
水分が多いフードほど傷みやすく、保存期間が短くなる、というのが基本的な理屈です。ドライフードは冷蔵庫に入れないのに、セミモイストやウェットは冷蔵保存。この逆転が混乱のもとになりやすいところです。
やりがちな失敗は、ウェットフードの缶を開けたまま冷蔵庫に入れて数日かけて使うことです。子犬の1回量は少ないので、小分けのパウチなど1回で使い切れるサイズを選ぶと無駄がありません。
| 項目 | ドライフード | セミモイストフード | ウェットフード |
|---|---|---|---|
| 使用期限の目安 | 開封後約1か月 | 開封後2週間程度 | 開封後1日 |
| 保存場所 | 常温(直射日光を避け、温度・湿度が低い場所) | 冷蔵庫 | 別容器に移して冷蔵、その日のうちに |
| 注意点 | 冷蔵庫は結露でカビの原因に | 使う分だけ取り出す | 冷凍も可能だが食味を損なう場合あり |
家庭のタイプ別・子犬ごはんの使い分け
ここまでの内容を、飼い主の状況別に整理します。基本は同じでも、どこに力を入れるかは家庭によって変わります。
初めて子犬を迎えた方は、まず迎える前の環境で食べていたフードと与え方を聞き、しばらくはそれを続けましょう。環境に慣れてから、成長期用の総合栄養食かを確認し、替える場合は1〜2週間かけて切り替えます。
日中に家を空ける時間が長い方は、小型犬なら生後4ヵ月齢まで、中型犬・大型犬なら生後6ヵ月齢までの1日3回以上をどう確保するかがポイントです。1日の総量は変えずに回数で割り、朝・帰宅後・寝る前などの時間帯に分ける工夫をしましょう。
大型犬を育てる方は、成長期が1年半ぐらいと長いことを前提に、子犬用を早めにやめないことが大切です。体重の記録を続け、成長の落ち着きを見てから切り替えます。
トッピングや手作りを取り入れたい方は、主食を成長期用の総合栄養食にしたうえで、味付けなし・加熱済みの食材を少量加える程度に留めましょう。トッピングの分は主食から減らすことも忘れずに。
まとめ:子犬ドッグフードは表示・回数・切り替えの3点で選ぶ
子犬ドッグフード選びで迷ったときは、商品名やキャッチコピーではなく、袋の裏の「目的」欄に戻ってきてください。「総合栄養食」であり、成長期を対象にしていること。これが確認できれば、主食としての最低条件はクリアしています。AAFCOの基準で見ても、成長期はタンパク質22.5%・脂肪8.5%と、成犬期の18.0%・5.5%より高い最低値が設けられており、子犬用と成犬用を分ける理由はここにあります。
そのうえで、与え方の軸は3つです。1つめは、パッケージの給与量表を目安に、はかりで量ること。週1回程度の体重測定で、成長に量が追いついているかを確かめましょう。2つめは、小型犬は生後4ヵ月齢まで、中型犬・大型犬は生後6ヵ月齢までを目安に1日3回以上に分けること。3つめは、サイズ別の成長期の目安を見ながら、1〜2週間かけて成犬用へ切り替えることです。
最初の一歩として、今お使いのフードの袋を手に取り、目的欄に「総合栄養食」と成長段階が書かれているかを確認してみてください。あわせて、開封日を袋に書いておけば、開封後約1か月の目安も管理しやすくなります。
※最新情報は公式サイトでご確認ください。

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