「市販のジャーキーは原材料が気になるから、家で作ってあげたい」「ささみを干すだけなら簡単そうだけど、生焼けや日持ちは大丈夫?」。手作りジャーキーは、材料が肉1種類だけで済むぶん、何が入っているかを自分で把握できるおやつです。その一方で、作り方をひとつ間違えると、食中毒菌が残ったり、カロリーを多く与えすぎたりしやすいおやつでもあります。
先に結論をお伝えします。手作りジャーキーは、脂質の少ない鶏ささみなどを使い、乾かす前に中心までしっかり加熱し、味付けをせず、1日のおやつ枠(必要なエネルギー量の20%以内)に収めるなら、犬のおやつとして取り入れやすい一品です。ポイントは「低温でじっくり乾かせば菌も死ぬ」という思い込みを外すこと。乾燥の途中では肉の温度が意外と上がらない、という理屈があるんです。
この記事では、文部科学省の食品成分表、厚生労働省・農林水産省の食中毒予防の情報、米国農務省のジャーキーの安全指針、環境省のペットフード・ガイドラインをもとに、肉の選び方、加熱と乾燥の手順、使わない食材、与える量、保存の考え方まで順番に解説します。
・ささみ・むね肉・砂肝・豚もも肉の脂質を成分表で比べた選び方
・「乾かす前に加熱する」が安全の分かれ目になる理由
・体重5kgの犬なら1日どれくらいまでが目安か(計算例つき)
・作り置きを冷蔵・冷凍でどう扱うか
手作りジャーキーは犬にあげていい?市販品との違いは「表示」と「水分」

手作りジャーキーは「主食」ではなく「おやつ」の位置づけ
まず押さえたいのは、手作りジャーキーはあくまでおやつであって、ごはんの代わりにはならないという点です。ペットフード公正取引協議会は、ペットフードを使用目的によって「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」の4つに分けています。このうち、そのフードと水だけで健康を維持できるように栄養バランスが設計されているのが総合栄養食で、ジャーキーのようなおやつは間食に当たります。
肉を干しただけのジャーキーは、たんぱく質は豊富でも、カルシウムやビタミン類など犬に必要な栄養をすべてそろえたものではありません。そのため、よく食べるからといってジャーキーの量を増やし、ドッグフードを減らしていくと、栄養の偏りにつながりやすくなります。やりがちなのが、食の細いシニア犬や子犬に「これなら食べるから」とジャーキーを主食代わりにしてしまうケースです。
手作りジャーキーは、しつけのごほうびやコミュニケーションの一品として、総合栄養食のごはんに少しだけ足すものと考えておくと失敗がありません。食欲が落ちてジャーキーしか食べない状態が続くときは、おやつの工夫で解決しようとせず、獣医師に相談するのが安心です。
間食(おやつ)=ペットフード公正取引協議会の目的分類のひとつ。市販の間食には「給与限度量」(総合栄養食の基準を満たす間食は「給与量の目安」でも可)の表示が求められます。手作りジャーキーには当然この表示がないので、量の上限は飼い主が自分で決める必要があります。(出典:ペットフード公正取引協議会「目的による分類」)
肉を乾かすと何が変わる?成分表で見る「水分」と「カロリー密度」
ジャーキーは、肉から水分を抜いて保存性を上げた食べ物です。水分が減ると、同じ重さあたりのカロリーやたんぱく質は増えます。文部科学省の日本食品標準成分表で鶏ささみ(若どり)を見ると、100gあたり生は水分75.0g・98kcal、ゆでは水分69.2g・121kcal、焼きは水分66.4g・132kcalです。加熱で水分が少し抜けただけでも、100gあたりのカロリーはこれだけ上がります。
ジャーキーはここからさらに水分を飛ばすので、重さあたりのカロリーはもっと高くなります。米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)は、1ポンドの肉がジャーキーにすると約4オンス、つまりおよそ4分の1の重さになると説明しています。肉が持っていたカロリーはほとんどそのまま残り、重さだけが減るというイメージです。
やりがちなのが、「ささみは低カロリーだから、ジャーキーもたくさんあげて大丈夫」という思い込みです。小さく軽くなったぶん、見た目の量で判断すると生肉の何倍ぶんものカロリーを与えることになりかねません。量は「乾燥後の重さ」ではなく「使った生肉の重さ」で考えるのがコツです。具体的な計算は後半の量のセクションで紹介します。
手作りのメリットとデメリットを正直に比べる
手作りジャーキーのいちばんのメリットは、原材料を自分で決められることです。肉1種類だけで作れば、何が入っているかが一目でわかります。食物アレルギーの可能性があって特定の肉を避けたい場合や、脂質の少ない部位だけを使いたい場合にも調整がききます。市販品より薄く切ったり小さくちぎったりと、愛犬の口の大きさに合わせて形を変えられる点も便利です。
一方でデメリットもはっきりあります。ひとつは食中毒菌のリスク管理を自分で担うこと。市販のペットフードはペットフード安全法の基準のもとで製造されていますが、家庭の台所ではその管理を飼い主がする必要があります。もうひとつは日持ちです。手作りでは乾燥の度合いが毎回ばらつくうえ、保存料も使わないため、市販品と同じ感覚で常温に置いておくのはおすすめできません。
「手作り=無条件に安心」ではなく、「中身が見える代わりに、加熱・保存・量の管理を自分でやるおやつ」と考えるのが正直なところです。市販の無添加おやつと比べて迷う場合は、表示の見方を知っておくと判断しやすくなります。

どの肉を選ぶ?ささみ・むね・砂肝・豚ももの脂質を成分表で比べる
いちばん作りやすいのは鶏ささみ|脂質0.8gの理由
手作りジャーキーの材料として最初に選びやすいのは鶏ささみです。日本食品標準成分表では、鶏ささみ(若どり・生)は100gあたりエネルギー98kcal、たんぱく質23.9g、脂質0.8gです。脂質が少ないということは、乾燥中に脂が酸化してにおいが出たり、保存中に傷んだりしにくいということでもあります。脂は時間とともに空気で酸化しやすいため、ジャーキーのような保存食には脂の少ない部位が向いているんです。
もうひとつの理由は形です。ささみは細長く、筋を取ればそのまま均一な厚さに切りやすいので、火の通りや乾き方のムラが出にくくなります。むね肉のように厚みが部分で違う肉だと、薄いところが焦げて厚いところが生乾き、ということが起こりがちです。
注意したいのは、ささみの中央に通っている白い筋です。筋は乾燥すると硬くなり、小型犬では噛み切りにくくなります。下ごしらえで包丁の背を使って引き抜いておくと、食べやすく仕上がります。なお、ささみを使った普段のごはんやトッピングのアレンジも知りたい場合は、こちらの記事がまとまっています。

むね肉・砂肝はどう違う?食感と下ごしらえの手間で選ぶ
鶏むね肉(若どり・皮なし・生)は100gあたり105kcal、たんぱく質23.3g、脂質1.9gで、ささみに近い低脂質の部位です。ささみより1枚が大きく、まとめて作りたいときに向いています。ただし必ず皮を取り除くのが前提です。皮つきのまま作ると脂が多くなり、酸化しやすく日持ちも悪くなります。
砂肝(すなぎも・生)は100gあたり86kcal、たんぱく質18.3g、脂質1.8g、鉄2.5mgです。4つの中でもっともエネルギーが低く、鉄を多く含みます。一方で、表面の銀色の硬い膜(銀皮)があり、乾燥させるとさらに硬く、噛み切りにくい食感になります。噛む力の強い成犬には噛みごたえのあるおやつになりますが、子犬やシニア犬には銀皮を取り除き、小さく切る下ごしらえが欠かせません。
やりがちな失敗は、むね肉を厚いまま、砂肝を丸ごと乾燥させてしまうことです。厚い部分は中まで熱が届きにくく、乾燥にも時間がかかります。どちらも「ささみと同じくらいの厚みにそろえる」ことを意識すると、仕上がりが安定します。
豚もも肉は脂質6.0g|赤身でも「低脂肪」とは限らない
鶏肉に飽きた、あるいは鶏肉を避けたいという理由で豚肉を使う場合もあるでしょう。成分表では、豚もも(大型種肉・皮下脂肪なし・生)は100gあたり138kcal、たんぱく質21.5g、脂質6.0gです。脂肪を取り除いた赤身のもも肉でも、ささみの0.8gと比べると脂質は7倍以上あります。
脂質が多い肉は、乾燥中に脂がにじみ出て表面がべたつき、保存中の酸化も進みやすくなります。また、豚肉は生や加熱不足での食中毒リスクがある肉なので、鶏肉と同じく中心までの十分な加熱が前提です。見た目が赤身でも「低脂肪のおやつ」として扱わず、量を控えめにするのが無難です。
脂質の多いおやつが続くと、体重が増えやすくなります。脂質を控えるよう獣医師に言われている犬や、体重管理中の犬は、豚肉ではなく鶏ささみを選ぶか、ジャーキーを作る前にかかりつけの獣医師に相談してください。下の表は、各部位の生100gあたりの値を並べたものです。
| 項目 | 鶏ささみ | 鶏むね(皮なし) | 砂肝 | 豚もも(皮下脂肪なし) |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | 98kcal | 105kcal | 86kcal | 138kcal |
| たんぱく質 | 23.9g | 23.3g | 18.3g | 21.5g |
| 脂質 | 0.8g | 1.9g | 1.8g | 6.0g |
| 水分 | 75.0g | 74.6g | 79.0g | 71.2g |
| ジャーキーにするときの向き不向き | 厚さをそろえやすく初めてでも作りやすい | 皮を除き、厚みをそろえて切る | 銀皮を除く。硬くなりやすい | 脂が出やすく量は控えめに |
馬肉や牛肉も使える?「珍しい肉なら安心」ではない
鶏肉や豚肉のほかに、馬肉や牛肉でジャーキーを作る飼い主もいます。どの肉でも作り方の基本は同じで、脂の少ない赤身を選び、中心まで加熱してから乾燥させることが前提です。部位によって脂質は大きく違うので、使う前に食品成分表で脂質の値を確認しておくと、ささみと比べてどれくらい量を控えるべきかの見当がつきます。
気をつけたいのは、「あまり食べたことのない肉ならアレルギーが出にくい」と考えて、手当たり次第に試してしまうことです。犬の食物アレルギーは、牛肉・鶏肉・豚肉など、さまざまなたんぱく質が原因になりうるとされています。珍しい肉だからといって、その犬に合うとは限りません。
新しい肉を試すときは、一度に1種類だけ、少量から始めるのが基本です。複数の肉を同時に試すと、体をかく、便がゆるいといった変化が出たときに、どの肉が合わなかったのかわからなくなります。皮膚のかゆみや下痢などが続く場合は、自己判断で食材を変え続けずに獣医師に相談してください。市販の馬肉ジャーキーの特徴を知りたい場合は、こちらの記事も参考になります。

実は「低温でじっくり乾かす」だけでは足りない?乾燥の前に加熱が要る理由

鶏肉の加熱の目安は「中心75℃以上で1分間以上」
手作りジャーキーの安全を左右する一番のポイントは加熱です。農林水産省は、鶏肉を原因とする食中毒の代表であるカンピロバクターについて、お肉の中心部までよく加熱すること(中心の温度が75℃以上で1分間以上)が重要で、中心が白くなるまでが目安だと説明しています。厚生労働省も同じく、中心温度75℃で1分間以上の加熱が重要だとしています。
カンピロバクターは、ニワトリをはじめ多くの動物が保菌している菌です。農林水産省によると、数百個程度という比較的少ない菌量で人への感染が成立するとされ、「新鮮だから生で食べられる」とは限らないとされています。つまり、スーパーで買った新鮮なささみでも、菌がついている前提で扱う必要があるということです。
犬のおやつを作るときもこの考え方は同じです。加熱が足りないジャーキーは、犬だけでなく、作ったり触ったりする人にとっても食中毒のリスクになります。特に小さな子どもや高齢の家族がいる家庭では、ジャーキーを渡す手からの二次汚染にも気を配りたいところです。詳しくは農林水産省「カンピロバクター食中毒予防のポイント」で確認できます。
なぜ乾燥機や低温オーブンでは菌が残りやすいのか
ここが意外と知られていないポイントです。「低い温度で何時間も乾かせば、菌もそのうち死ぬだろう」と考えがちですが、米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)は、家庭のオーブンや食品乾燥機で生肉をそのまま乾燥させると、病原菌が生き残る可能性が高いと注意を促しています。
理由は水分の蒸発です。乾燥機や低温のオーブンの中では、肉から蒸発する水分が熱の大部分を吸収するため、水分の大半が抜けるまで肉そのものの温度はなかなか上がりません。そして、肉が乾いてようやく温度が上がり始めるころには、菌は熱に対する抵抗性を高めていて、生き残りやすくなっているというのです。汗をかいているあいだは体温が上がりにくいのと似た理屈ですね。
そのためUSDA FSISは、乾燥させる前に、肉は160°F(約71℃)、鶏肉は165°F(約74℃)まで、食品温度計で測りながら蒸すかローストで加熱することを推奨しています。多くの乾燥機の説明書にはこの工程が書かれていない、とも指摘しています。手作りジャーキーは「加熱してから乾かす」の2段階で作る、と覚えておくと安全側に倒せます。(出典:USDA FSIS「Jerky and Food Safety」)
状況:生のささみを薄く切って、そのまま食品乾燥機や低温のオーブンに入れ、何時間もかけてカラカラに仕上げる。
原因:乾燥中は蒸発する水分が熱を奪うため、肉の温度が上がりにくい。乾いた後の菌は熱に強くなり、生き残りやすい。
対策:乾燥の前に、ゆでる・蒸す・焼くなどで中心まで加熱する(鶏肉は中心75℃以上で1分間以上が目安)。その後に乾燥させる2段階で作る。
天日干しや下味だけでは安全にならない
昔ながらの干し肉のイメージで、ベランダで天日干しにしたくなるかもしれません。しかしUSDA FSISは、天日干しは熱源が安定しないうえ、動物や虫、ほこり、細菌による汚染の可能性があるため、肉のジャーキーには推奨していません。ベランダに並べた肉は、鳥や虫が寄ってくる原因にもなります。
また、「漬け込めば菌が減るのでは」という考えも当てはまりません。USDA FSISは、マリネ(漬け込み)しただけでは生肉は安全にならないとしています。そもそも犬用のジャーキーには味付けは不要なので、漬け込み液に頼る場面はほとんどありませんが、「何かに浸したから大丈夫」という発想は捨てておきましょう。
やりがちな失敗は、「乾燥しているから菌は増えない」と考えて、加熱の工程を省くことです。乾燥は菌を増えにくくする方法ではあっても、すでについている菌を確実に減らす方法ではありません。安全の軸は「加熱」、保存性の軸は「乾燥」と役割を分けて考えると、どの工程を省いてはいけないかがはっきりします。
温度計がない家庭でできる確認方法
USDA FSISは食品温度計で中心温度を測ることを推奨していますが、家庭によっては温度計がないこともあるでしょう。その場合の目安として、農林水産省は「中心が白くなるまで」、厚生労働省は「肉汁が透明になり、中心部の色が白っぽく変化すること」を挙げています。一番厚い部分を切って断面を確認するのが確実です。
ここでの失敗例は、表面の色だけで判断してしまうことです。ささみは表面がすぐ白くなるため、外側だけ見ると火が通ったように見えます。特に厚みのあるむね肉は、中心がピンク色のまま残りやすいので注意が必要です。
確認のコツは、同じ厚さに切りそろえた肉のうち、最も厚い1枚を基準にすることです。その1枚の中心が白くなっていれば、ほかの薄い肉にも火が通っていると判断しやすくなります。ゆでて加熱する場合は、ゆで汁ごと冷まさずにすぐ取り出し、次の乾燥工程に移ると、水っぽさも抑えられます。温度計を1本用意しておくと、毎回迷わずに済むので、ジャーキーを定期的に作るなら検討する価値があります。
手作りジャーキーの作り方|下ごしらえから乾燥までの4ステップ
下ごしらえは「洗わない」「器具を分ける」が基本
作り始める前に、台所の衛生を整えておきます。農林水産省は、生肉を洗うと水はねで食中毒菌が飛び散り、キッチンや周りの食材が汚染される可能性があるため、肉は洗わないよう呼びかけています。表面の水気はキッチンペーパーで押さえるだけで十分です。
もうひとつは器具の使い分けです。農林水産省は、生肉用と他の食材用で調理器具を分けるか、肉を最後に切ることを勧めています。厚生労働省も、生肉はビニール袋や容器に入れて、他の食品に肉汁がかからないようにすることを挙げています。犬のおやつを作ったまな板で、そのまま家族のサラダを切るのは避けましょう。
冷凍肉を使うときの解凍にも注意があります。USDA FSISは、冷凍肉は台所のカウンターではなく冷蔵庫で解凍するよう勧めています。常温で解凍すると、表面が温まって菌が増えやすい温度に長く置かれるためです。前日の夜に冷蔵庫へ移しておくと、作業当日に慌てずに済みます。
切り方で仕上がりが変わる|厚さをそろえ、筋を取る
ジャーキーの出来を左右するのは、切り方です。厚さがバラバラだと、薄いところは焦げ、厚いところは乾きにくく、加熱ムラの原因にもなります。何より大事なのは、すべての肉をできるだけ同じ厚さにそろえることです。
ささみは筋を取り除いたあと、縦に薄く切るとスティック状、斜めに切ると平たいチップ状になります。繊維に沿って切ると噛みごたえが出て、繊維を断つように切るとほぐれやすい食感になります。噛む力が弱い子犬やシニア犬には、繊維を断つ切り方のほうが食べやすくなります。
やりがちなのが、生のままでは柔らかくて薄く切りにくいため、分厚くなってしまうことです。このときは、冷凍庫で少し冷やして半分凍った状態にすると、包丁が入りやすくなります。また、ゆでてから裂く方法もあります。先にゆでて中心まで加熱し、冷めてから手で細く裂いてから乾燥させれば、加熱の確認と厚さの調整を同時に済ませられます。
加熱してから乾かす|電子レンジ・オーブン・乾燥機の使い分け
加熱と乾燥の道具は、家にあるもので選べます。ただ、機器ごとの温度設定や加熱時間は、機種や肉の量によって大きく変わるため、ここでは一律の数字は示しません。どの道具を使う場合も、確認すべきことは「乾燥前に中心まで火が通っているか」の一点です。
電子レンジは短時間で加熱できますが、加熱ムラが出やすいのが弱点です。途中で裏返したり、配置を変えたりしながら様子を見ます。オーブンは一度にたくさん並べられ、加熱と乾燥を続けて行えますが、低温設定のまま生肉から始めると先ほどの「菌が残りやすい」状態になりかねません。
食品乾燥機を使う場合は、USDA FSISの考え方に沿って、先にゆでる・蒸すなどで加熱しておき、そのうえで乾燥させます。USDA FSISは、乾燥中の庫内温度を130°F〜140°F(約54〜60℃)に保てる、温度調節つきの乾燥機を使うよう勧めています。温度調節のない機種や、設定温度が低すぎる機種では、乾燥に時間がかかりすぎて傷みやすくなる点も覚えておきましょう。
乾燥の仕上がりはどこで見極める?
乾燥をどこで止めるかは、食感と日持ちの両方に関わります。水分が多く残っているとしっとり柔らかく食べやすい反面、傷みやすくなります。逆にカラカラに乾かすと日持ちは良くなりますが、硬くなって小型犬やシニア犬には噛みにくくなります。
見極めの目安は、全体の色が均一になり、指で押しても肉汁がにじまず、表面にべたつきがない状態です。厚さによって乾き方が違うので、薄いものから順に取り出していくと、焦げすぎを防げます。取り出したら、網の上などで完全に冷ましてから保存容器に入れてください。温かいまま密閉すると、容器の中で水滴がつき、カビや傷みの原因になります。
なお、USDA FSISは、乾燥は食品が傷む前に進める必要があり、微生物が増殖できなくなるまで十分に水分を取り除かなければならないとしています。家庭ではどこまで水分が抜けたかを数値で測れないため、見た目や手触りで「十分に乾いた」と判断しても、市販品のような保存性があるとは限りません。だからこそ、手作りのジャーキーは乾燥の度合いにかかわらず、冷蔵や冷凍での保存を基本にするのが安心です。
味付けは要る?ジャーキー作りで使わない食材と調味料
塩・しょうゆは入れない|調味料は高血圧・糖尿病のリスク
人用のジャーキーは塩やしょうゆ、香辛料で下味をつけるのが一般的ですが、犬用には味付けは要りません。栃木県獣医師会は、犬に与えてはいけない食べ物の一覧で、醤油・塩・味噌などの調味料について、高血圧や糖尿病の症状を挙げています。
肉そのものにもナトリウムは含まれています。成分表では、鶏ささみ(生)の食塩相当量は100gあたり0.1gです。犬にとっては、肉の味とにおいだけで十分おいしいおやつになります。犬の食いつきはにおいの影響が大きいとされるので、味付けよりも、肉を焦がさずに香りよく仕上げることを意識したほうが喜ばれます。
やりがちな失敗は、人用に作ったジャーキーを「少しだけなら」と取り分けてしまうことです。人用のジャーキーには塩分や香辛料、場合によってはにんにくなどが入っています。犬用は最初から別に、何も加えずに作るのが基本です。家族で作る場合は、人用と犬用の保存容器を分けて、ラベルを貼っておくと取り違えを防げます。
ねぎ・玉ねぎ・にんにくは煮汁やエキスも避ける
臭み消しや香りづけにねぎやにんにくを使いたくなるかもしれませんが、犬用のジャーキーには使いません。栃木県獣医師会は、長ねぎ・玉ねぎ・にら・にんにくなどのねぎ類について、ねぎ科の「アリルプロピールジサルファイド」という物質が赤血球を破壊するとし、嘔吐・黄疸・溶血・貧血・血尿・下痢などが起こるおそれがあると注意を促しています。
見落としやすいのは、ねぎ類そのものを入れなくても、煮汁やエキスに成分が移る点です。たとえば、家族の料理用に玉ねぎと一緒に煮込んだ鶏肉や、にんにくの入ったスープで下ゆでした肉を、犬用のジャーキーに使い回すのは避けましょう。市販の鶏ガラスープの素やだしの素にも、ねぎ類のエキスや塩分が入っていることがあります。
ささみをゆでるときは、真水だけでゆでるのが原則です。臭みが気になる場合も、香味野菜で消そうとせず、新鮮な肉を使う、ゆでたあとのアクを取るといった方法で対応します。うっかりねぎ類を口にしてしまい、元気がない・尿の色がいつもと違うなどの様子が見られたら、早めに獣医師に相談してください。
香辛料・加工肉・骨つき肉を材料にしない理由
ジャーキーに使う肉の選び方でも、避けたいものがあります。栃木県獣医師会は、唐辛子・七味・こしょうなどの香辛料は下痢や感覚麻痺を、ハム・ソーセージ・てんぷらなどの加工品は塩分が多く高血圧や心臓への負担を招くとしています。手軽だからといってハムやベーコンを乾かして犬用にするのは、塩分の面からおすすめできません。
骨つき肉も材料には向きません。同じく栃木県獣医師会は、鳥や魚などの硬い骨が食道や消化器官を傷つけ、胃腸障害や喉の炎症、嘔吐などを起こすと説明しています。手羽先などを骨ごと乾燥させると、骨は硬く割れやすくなります。ジャーキーには骨を取り除いた肉だけを使いましょう。
ここで紹介した食材の注意点は、ジャーキーに限らず犬のおやつ全般に当てはまります。使ってよいか迷う食材があるときは、栃木県獣医師会「犬に与えてはいけない食べ物」のような獣医師会の情報で一度確認してから使うと安心です。
1日どれくらい?体重5kgなら生ささみ約70g相当が上限の目安
おやつは「1日に必要なエネルギー量の20%以内」が基準
手作りジャーキーをどれくらい与えてよいかは、おやつ全体の枠で考えます。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」は、おやつは1日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、与えた分だけ主要な食事の量も減らすようにしましょう、としています。
ここでいう20%は、ジャーキーだけで使い切る枠ではありません。しつけのごほうびに使うボーロや、歯みがきガム、果物のトッピングなども、すべて同じ枠の中に入ります。ジャーキー作りに慣れてくると、あれもこれもと足してしまい、気づけば枠を大きく超えている、ということが起こりがちです。
また、20%の中に収めたとしても、そのぶんドッグフードを減らさなければ、1日のカロリーは合計でオーバーします。「おやつをあげた日は、ごはんを少し減らす」をセットで習慣にすることが大切です。具体的な計算方法は、ガイドラインにある計算例を使うとわかりやすくなります。出典は環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」です。
体重5kgの計算例|生ささみ約70g、乾燥後は約18gが目安
環境省のガイドラインには、体重5kgの犬の計算例が載っています。安静時のエネルギー要求量は5kg×30+70=220kcalで、これに犬の係数1.6をかけると、1日に必要なエネルギー量は352kcalです。このうち20%を計算すると、おやつ枠は約70kcalになります。
これを鶏ささみに当てはめます。生の鶏ささみは100gあたり98kcalなので、約70kcalは生ささみ約70gに相当します。さらにUSDA FSISの「乾燥すると重さがおよそ4分の1になる」という説明をもとにすると、乾燥後のジャーキーでは約18gが、おやつ枠をすべてジャーキーに使った場合の上限の目安です。生ささみ100gで作れば、乾燥後は約25gになる計算です。
この数字は、ほかのおやつを一切与えず、ジャーキーだけで枠を使い切った場合の上限です。実際には、ほかのおやつと合わせて考え、これより少なめにしておくのが現実的です。体重や年齢、運動量、避妊・去勢の有無によって必要なエネルギー量は変わるので、正確な量を知りたいときは、かかりつけの獣医師に相談してください。
状況:小さく軽くなったジャーキーを「このくらいなら少ない」と感じて、何本も続けて与えてしまう。
原因:乾燥で重さはおよそ4分の1になっても、カロリーはほぼそのまま残る。見た目の量は生肉の数分の1しかない。
対策:作るときに「生肉何gぶんを何本に分けたか」を記録し、1本あたりが生肉何gにあたるかを把握しておく。1日の本数を決めて、その日のおやつ入れから出す。
子犬・シニア犬・小型犬は「硬さ」と「大きさ」も調整する
量だけでなく、硬さと大きさも犬に合わせて調整が必要です。ペット保険会社の情報ページでは、アキレスや蹄、豚の耳などの噛ませるための製品を噛んでいるうちに歯が折れる(破折する)こともあるとして、普段からあまり硬いものを噛ませないよう注意を促しています。カラカラに乾かしたジャーキーや砂肝も、犬によっては同じように硬すぎる場合があります。
読者のタイプ別に考えると、次のように使い分けるのがおすすめです。歯の生え変わり時期の子犬には、乾燥を浅めにした柔らかいものを小さくちぎって。歯や噛む力が弱ってきたシニア犬には、繊維を断つように切って、しっとりめに仕上げたものを。丸飲みしがちな小型犬には、ひと口で飲み込めない長さのスティックではなく、口に入れてすぐ噛み切れる小さなサイズにします。
大型犬や噛むのが好きな犬でも、硬すぎるジャーキーを一気に丸飲みして喉に詰まらせることがあります。与えるときは目を離さず、飲み込み方の様子を見てください。食べたあとにせき込む、よだれが増える、吐こうとするなどの様子があれば、早めに動物病院へ連絡しましょう(歯の破折についての解説ページ)。
作り置きはいつまで?常温・冷蔵・冷凍の考え方
市販品の保存目安をそのまま当てはめない理由
環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、市販フードの開封後の使用期限の目安を、ドライフード・ソフトドライフードは開封後約1か月、セミモイストフードは開封後2週間程度で冷蔵庫で保存、ウェットフードは開封後1日としています。ただし、これは工場で水分を管理して製造された市販品についての目安です。
手作りジャーキーは、家庭で乾燥の度合いを測る方法がなく、保存料も使いません。見た目がカラカラでも、厚い部分の内側に水分が残っていることがあります。そのため、市販のドライタイプと同じように「常温で1か月」と考えるのは危険です。手作りのものは、少なくともセミモイストと同じかそれ以上に傷みやすいものとして扱い、冷蔵庫での保存を基本にしましょう。
もうひとつ知っておきたいのが、USDA FSISの「家庭で乾燥させたジャーキーは1〜2か月保存できる」という記述です。この数字は、人が食べるジャーキーについての目安で、味付けをせず乾燥の度合いも家庭では測れない犬用のジャーキーの保存期間を示したものではありません。海外の情報をそのまま当てはめないように注意してください。
| 項目 | 市販ドライ・ソフトドライ | 市販セミモイスト | 手作りジャーキー |
|---|---|---|---|
| 開封後の目安 | 開封後約1か月 | 開封後2週間程度 | 公的な目安なし。数日で食べきれる量だけ冷蔵 |
| 保存場所 | 直射日光を避け、温度・湿度の低い場所で常温 | 袋をしっかり閉じて冷蔵庫 | 密閉容器で冷蔵。残りは小分けで冷凍 |
| 水分の管理 | 製造時に管理 | 製造時に管理 | 家庭では測れず、仕上がりにばらつき |
出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(手作りジャーキーの列は犬ごはんノートの整理)
冷凍は「1回分ずつ小分け」にすると失敗しにくい
一度にたくさん作ったときは、冷凍保存が便利です。環境省のガイドラインでも、ウェットフードの残りを1日以上保存する場合は冷凍保存して、与える際に解凍するよう案内しています。水分の多い食品は冷凍で保存する、という考え方は手作りジャーキーにも応用できます。
ポイントは小分けにすることです。大きな袋にまとめて冷凍すると、取り出すたびに袋を開け閉めすることになり、残りが室温に触れて結露し、湿気を吸ってしまいます。1日分、あるいは数日分ずつを小さな袋や容器に分けて冷凍し、使う分だけ冷蔵庫へ移して解凍すると、品質を保ちやすくなります。
やりがちな失敗は、冷蔵庫の出し入れを繰り返すことです。環境省のガイドラインでは、ドライフードを冷蔵庫で保存すると、出し入れの際にフード表面に結露が生じると注意しています。ジャーキーも同じで、冷えた容器を何度も出し入れすると表面が湿り、傷みやすくなります。1回に使う分だけを取り出す運用にしておくと、この問題を避けられます。
カビ・におい・べたつきが出たら迷わず処分する
保存中のジャーキーは、与える前に毎回状態を確認しましょう。表面に白や緑の点がある、いつもと違う酸っぱいにおいがする、表面がべたついている、といった変化があれば、もったいなくても与えずに処分します。一部分だけカビがついている場合も、見えない部分に広がっていることがあるので、その袋ごと処分するのが安全です。
脂の多い部位で作ったジャーキーは、時間がたつと脂が酸化して、油の古くなったようなにおいが出やすくなります。これはカビとは別の傷み方で、見た目には変化が少ないこともあるため、においの確認が大切です。鶏ささみのように脂の少ない部位は、この点でも保存に向いています。
作った日付を容器に書いておく習慣をつけると、「いつ作ったものか分からない」という状態を防げます。もし傷んだジャーキーを食べてしまい、嘔吐や下痢、元気がないといった様子が見られたら、自己判断で様子を見続けずに獣医師に相談してください。
まとめ|「加熱してから乾かす」「1日20%以内」の2点を守る
手作りジャーキーは、材料が肉だけなので中身がはっきりわかる一方、安全と量の管理を飼い主が担うおやつです。特に見落とされやすいのが、「低温でじっくり乾かせば菌も死ぬ」という思い込みです。乾燥中は蒸発する水分が熱を奪い、肉の温度が上がりにくいため、先に中心まで加熱してから乾かす2段階の作り方が安全の分かれ目になります。
量は、見た目ではなく「使った生肉の重さ」で考えます。乾燥で重さがおよそ4分の1になってもカロリーはほぼ残るため、小さなジャーキーでも何本も与えれば、すぐにおやつ枠を超えてしまいます。作るときに1本あたりが生肉何gぶんかを把握しておくと、与えすぎを防げます。子犬やシニア犬、小型犬には、硬さと大きさの調整も忘れないようにしましょう。
最初の一歩としては、鶏ささみ1〜2本を真水でゆでて中心まで火を通し、薄く裂いてオーブンで乾かす、という少量の試作から始めるのがおすすめです。少しずつ与えて、便の様子や体調に変化がないかを確かめてから、作る量を増やしていきましょう。食欲や便の様子がいつもと違うときは、早めに獣医師に相談してください。
※最新情報は各公的機関の公式サイトでご確認ください。

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