「高タンパクのフードのほうが犬には良いの?」「袋に書いてある粗たんぱく質の%は、多いほうを選べばいい?」。フードの棚の前で、こんなふうに迷ったことはありませんか。タンパク質は犬の体をつくる材料であり、エネルギー源でもある大切な栄養素です。ただ、数字の読み方をひとつ間違えると、実際より多く見えたり少なく見えたりします。
先に結論をお伝えすると、犬に必要なタンパク質の目安は、AAFCOの栄養基準で成犬が乾物で18%以上、子犬や妊娠・授乳期の母犬が乾物で22.5%以上です。ところが、パッケージに書かれた「粗たんぱく質○%以上」は水分を含めた製品全体に対する比率なので、ドライフードとウェットフードの数字をそのまま比べることはできません。さらに、タンパク質は「量より質」とされ、年齢や体の状態によっては多ければ良いとも言い切れません。
この記事では、ペットフード公正取引協議会の表示ルール、AAFCOの基準、文部科学省の日本食品標準成分表といった一次情報をもとに、犬とタンパク質の関係を「なぜそうなるのか」から整理します。トッピングで足すときの失敗例や、シニア犬・アレルギーが気になる犬での考え方もまとめました。
・犬にとってタンパク質が欠かせない理由と、必須アミノ酸が人より多い話
・AAFCOの最低基準(成犬18%以上・成長期22.5%以上)と、袋の表示との正しい比べ方
・鶏むね肉・卵・鮭・豆腐のたんぱく質を食品成分表で比べた一覧
・トッピング、シニア犬、食物アレルギーで気をつけたいポイント
犬の体にタンパク質が欠かせない理由は「材料」と「燃料」の二役

筋肉も皮膚も被毛も、もとをたどればタンパク質
タンパク質は、炭水化物・脂質と並ぶ三大栄養素のひとつで、犬に欠かせない栄養素とされています。いちばんの仕事は「体の材料」になることです。筋肉、皮膚、被毛、爪、内臓、血液の成分など、犬の体の多くの部分はタンパク質を材料につくられています。
なぜ毎日の食事から摂り続ける必要があるかというと、体の組織は一度つくったら終わりではなく、古くなったものを分解して新しくつくり直すことを繰り返しているからです。被毛が生え変わるのも、皮膚が入れ替わるのも、このつくり直しの一部です。材料が足りなくなれば、つくり直しの質や速さに影響が出ます。
飼い主がやりがちなのは、タンパク質を「筋肉のための栄養」とだけ考えてしまうことです。運動量の少ない小型犬や室内犬なら少なくていい、と思いがちですが、皮膚や被毛、内臓の維持にも使われるので、運動量にかかわらず毎日必要な栄養素です。
見るポイントは、フードが「総合栄養食」かどうかです。総合栄養食であれば、そのフードと水だけで健康を維持できる栄養バランスに設計されているので、タンパク質の量を飼い主が個別に計算しなくても土台は整います。
犬はタンパク質をエネルギー源としても使う「肉食寄りの雑食」
もうひとつの役割は「燃料」です。犬は肉食に近い雑食性動物で、タンパク質(アミノ酸)はエネルギー源としても重要なものとされています。人の場合、エネルギーの主役は炭水化物のイメージが強いですが、犬は祖先が肉を主に食べていた名残から、タンパク質をエネルギーとして使う割合が人より大きいと考えられています。
ここで押さえておきたいのは、「燃料にも使われる」ということは、エネルギーが足りないとタンパク質が燃料側に回されてしまう、という点です。食事全体の量が足りなかったり、脂質や炭水化物からのエネルギーが不足していたりすると、本来は体の材料になるはずのタンパク質がエネルギーとして消費されます。つまり、タンパク質の%だけを気にしても、食事の総量が少なければ材料として十分に働かない可能性があるわけです。
よくある失敗は、体重を気にして食事量を大きく減らし、「そのかわり高タンパクのフードにしたから大丈夫」と考えるケースです。総量が減れば、口に入るタンパク質の絶対量も減ります。
コツは、%とあわせて「1日にどれだけ食べているか」をセットで見ることです。給餌量は製品パッケージの給餌量表を確認し、体型の変化を見ながら調整しましょう。
必須アミノ酸は人より1種類多い10種類
タンパク質は、アミノ酸という小さな部品がつながってできています。体の中でつくれない、または十分な量をつくれないために食事から摂らなければならないアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。その数は動物によって違い、人は9種類、犬は10種類、猫は11種類とされています。
犬の必須アミノ酸として挙げられるのは、アルギニン・イソロイシン・スレオニン・トリプトファン・バリン・ヒスチジン・フェニルアラニン・メチオニン・ロイシン・リジンです。人の必須アミノ酸と比べると、アルギニンが加わっている点が違いとして紹介されることが多いものです。
この違いが意味するのは、「人にとってバランスの良い食事が、そのまま犬にとってバランスが良いとは限らない」ということです。人の食事の残りを分けたり、人向けの献立を少しアレンジしたりするだけでは、犬に必要なアミノ酸の組み合わせがそろわない可能性があります。
必須アミノ酸は、どれかひとつでも不足すると、ほかのアミノ酸が十分にあってもタンパク質をうまく組み立てられないと考えられています。だからこそ、犬用の栄養基準にもとづいて設計された総合栄養食を主食にするのが、いちばん確実な方法です。
必須アミノ酸=体内で十分につくれず、食事から摂る必要があるアミノ酸。犬は10種類とされます。
粗たんぱく質=フードに含まれる窒素の量からたんぱく質量を推定した値。純粋なたんぱく質だけを測ったものではないため「粗(そ)」がつきます。パッケージの成分表示に「粗たんぱく質○%以上」と書かれるのがこれです。
不足すると成長不良や毛艶の悪化などが見られるとされる
タンパク質が不足した場合、獣医師が執筆した解説では、成長不良や貧血、食欲不振、毛艶が悪くなるといった症状が挙げられています。材料が足りないと体のつくり直しが追いつかない、という先ほどの話を思い出すと、被毛や成長といった「新しくつくる」場面に影響が出やすいのは理屈として納得できます。
とはいえ、総合栄養食を給餌量表どおりに食べている犬で、タンパク質だけが極端に足りなくなることは考えにくいものです。不足が起きやすいのは、手作り食で主食を組み立てている場合、一般食(副食)やおやつが中心になっている場合、食欲が落ちて食べる量そのものが減っている場合などです。
気をつけたいのは、毛艶の悪化や食欲不振は、タンパク質不足以外の理由でも起こるという点です。「毛艶が悪いからタンパク質を足そう」と自己判断でトッピングを増やしても、原因が別にあれば解決しません。
食欲や便の様子、被毛の状態がいつもと違う日が続くときは、食事内容を持って獣医師に相談してください。そのとき、主食のフード名と1日の量、おやつやトッピングの内容をメモしておくと、原因を絞り込む手がかりになります。
最低ラインは何%?成犬と子犬で基準が違うわけ
AAFCOの基準は成犬18%以上・成長期22.5%以上
犬のフードの栄養基準としてよく参照されるのが、AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準です。日本の総合栄養食も、この基準を拠りどころにしています。AAFCOの基準では、粗たんぱく質の最低値が、成犬(維持期)で乾物18%以上、成長期(子犬・妊娠授乳期の母犬)で乾物22.5%以上とされています。
ここで大事なのが「乾物」という言葉です。乾物とは、フードから水分を取り除いた残りの部分のこと。水分は栄養にならないので、水分を抜いた状態で比べれば、ドライでもウェットでも同じ物差しで栄養の濃さを比べられます。AAFCOの数値は、この乾物での割合です。
やりがちな誤解は、「18%以上」を1日に食べる量の18%と受け取ってしまうことです。これはフードの中身(乾物)に占める割合の話で、1日の摂取量を示すものではありません。1日にどれだけ食べるかは、体重や活動量によって変わるので、製品パッケージの給餌量表で確認します。
体重別に「1日何g」という数値を知りたくなるかもしれませんが、必要量は犬ごとの体格や活動量で変わるため、この記事では出所が示せない目安の数値は載せません。総合栄養食を給餌量表どおりに与えれば、基準を満たす設計になっています。
子犬と妊娠・授乳期の母犬が高めに設定されている理由
成長期の基準が成犬より高いのは、成長期の体が「維持」だけでなく「新しくつくる」ことに多くの材料を使うからです。子犬は骨格や筋肉、内臓がどんどん大きくなっていく時期で、体をつくり直すだけの成犬より多くのタンパク質を必要とします。妊娠・授乳期の母犬も、お腹の子犬の体や母乳の材料としてタンパク質を多く使うため、同じ成長期の基準がかかります。
このため、成犬用のフードを子犬に与えると、タンパク質を含む栄養が成長期の基準に届かない可能性があります。反対に、成長期用のフードは成犬には栄養が濃すぎることがあります。フードの「対象年齢」の表示は、この基準の違いを反映したものです。
よくある失敗は、多頭飼いで子犬と成犬に同じフードを与えてしまうことです。手間は省けますが、どちらかの基準に合わない食事になりがちです。
パッケージには、総合栄養食の表示とあわせて「成長期用」「成犬用」「全成長段階用」などの対象が書かれています。子犬を迎えたら、この対象の欄を最初に確認しましょう。

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「上限の設定がない」は「多いほど良い」という意味ではない
意外と知られていないけれど、AAFCOの表では粗たんぱく質に上限の設定がありません(表では「−」)。これを見て「上限がないなら、多ければ多いほど良い」と受け取る人がいますが、実はそう単純ではありません。
上限がないのは、「健康な犬で、これ以上は明らかに害がある」という線を基準として一律に引いていない、ということです。一方で、獣医師が執筆した解説では、過剰摂取は肝臓や腎臓に負担をかける可能性があると説明されています。体の中で使い切れなかったタンパク質は分解され、その分解産物は腎臓から尿として排出されるので、処理する側の臓器の状態によっては負担になりうる、という考え方です。
また、ペットフードメーカーの解説でも、タンパク質は量よりも質を重視するべきとされています。%の数字が大きいことそのものより、体がどれだけ利用できるかのほうが大事だ、という立場です。
コツは、「最低ラインを満たしているか」をまず確認し、それ以上の%の差にこだわりすぎないことです。高タンパクを売りにしたフードを選ぶ場合も、年齢や体の状態に合うかを考え、気になる持病がある犬は獣医師に確認してから切り替えましょう。
シニア犬には独立した基準がない。個体差で考える
AAFCOの基準は「成長期」と「成犬(維持期)」の区分で示されていて、シニア犬専用の区分は設けられていません。シニア用として売られているフードも、栄養基準の上では成犬(維持期)の基準を満たす形で設計されているものが一般的です。
シニア期に独立した基準がないのは、年齢を重ねたときの体の変化が犬によって大きく違うからだと考えられます。筋肉が落ちやすくなる犬もいれば、腎臓など臓器の働きに配慮が必要になる犬もいます。同じ年齢でも、元気に散歩を続けている犬と、ほとんど寝て過ごす犬とでは、食事に求めるものが違います。
やりがちなのは、「シニアだからタンパク質を減らすべき」または「筋肉を保つためにタンパク質を増やすべき」と、どちらか一方に決めつけてしまうことです。どちらが合うかは、その犬の体の状態によります。
シニア期の食事は、健康診断の結果を見ながら獣医師と相談して決めるのが確実です。フードの切り替えは、日数をかけて少しずつ混ぜる割合を増やしていきましょう。
| 項目 | 成長期(子犬・妊娠授乳期の母犬) | 成犬(維持期) | シニア犬 |
|---|---|---|---|
| 最低値(乾物) | 22.5%以上 | 18%以上 | 独立した区分なし(成犬の基準で設計されるのが一般的) |
| 上限 | 設定なし | 設定なし | 体の状態に応じて獣医師と相談 |
| 高く設定される理由・考え方 | 体を新しくつくる材料が多く必要 | 体の維持・つくり直しに必要な量 | 筋肉・臓器の状態に個体差が大きい |

袋の裏の「粗たんぱく質○%以上」はどう読む?

「以上」はそのフードの最低保証を示す書き方
ドッグフードのパッケージには、成分の値が書かれています。ペットフード公正取引協議会の成分表示のルールでは、成分は重量百分比(%)で記載し、たんぱく質・脂質は「以上」、粗繊維・灰分・水分は「以下」をつけて表示することになっています。
なぜ「以上」「以下」なのかというと、フードの原材料は天然のものなので、製造ロットごとに成分がわずかに揺れるからです。そこで、たんぱく質や脂質のように「足りないと困る」成分は下限を保証し、粗繊維や水分のように「多すぎると困る」成分は上限を保証する、という書き方になっています。
つまり「粗たんぱく質○%以上」は、「少なくともこれだけは入っている」という最低保証の値で、実際の含有量はそれより多いこともあります。表示の数字がそのまま実際の含有量だと受け取ってしまうのは、やりがちな誤解です。
見るときのコツは、たんぱく質の%だけでなく、同じ欄にある水分の%も一緒に読むことです。次の見出しで説明するとおり、水分の値がわからないと、たんぱく質の%は正しく比べられません。
水分込みの%なので、ウェットとドライは直接比べられない
パッケージの成分値は、水分を含めた製品全体に対する比率の表示です。ここが、AAFCOの「乾物」の基準と大きく違うところです。水分をたっぷり含むウェットフードは、同じ量のたんぱく質を含んでいても、水で薄まっているぶん%の数字が小さく出ます。
たとえば、日本食品標準成分表で見ると、鶏むね肉(皮なし・生)は100gあたり水分が74.6g、たんぱく質が23.3gです。100gのうち4分の3近くが水分ですが、水分を除いた中身で見ると、その大半がたんぱく質です。「23.3gだから23%程度のたんぱく質食材」と受け取ると、実態を小さく見積もることになります。フードも同じで、水分の多い製品ほど、表示の%は中身の濃さより低く見えます。
反対に、水分の少ないドライフードは、中身がそのまま詰まっているので表示の%が大きく出ます。ウェットの数字がドライより小さいからといって、ウェットのほうがたんぱく質が少ないとは限りません。
「ウェットは粗たんぱく質の数字が小さいから、ドライより栄養が薄い」と判断してしまうケースです。原因は、パッケージの%が水分込みの値だと知らないこと。ウェットは水分が多いぶん、同じ中身でも%が小さく出ます。対策は、水分の%を確認して乾物に換算してから比べるか、どちらも総合栄養食であることを確認したうえで、給餌量表どおりに与えることです。
乾物に換算すればAAFCOの基準と同じ物差しで見られる
パッケージの値をAAFCOの基準と比べたいときは、「乾物換算」をします。やり方は、粗たんぱく質の%を、製品全体から水分の%を差し引いた残りの割合で割り戻すだけです。水分を取り除いた中身だけで、たんぱく質がどれくらいの比率を占めるかがわかります。
この計算をすると、ドライとウェット、あるいはフリーズドライのように水分量が違うフード同士でも、同じ物差しで比べられるようになります。表示の%では大きな差があるように見えた2つのフードが、乾物で比べるとほとんど変わらない、ということもよくあります。
注意したいのは、パッケージの水分は「以下」の表示なので、実際の水分はそれより少ないこともあり、換算した値はあくまで目安になるという点です。また、たんぱく質も「以上」の値なので、換算値は「少なくともこのくらい」と読むのが正確です。
毎回計算するのが面倒な場合は、無理に換算しなくてもかまいません。総合栄養食の表示があり、対象年齢が合っていれば、基準を満たすように設計されているからです。換算は、主食を別のタイプのフードに替えるときや、一般食を組み合わせるときに役立ちます。
%より先に「総合栄養食」の表示を確認する
たんぱく質の%を細かく読む前に、必ず確認してほしいのが「総合栄養食」の表示です。ペットフード公正取引協議会は総合栄養食を、毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの、と説明しています。
総合栄養食は、分析試験または給与試験によって基準を満たすことを確かめたものとされています(目的別の分類)。つまり、たんぱく質の最低ラインはもちろん、必須アミノ酸やほかの栄養素とのバランスも含めて、その成長段階に合うよう設計されているということです。
よくある失敗は、「高タンパク」「肉たっぷり」といった表のキャッチコピーに惹かれて購入し、実は一般食(副食)やおやつだった、というパターンです。一般食は主食と組み合わせる前提のものなので、それだけを主食にするとたんぱく質を含む栄養が偏る可能性があります。
総合栄養食かどうかは、パッケージの裏面や側面の「目的」の欄に書かれています。たんぱく質の%はその次に見る、という順番を覚えておくと、迷いが減ります。

ホームセンターやペットショップでドッグフードの袋を手に取ると、たいていどこかに「総合栄養食」と書かれています。その一方で、見た目はよく似ているのに「一般食」「お…
量より質といわれる理由と「良質」の見分け方
質を決めるのは「消化率」と「生物学的利用能」
ペットフードメーカーの解説では、タンパク質で重要なのは量よりも質であり、その質を決めるのはアミノ酸の消化率と生物学的利用能だと説明されています。少し難しい言葉ですが、中身はシンプルです。
消化率は「食べたタンパク質のうち、どれだけ消化・吸収されたか」。生物学的利用能は「吸収されたアミノ酸を、体がどれだけ材料として使えたか」です。どれだけたくさん入っていても、消化されずに便として出てしまったり、吸収されても体に必要なアミノ酸の組み合わせがそろっていなかったりすれば、材料として役立つ割合は下がります。
ここが「粗たんぱく質の%が高い=良いフード」と言い切れない理由です。粗たんぱく質は窒素の量から推定した値なので、消化しやすいかどうかや、アミノ酸のバランスまでは示していません。%が同じでも、体が使える量には差が出ることがあります。
とはいえ、消化率はパッケージに書かれていないことがほとんどで、飼い主が数値で比べるのは難しいのが実情です。現実的な見方としては、総合栄養食であることを確認したうえで、便の状態(硬さ・量・においの変化)を観察することです。消化しにくいと、便の量が増えたりゆるくなったりすることがあります。
動物性と植物性の違いは「含硫アミノ酸」
タンパク質には、肉や魚、卵などの動物性と、大豆などの植物性があります。どちらもタンパク質であることに変わりはありませんが、アミノ酸の組み合わせに違いがあります。獣医師の説明として、大豆などの植物性タンパク質はメチオニンなどの含硫アミノ酸が少ないため、植物性のみを主体にすると不足する可能性がある、と紹介されています。
メチオニンは先に挙げた犬の必須アミノ酸のひとつです。必須アミノ酸は、どれかひとつが足りないと全体としてタンパク質を組み立てにくくなるので、ひとつの食材に偏るより、複数のたんぱく源を組み合わせたほうがアミノ酸のバランスが整いやすくなります。
だからといって「植物性は悪い」というわけではありません。ドッグフードには、動物性と植物性のたんぱく源を組み合わせて必須アミノ酸のバランスを整えているものも多くあります。総合栄養食であれば、組み合わせた結果として基準を満たすように設計されています。
気をつけたいのは手作り食です。「肉を控えて豆腐中心に」といった献立を自己流で続けると、アミノ酸の組み合わせが偏るおそれがあります。手作り食で主食を組み立てたい場合は、犬の栄養に詳しい獣医師に相談しながら進めるのが安心です。
粗たんぱく質の%は「量」の目安で、「質」までは示していません。質は、消化されやすさと、必須アミノ酸がそろっているかで決まります。動物性・植物性のどちらかにこだわるより、総合栄養食の表示を確認し、便の状態を観察するほうが、実際の体への合い方を判断しやすくなります。
原材料欄の最初に書かれた食材で、主なたんぱく源を推測する
パッケージの原材料欄は、ペットフードの公正競争規約により、原則として使用量の多い順に記載し、添加物は最後に書くことになっています。この並び順を知っていると、そのフードの主なたんぱく源が何かを推測できます。
最初のほうに鶏肉や魚、ラム肉などの動物性の食材が書かれていれば、それが主なたんぱく源のひとつだと考えられます。反対に、最初のほうに穀類や豆類が並んでいれば、植物性の原材料が多く使われている可能性があります。
ここでやりがちなのが、パッケージの表に大きく描かれた食材を主原料だと思い込むことです。商品名に「チキン」「サーモン」とついていても、原材料欄で見ると上位に別の食材が並んでいる、ということもあります。商品名やイラストより、原材料欄の順番のほうが中身を正直に語っています。
なお、並び順は重量の順なので、水分を多く含む生肉は、乾燥させた原材料より上位に来やすいという特徴もあります。並び順は目安として使い、たんぱく質の量そのものは成分欄の%で確認する、という使い分けがコツです。食物アレルギーが心配な犬では、原材料欄で特定の食材が入っていないかを確かめる場面でも、この欄が役立ちます。
鶏むね・卵・鮭・豆腐は100gでどれだけ違う?
犬ごはんノート調べ:食品成分表で並べる5食材
トッピングや手作りごはんで使われることが多い食材について、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の値を、犬ごはんノートで一覧にしました。数値はすべて100gあたり、生の状態の値です。成分表は食品成分データベースで誰でも確認できます。
| 食材 | たんぱく質 | エネルギー | 脂質 | 水分 |
|---|---|---|---|---|
| 鶏むね肉(皮なし) | 23.3g | 105kcal | 1.9g | 74.6g |
| 鶏むね肉(皮つき) | 21.3g | 133kcal | 5.9g | 72.6g |
| しろさけ | 22.3g | 124kcal | 4.1g | 72.3g |
| 鶏卵(全卵) | 12.2g | 142kcal | 10.2g | 75.0g |
| 木綿豆腐 | 7.0g | 73kcal | 4.9g | 85.9g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年。人の食品としての値で、犬の必要量の基準ではありません。
この表から見えるのは、同じ「たんぱく源」でも、たんぱく質と一緒についてくる脂質やエネルギーが食材ごとに違うということです。たんぱく質を足すつもりでトッピングしても、食材によっては脂質やエネルギーも一緒に増えます。
注意したいのは、これらは人の食品の値であり、犬が1日にどれだけ食べればよいかを示すものではない、という点です。食材の性格を比べる物差しとして使いましょう。
鶏むね肉は皮を外すだけで脂質が変わる
鶏むね肉は、皮なしなら100gあたりたんぱく質23.3g・脂質1.9g・105kcal、皮つきならたんぱく質21.3g・脂質5.9g・133kcalです。同じ部位でも、皮があるかないかで脂質とエネルギーが変わり、たんぱく質は皮なしのほうが多くなります。
理由は単純で、鶏の皮には脂が多く含まれているからです。皮つきのまま使うと、同じ重さの中に脂の多い皮が混ざるぶん、たんぱく質の比率は下がり、脂質とエネルギーが上がります。たんぱく質を補う目的でトッピングするなら、皮を外した鶏むね肉のほうが目的に合っています。
やりがちな失敗は、「鶏肉ならどれでも低脂肪」と思って、皮つきのむね肉やもも肉をそのまま使うことです。体重管理中の犬では、トッピングの脂質とエネルギーが思った以上に積み重なることがあります。
鶏むね肉を使うときは、皮を取り除き、加熱してから小さく切って与えるのが基本です。味付けは不要です。量はあくまで主食の補助にとどめ、トッピングを足したぶん主食のフードを減らして全体の量を調整しましょう。
卵と鮭は、たんぱく質と一緒に脂質もついてくる
鶏卵(全卵・生)は100gあたりたんぱく質12.2g・脂質10.2g・142kcal、しろさけ(生)はたんぱく質22.3g・脂質4.1g・124kcalです。成分表にはリンの値も載っていて、鶏卵は170mg、しろさけは240mg、鶏むね肉(皮なし)は220mgです。
卵はたんぱく質の量だけを見ると鶏むね肉より少なめですが、脂質は表の中でいちばん多く、エネルギーも高めです。卵黄に脂質が多く含まれているためです。「卵はたんぱく質食材」というイメージから、たんぱく質を補うつもりで多めに与えると、脂質とエネルギーのほうが多く増えることになります。
鮭は鶏むね肉(皮なし)に近いたんぱく質量ですが、脂質はやや多めです。魚は骨があるので、トッピングにするときは骨を丁寧に取り除く手間がかかります。
| 分類・主な原材料 | 動物性のたんぱく源(卵白+卵黄) |
| 栄養成分の目安 | 100gあたり たんぱく質12.2g・脂質10.2g・142kcal・水分75.0g・リン170mg(日本食品標準成分表 八訂 増補2023年) |
| 与えるときの注意 | 加熱して味付けせずに少量から。脂質も多いので、体重管理中の犬は量に注意 |
| 向いている犬・場面 | 主食に少し変化をつけたいときのトッピング。食物アレルギーの心配がある犬は獣医師に確認を |
豆腐は水分が多く、たんぱく質は薄め
木綿豆腐は100gあたりたんぱく質7.0g・脂質4.9g・73kcal・水分85.9gです。表の中では水分がいちばん多く、たんぱく質はいちばん少なくなっています。100gのうち大半が水分なので、同じ重さで比べると、たんぱく質の量は肉や魚より少なくなるわけです。
ここでも、先ほどの「水分込みの%」の話が当てはまります。豆腐はたんぱく質食材として紹介されることが多いものの、重さの多くは水です。「豆腐をたっぷりのせたから、たんぱく質もしっかり足せた」と考えると、実際の量とのずれが生まれます。
また、植物性であることから、大豆などは含硫アミノ酸が少ないとされる点も思い出しておきたいところです。豆腐は主食のたんぱく源として頼るより、食感や水分を足すトッピングの一種として考えるほうが現実的です。
豆腐を与える場合も、味付けはせず、少量から様子を見ます。大豆は食物アレルギーの原因になりうる食材のひとつに挙げられているので、はじめて与えた後は皮膚の様子や便の状態を観察しましょう。
トッピングで足すときにやりがちな失敗
総合栄養食に肉を足すと、バランスが崩れることがある
「たんぱく質を増やしてあげたい」と、フードに鶏肉などをトッピングする飼い主は少なくありません。気持ちはよくわかりますが、ここにはひとつ落とし穴があります。総合栄養食は、そのフードと水だけで必要な栄養がまかなえるように設計されているので、ほかの食材を足すと、その設計されたバランスから外れていくことになるのです。
肉を足せばたんぱく質は増えますが、同時にエネルギーや脂質、ミネラルの比率も変わります。少量なら大きな影響はありませんが、トッピングの割合が増えるほど、主食のフードが担っていたビタミンやミネラルの比率は薄まっていきます。
喜んで食べるからと、フードの量はそのままで鶏肉や卵を毎日上乗せしていくケースです。原因は、トッピングにもエネルギーがあることを計算に入れていないこと。続けるうちに体重が増えたり、フードを残してトッピングだけ食べるようになったりします。対策は、トッピングを足したぶん主食を減らして全体の量を調整し、主食が食事の中心であり続けるようにすることです。
トッピングは、あくまで主食を引き立てる脇役と考えましょう。食いつきが落ちたときのきっかけづくりや、食事に変化をつける目的で、少量を上手に使うのがコツです。
生のままではなく、加熱して味付けしないのが基本
肉や魚、卵をトッピングにするときは、加熱してから与え、塩やしょうゆなどの味付けはしないのが基本とされています。人の食材として売られているものは、人が加熱して食べることを前提に流通しているからです。
加熱には、食材の衛生面の不安を減らすことに加えて、犬にとって食べやすい状態にする意味もあります。肉は加熱すると水分が抜けて縮むので、生の状態と比べると同じ重さでも中身が詰まった状態になります。成分表の値は生の状態のものなので、加熱後の重さで量を考えると、実際に与えるたんぱく質やエネルギーは生の値より多めになる点も頭に入れておきましょう。
やりがちなのは、人の料理を作るついでに、味付けした肉を少し取り分けてしまうことです。人向けの味付けは犬には必要のないものです。取り分けるなら、味付けをする前の段階で分けておきます。
骨のある魚や鶏肉は、骨を取り除いてから与えます。与える大きさは、犬の口の大きさや食べ方に合わせて小さく切り、丸のみしにくいようにしましょう。
足した分だけ主食を減らす、という発想を持つ
トッピングで失敗しないためのいちばんのコツは、「足したら、そのぶん引く」という発想です。1日の食事の総量は、体重や活動量によっておおよそ決まっています。トッピングでエネルギーを足したら、主食のフードを減らして全体を調整しなければ、食べる量は増える一方です。
なぜこれが大事かというと、前の章で説明したとおり、食事の総量が多すぎれば体重が増え、少なすぎればタンパク質が燃料側に回ってしまうからです。どちらに偏っても、たんぱく質を足した意味が薄れてしまいます。
体重は、同じ時間帯に同じ条件で量ると変化がわかりやすくなります。トッピングを始めてから体型が変わってきたら、トッピングか主食の量を見直すサインです。
手作りで主食を組み立てるなら、自己流で続けない
トッピングから一歩進んで、手作りごはんを主食にしたいと考える飼い主もいます。手作りには、食材を自分で選べる、食事の変化を楽しめるといった良さがあります。一方で、たんぱく質を含む栄養を犬の基準に合わせて組み立てるのは、思っている以上に難しい作業です。
その理由は、これまで見てきたとおり、犬は人より必須アミノ酸が1種類多く、成長段階ごとに必要なたんぱく質の水準も違い、さらに食材ごとにたんぱく質と一緒についてくる脂質や水分がまちまちだからです。ひとつの食材に偏ったり、植物性のたんぱく源が中心になったりすると、アミノ酸の組み合わせが崩れるおそれがあります。
よくある失敗は、「鶏むね肉とごはんと野菜」のような献立を、良さそうだからとずっと続けてしまうことです。見た目はヘルシーでも、ビタミンやミネラルまで含めた全体のバランスがとれているかは、計算しないとわかりません。
手作りを主食にしたい場合は、犬の栄養に詳しい獣医師に相談しながら献立を組み立てるのが確実です。まずは総合栄養食を主食に、手作りはトッピングとして取り入れるところから始めると、失敗のリスクを抑えられます。
シニア犬・腎臓・アレルギーが気になるときの考え方
腎臓はタンパク質の分解産物を体の外へ出す臓器
シニア犬とタンパク質の話でよく出てくるのが腎臓です。ペットフードメーカーの解説では、腎臓はタンパク質の分解産物を除去し、尿中に排出すると説明されています。体の材料やエネルギーとして使われたタンパク質は、最終的に分解され、その分解産物を体の外に出す役目を腎臓が担っているのです。
この仕組みを知ると、なぜ「タンパク質と腎臓」がセットで語られるのかがわかります。タンパク質をたくさん摂れば、そのぶん分解産物も増え、腎臓が処理する量も増えます。健康な腎臓なら問題なく処理できても、腎臓の働きが落ちている場合には、その処理が負担になりうる、という考え方です。
ただし、これは「タンパク質が腎臓を悪くする」という単純な話ではありません。腎臓の状態は犬によって違い、健康な犬にとってタンパク質は欠かせない栄養素です。自己判断でタンパク質を大きく減らすと、今度は不足のリスクが出てきます。
腎臓の状態は、血液検査や尿検査で調べないとわかりません。シニア期に入ったら定期的な健康診断で腎臓の数値も確認してもらい、食事の方針はその結果をもとに獣医師と決めましょう。
高齢犬への高タンパク食には、否定的な獣医師もいる
ペットフードメーカーの解説では、一部の獣医師は腎臓病をもつ犬や高齢犬に高タンパク食を与えることに対して否定的だと紹介されています。一方で、年齢を重ねると筋肉が落ちやすくなるため、たんぱく質をしっかり摂るべきだという考え方もあり、シニア犬のタンパク質量については一律の答えが出ていないのが実情です。
意見が分かれるのは、先ほど説明したとおり、シニア犬の体の状態に大きな個体差があるからです。腎臓の働きが落ちている犬と、臓器は元気でも筋肉が落ちてきている犬とでは、同じ「シニア」でも食事に求めるものが違います。
やりがちな失敗は、「うちの子もシニアだから」と、ネットで見た情報だけで高タンパクや低タンパクのフードに切り替えてしまうことです。腎臓病など病気が疑われる場合に使われる療法食は、獣医師の指導のもとで与えるものです。自己判断で選ぶものではありません。
シニア期のフードを見直すときは、健康診断の結果を手元に置き、今のフードの成分表示と一緒に獣医師に見てもらうと、話がスムーズに進みます。

「うちの子も、そろそろシニア用のごはんに替えたほうがいいのかな」。7歳を過ぎたころ、売り場で「シニア用」「高齢犬用」と書かれた袋が並んでいるのを見て、どれを選べ…
食物アレルギーは、肉や穀類などのたんぱく源が原因になりうる
タンパク質は、食物アレルギーとも関係があります。ペットフードメーカーの解説では、アレルゲンになりうる食材として、肉類(牛、羊、豚、鳥)、白米、大豆、大麦、小麦などが挙げられています。肉だけでなく、穀類や豆類に含まれるたんぱく質も原因になりうるということです。
食物アレルギーは、季節を問わず1年中症状が現れ、1歳未満からの発症が多いとされています。主な症状として、紅斑や発疹、かゆがる、引っ掻く、脱毛、皮膚のにおいなどがあり、顔や背中、肛門のまわりに出やすいと紹介されています。
やりがちなのは、「かゆがっているから、とりあえず別の肉のフードに替えてみよう」と、自己判断で次々とフードを替えてしまうことです。原因がはっきりしないまま替え続けると、何が合わなかったのかがかえってわからなくなります。かゆみや皮膚の変化は、食物アレルギー以外の原因でも起こります。
原因の特定は、獣医師と相談しながら根気よく進めるものとされています。原因を探るために特定の食事に絞る方法がとられることもありますが、その期間や進め方は獣医師の指示に従いましょう。受診のときは、今のフードのパッケージ(原材料欄)を持参すると役立ちます。
シーン別:あなたの犬に合うタンパク質の考え方
ここまでの内容を、読者の状況別に整理してみます。どのタイプでも共通するのは、「総合栄養食を主食にし、対象年齢を合わせる」という土台です。
子犬を迎えたばかりの飼い主は、成長期の基準(乾物22.5%以上)に合わせた「成長期用」または「全成長段階用」の総合栄養食を選びましょう。成犬用に切り替える時期は、体の成長が落ち着いてからです。
健康な成犬の飼い主は、成犬の基準(乾物18%以上)を満たした総合栄養食であれば、%の細かい差にこだわる必要はありません。高タンパクのフードを試すなら、便の状態や体型の変化を見ながら、日数をかけて切り替えます。
シニア犬の飼い主は、年齢だけでタンパク質を増やす・減らすを決めず、健康診断の結果をもとに獣医師と相談しましょう。体質が気になる犬の飼い主は、原材料欄でたんぱく源を確認する習慣をつけ、皮膚の変化が続くときは早めに相談を。トッピングを楽しみたい飼い主は、皮なしの鶏むね肉など脂質の少ない食材を少量使い、足したぶん主食を減らすことを忘れずに。
まとめ:犬のタンパク質は「基準の%」と「質」と「体の状態」で考える
犬にとってタンパク質は、筋肉や皮膚、被毛をつくる材料であり、エネルギー源でもある欠かせない栄養素です。必須アミノ酸は人より1種類多い10種類とされ、人にとってバランスの良い食事がそのまま犬に合うとは限りません。AAFCOの基準では成犬で乾物18%以上、子犬や妊娠・授乳期の母犬で乾物22.5%以上が最低ラインで、上限は設定されていないものの、それは多いほど良いという意味ではありません。
パッケージの「粗たんぱく質○%以上」は、水分を含めた製品全体に対する最低保証の値です。ウェットとドライを比べるときは水分の%もあわせて読み、乾物に換算して同じ物差しにそろえます。そして何より先に確認したいのが、総合栄養食の表示と対象年齢です。トッピングでたんぱく質を足すなら、皮なしの鶏むね肉のように脂質の少ない食材を選び、加熱して味付けせず、足したぶん主食を減らしましょう。シニア犬の食事や、腎臓・食物アレルギーが気になる場合は、自己判断でフードを替えず、獣医師に相談するのが近道です。
最初の一歩として、今あげているフードの袋を手に取り、「総合栄養食」の表示、対象年齢、粗たんぱく質と水分の%の3か所を確認してみてください。それだけで、今の食事が基準に沿っているかどうかが見えてきます。
※フードの成分や表示内容は変更されることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトや製品パッケージでご確認ください。

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