家族のハンバーグを焼いていると、足元でじっと待つ愛犬の視線が気になります。ひき肉はドッグフードの原材料にもよく使われる食材なので、「少しくらいなら分けてもいいのでは」と迷う飼い主は少なくありません。ただ、人用のハンバーグには、犬に与えてはいけないとされる材料がいくつも入っています。
結論から言うと、玉ねぎ入りの人用ハンバーグは分けないのが原則です。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」は、玉ねぎの成分は加熱しても分解されず、ハンバーグのように玉ねぎを含む加工食品は与えてはいけないと明記しています。一方で、玉ねぎ・塩・香辛料を使わず、ひき肉の中までしっかり火を通した犬用ハンバーグなら、総合栄養食に添えるトッピングとして取り入れる道があります。
この記事では、玉ねぎがなぜ加熱してもNGなのかという理屈から、味付けやつなぎで外したい材料、日本食品標準成分表で見る牛・豚・鶏ひき肉の違い、与える量と保存の考え方までを、公的な資料に沿って順に整理します。
・人用ハンバーグを分けてはいけない理由と、玉ねぎが加熱してもNGとされる仕組み
・塩・こしょう・ナツメグ・牛乳・生の卵白など、犬用で外したい材料と代わりの考え方
・牛・豚・鶏ひき肉の脂質とカロリーの差(日本食品標準成分表より)
・与える量を「おやつ20%以内」で考える方法と、作り置きの冷凍・食べ残しの扱い
犬にハンバーグはあげていい?「人用はNG・犬用は条件つき」の境目

人用ハンバーグを分けてはいけない一番の理由
人が食べるハンバーグは、犬には分けないのが基本です。理由は単純で、一般的なレシピには玉ねぎが入っているからです。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、玉ねぎは犬に食べさせてはいけないものとして挙げられ、さらに「ハンバーグやカレーなどのタマネギが含まれる加工食品」も与えてはいけないと具体的に書かれています。ハンバーグという料理名がわざわざ例に出ているのは、それだけ家庭で起こりやすい場面だということです。
やりがちなのが、「焼いたあとの端っこだけ」「ソースのついていない部分だけ」なら平気だろうと考えるパターンです。玉ねぎはみじん切りにして肉に練り込まれているので、どの部分をちぎっても成分が含まれています。外から見て玉ねぎが見えないことは、入っていないことを意味しません。
コツは、「人用の料理は基本的に分けない」と家族でルールを決めておくことです。外食のハンバーグや冷凍食品、お弁当用の小さなハンバーグも同じ扱いになります。冷凍食品なら原材料名の欄に「たまねぎ」と書かれているかを確認できますが、書かれていなくても塩や香辛料が使われているので、犬には別に用意するほうが確実です。
「肉だけなら大丈夫」が成り立たない加工食品の落とし穴
ハンバーグは、ひき肉の塊ではなく「加工食品」だと考えるとわかりやすくなります。肉・玉ねぎ・パン粉・牛乳・卵・塩・こしょう・ナツメグなどを混ぜ合わせ、ソースをかけて完成する料理なので、肉そのものに問題がなくても、混ぜた材料のどれか1つが犬に合わなければ、全体が与えられない料理になってしまいます。
環境省のガイドラインは、玉ねぎそのものではなくても、エキスがしみ出した味噌汁やすき焼きの割り下も与えてはいけないとしています。ハンバーグに置き換えると、玉ねぎを練り込んだ肉汁、それを使って作るソース、ハンバーグを煮込んだ煮汁まで同じ扱いになるということです。「肉汁をドッグフードにかけて香りづけ」という使い方も避けたいところです。
パッケージ食品の場合は、原材料名の欄を上から順に読むクセをつけておくと判断しやすくなります。ペットフード公正取引協議会の規約では原材料は使用量の多い順に書くことになっていますが、人用食品の表示でも原材料が並んでいるので、「たまねぎ」「オニオンパウダー」「香辛料」「食塩」が並んでいたら犬には向かない、と覚えておきましょう。
犬用に作り直せば何が変わるのか
犬に合わない材料を外し、肉をしっかり加熱して作り直せば、ハンバーグは「肉を食べやすい形にまとめたもの」になります。玉ねぎ・塩・香辛料を使わないこと、生の部分を残さないこと、この2点が犬用ハンバーグの出発点です。
ただし、犬用に作り直したからといって、それだけで毎日のごはんが成り立つわけではありません。ペットフード公正取引協議会は、総合栄養食を「当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの」と定義しています。手作りのハンバーグはこの基準で設計されていないので、主食というより、総合栄養食に添えるトッピングの位置づけで考えるのが現実的です。
よくあるのは、ハンバーグの食いつきがよいからとフードを減らしすぎて、肉ばかりの食事になってしまうケースです。手作りハンバーグを取り入れるときは、量を決めてからフードを差し引く、という順番を守るとバランスが崩れにくくなります。量の考え方は後半の見出しで詳しく扱います。
加熱しても消えない?玉ねぎ・ネギ類が危ないとされる理由
赤血球を壊すとされる成分と、起こりうる症状
玉ねぎが犬にとって問題になるのは、含まれている成分が赤血球を壊すとされているからです。環境省のガイドラインでは、玉ねぎに含まれるアリルプロピルジスルフィドが赤血球を破壊し、大量に食べた場合には血尿、下痢、嘔吐、発熱などを引き起こすおそれがあると説明されています。
赤血球は体中に酸素を運ぶ役割を持つ細胞なので、これが壊されると体のあちこちに影響が出ます。人は玉ねぎを日常的に食べても問題になりにくいため、「人が平気なものは犬も平気」と考えてしまいがちですが、体のしくみが違う以上、同じ食材でも結果が変わります。
注意したいのは、症状がすぐに目に見える形で出るとは限らない点です。食べた直後に元気そうに見えても、それだけで安心材料にはなりません。どのくらいの量で症状が出るかは犬の体格や体質によって違うとされ、家庭で線引きすることは難しいので、「少しだから大丈夫」と自己判断しないことが大切です。
アリルプロピルジスルフィド=玉ねぎなどネギ類に含まれる成分で、犬の赤血球を破壊するとされるもの。環境省のガイドラインでは、加熱してもこの成分は分解されないと説明されています。長ネギ・ニラ・ニンニクにも同様の成分が含まれます。
長ネギ・ニラ・ニンニクも同じ扱いになる理由
玉ねぎだけを避ければよいわけではありません。環境省のガイドラインでは、同様の成分が長ネギ、ニラ、ニンニクなどにも含まれていると説明されています。ハンバーグのレシピでは、玉ねぎの代わりに長ネギを入れたり、香りづけにニンニクを使ったりすることがあるので、「玉ねぎ抜き」のつもりがネギ類入りになっていた、ということが起こりえます。
具体的に気をつけたいのは、和風ハンバーグに添える刻みネギ、ニラを混ぜた変わりハンバーグ、ガーリックソースです。また、市販の合わせ調味料やソース、ハンバーグの素には「オニオンエキス」「ガーリックパウダー」などの形で入っていることがあり、見た目ではわかりません。
犬用ハンバーグを作るときは、ネギ類はすべて使わないと決めてしまうのがいちばん簡単です。家族用と同じまな板や包丁でネギ類を刻んだあとに犬用の材料を扱う場合は、洗ってから使うようにすると混入を防げます。香りが足りないと感じても、犬は人ほど味付けを必要としないので、肉そのものの香りで十分に食べてくれることが多いです。
実は「炒めて取り除けば平気」は成り立たない
意外と知られていないのが、「玉ねぎをよく炒めたり、焼いたあとに取り除いたりすれば大丈夫」という考え方が成り立たないことです。環境省のガイドラインは、加熱してもこの成分は分解されないとはっきり書いています。加熱で甘みが増して刺激が減るのは人の味覚の話で、犬にとっての問題が消えるわけではありません。
さらに、取り除く方法にも限界があります。ガイドラインは、玉ねぎそのものではなくても、エキスがしみ出した味噌汁やすき焼きの割り下も与えてはいけないとしています。ハンバーグでいえば、玉ねぎと一緒に練り込んだ肉は、玉ねぎを取り出せたとしても成分がしみ込んでいる状態です。煮込みハンバーグのスープも同じです。
ネット上には「炒めた玉ねぎを取り出してから」という手順を紹介するレシピも見かけますが、環境省のガイドラインにそうした対処法の記述はありません。玉ねぎに一度触れた肉やスープは使わない、と考えておくのが安全側の判断です。家族用と犬用を同時に作るなら、玉ねぎを入れる前に犬の分のひき肉を取り分けておくのが確実な方法です。
うっかり食べてしまったときに確認したいこと
テーブルから落ちたハンバーグを食べてしまった、目を離したすきにお皿から取られた、という事故はどの家庭でも起こりえます。そのときに大切なのは、自己判断で様子見をせず、獣医師に相談することです。
相談するときに役立つのは、「何を」「どのくらい」「いつ」食べたかの情報です。ハンバーグのサイズと食べた量、玉ねぎ以外にソースやニンニクが使われていたか、食べてからどのくらい時間がたっているかをメモしておくと、伝えるときに迷いません。市販品なら、パッケージの原材料名を写真に撮っておくと確実です。
やりがちな失敗は、ネットの体験談で「うちの子は平気だった」という書き込みを見て安心してしまうことです。症状の出方は個体差があるとされ、他の犬が平気だったことは自分の犬の安全を保証しません。また、自宅で無理に吐かせようとするのも避けてください。食欲や便、尿の色の様子がいつもと違うときは、早めに動物病院へ相談しましょう。

塩・こしょう・ナツメグ・牛乳…味付けとつなぎで外したい材料

塩とソースが心臓・腎臓の負担につながるとされる理由
玉ねぎの次に外したいのが、塩とソース類です。環境省のガイドラインでは、人が味付けをしている食事や総菜、ハムなどを犬に与えると塩分摂取量が過剰になることがあり、塩分の摂取過剰は人と同様に心臓や腎臓に負担をかけると説明されています。
ハンバーグは、肉だねに塩を練り込むことで粘りを出すのが一般的な作り方です。そのうえケチャップやデミグラスソース、ポン酢などをかけるので、人にとってちょうどよい味は、体の小さな犬にとっては塩分が多くなりがちです。総合栄養食には必要なミネラルが配合されているので、トッピングで塩を足す必要はありません。
犬用ハンバーグは、塩を入れずにひき肉と卵、つなぎだけで練れば十分にまとまります。人の舌では物足りない味でも、犬は肉の香りに反応して食べることが多いです。腎臓や心臓に持病がある犬は、塩分や脂質の扱いを獣医師に確認してから取り入れるようにしましょう。
こしょう・ナツメグなど香辛料を入れない根拠
ハンバーグの香りづけに欠かせないこしょうやナツメグも、犬用では使いません。環境省のガイドラインには、犬は香辛料に対する耐性が低いので肝機能障害の症状を引き起こすことがある、と書かれています。人にとってはひと振りの量でも、犬にとって同じ意味を持つとは限りません。
ナツメグについては、人の急性中毒の事例をまとめた報告(日本臨床救急医学会関東地方会雑誌)でも、「香辛料としてハンバーグなどの肉料理に用いられ」、容易に入手できるものとして取り上げられています。犬でどのくらいの量が問題になるかを示す公的な数値は確認できていませんが、人でも中毒の報告がある香辛料を、耐性が低いとされる犬にあえて使う理由はありません。
見落としやすいのが、市販のハンバーグミックスや「肉料理用シーズニング」です。こしょうやナツメグ、ガーリックがあらかじめ混ぜてあることが多いので、犬用には使わないようにしましょう。香りをつけたいなら、香辛料ではなく、肉を焼いたときの香ばしさで十分です。
つなぎの牛乳と生卵、ここで気をつけたいこと
ハンバーグのつなぎには牛乳に浸したパン粉と卵がよく使われますが、どちらも犬用では扱い方に注意が必要です。環境省のガイドラインでは、成犬に乳糖を多く含む牛乳を与えると、乳糖をうまく消化吸収できず下痢を起こすことがあると説明されています。つなぎに水分を足したいときは、水か、使うなら犬用ミルクにするかを検討しましょう。
卵は、加熱すれば問題なく使える材料です。ガイドラインでは、生の卵白を与え続けるとビオチンという栄養素が欠乏し、皮膚炎や成長不良につながるとされていますが、加熱調理をすれば問題はないとされています。ハンバーグは全体を焼くので、中まで火が通っていれば卵の心配は小さくなります。生焼けで中心が赤い状態が問題になるのは、卵よりむしろ肉の側です。
パン粉そのものは、人用のパンに塩分が含まれていることがある点を頭に入れておきましょう。つなぎは、後で紹介する木綿豆腐で代用すると、塩を足さずに水分と粘りを補えます。
| 材料 | 犬用での扱い | 理由(一次資料の説明) |
|---|---|---|
| 玉ねぎ・長ネギ・ニラ・ニンニク | 使わない(エキス・煮汁も不可) | 赤血球を破壊する成分を含み、加熱しても分解されない |
| 塩・ケチャップ・ソース | 使わない | 塩分の過剰摂取は心臓や腎臓に負担をかける |
| こしょう・ナツメグ | 使わない | 犬は香辛料への耐性が低く、肝機能障害の症状を起こすことがある |
| 牛乳 | 水に置き換える(犬用ミルクは検討) | 乳糖をうまく消化吸収できず下痢を起こすことがある |
| 卵 | 中まで加熱すれば使える | 生の卵白を与え続けるとビオチン欠乏。加熱すれば問題ない |
出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」をもとに犬ごはんノート作成
やりがちな失敗:仕上げだけ人用のソースをかけてしまう
肉だねは犬用に作ったのに、仕上げに家族用のソースを少しだけかけてしまう、というのは手作りで起こりやすい失敗です。焼き上がりの見た目を整えたい、食いつきをよくしたいという気持ちから来るものですが、ケチャップやデミグラスソースには塩分が含まれ、ソースの種類によっては玉ねぎやニンニクが使われています。
原因は、肉だねさえ犬用なら安全だと思い込むことです。ソース・ケチャップ・市販のたれは塩分が含まれ、玉ねぎやニンニクのエキスが入っているものもあります。対策は、犬用は「焼いたら何もかけない」と決め、香りづけが必要ならドッグフードを砕いてまぶす程度にとどめることです。
もう1つの原因は、家族用と犬用を同じフライパンで続けて焼くことです。先に家族用を焼くと、フライパンに残った肉汁やソースが犬用に移ります。犬用を先に焼いて取り出してから家族用を焼く、という順番にするだけで混入を防げます。
牛・豚・鶏ひき肉はどれを選ぶ?成分表で見る脂質の差
成分表で並べると差が出るのは脂質とカロリー
犬用ハンバーグに使うひき肉は、牛・豚・鶏のどれでも作れますが、選ぶときに見るべきなのは脂質とカロリーです。文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年で、部位を指定しない生のひき肉を比べると、たんぱく質はどれも17g台でほぼ横並びなのに対し、脂質とカロリーには差があります。
| 食品(生) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 牛ひき肉 | 251kcal | 17.1g | 21.1g |
| 豚ひき肉 | 209kcal | 17.7g | 17.2g |
| 鶏ひき肉 | 171kcal | 17.5g | 12.0g |
| 木綿豆腐(つなぎ用) | 73kcal | 7.0g | 4.9g |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」第2章データ。ひき肉は部位未指定の値
この表から読み取れるのは、「どの肉を使ってもたんぱく質源としての働きは近いが、同じ量を使ったときのカロリーは脂質の量で変わる」ということです。体重管理中の犬や、脂質を控えるよう言われている犬では、ここが選び分けのポイントになります。
牛ひき肉は脂質21.1g、鶏ひき肉は12.0gという差の読み方
成分表の値で比べると、鶏ひき肉は牛ひき肉より脂質が100g当たり9.1g少なくなります。カロリーも牛ひき肉の251kcalに対して鶏ひき肉は171kcalです。同じ大きさのハンバーグを作るなら、鶏ひき肉のほうが軽いトッピングになるということです。
ただし、ここで注意したいのは、これが「部位未指定のひき肉」の値だという点です。実際に売られているひき肉は、使う部位や脂身の混ぜ方によって脂質が変わります。脂身が多く白っぽいひき肉は表の値より脂質が多い可能性があり、赤身の多いものは少ない可能性があります。お店で選ぶときは、色が赤っぽく、白い脂の粒が少ないものを選ぶと、表の値から大きく外れにくくなります。
「鶏なら低脂肪だから安心」と考えて量を増やしてしまうのもよくある落とし穴です。鶏ひき肉でも脂質は12.0gあり、皮が混ざった製品ならさらに増えます。肉の種類で調整するのは「同じ量なら軽くなる」という意味で、量を増やしてよい理由にはなりません。普段食べている肉の種類から選ぶと、食べ慣れない肉による体調の変化も避けやすくなります。

豆腐でかさ増しすると何が変わるか
見た目のボリュームを保ちながらカロリーを抑えたいときは、木綿豆腐を混ぜる方法があります。成分表では木綿豆腐は100g当たり73kcal、脂質4.9gで、どのひき肉よりも低い値です。ひき肉の一部を豆腐に置き換えれば、同じ大きさのハンバーグでもカロリーが下がり、豆腐の水分でやわらかく仕上がるので、パン粉や牛乳を使わなくてもつなぎの役目を果たしてくれます。
一方で、豆腐のたんぱく質は7.0gと、ひき肉の半分以下です。豆腐を増やしすぎると、肉を食べさせたいという目的からは離れていきます。また、豆腐の水分が多すぎると焼いている間に崩れやすくなるので、軽く水切りしてから混ぜると形がまとまります。
大豆製品を初めて食べる犬の場合は、ハンバーグに混ぜる前に、少量の豆腐を加熱して単体で与え、便の状態に変化がないかを見ておくと安心です。どの食材でも体に合わない犬はいるので、新しい材料は一度に複数を試さず、1つずつ加えていくのが様子を見やすい方法です。
生肉はNG、レバーやほうれん草を混ぜるときの注意
ひき肉は、必ず中まで加熱して使います。環境省のガイドラインでは、生の豚肉などには有害な寄生虫や細菌がいる可能性があり、犬に肉を与えるときは加熱調理を行って予防するよう書かれています。ひき肉は表面積が大きく、塊肉よりも細菌が付きやすい形状なので、「生でも食べられる新鮮な肉」という発想は持ち込まないようにしましょう。
栄養を足したくて、レバーやほうれん草を混ぜ込むアレンジを見かけることがあります。豚や鶏のレバーはビタミンAが多く、過剰に摂ると食欲不振や関節の不調につながる可能性があるとされているので、混ぜるとしても少量にとどめ、毎回入れるのは避けたいところです。ほうれん草はシュウ酸が多く、シュウ酸カルシウム結石の原因になるとされていますが、茹でてアク抜きすると減らせると言われています。
また、ハンバーグの具やソースにぶどうや干しぶどうを使うレシピは、犬では腎不全の原因になるとされているので避けましょう。栄養を「足す」目的で材料を増やすほど、注意点も増えます。ハンバーグはシンプルな材料で作り、栄養バランスは総合栄養食に任せる、という分担がいちばん失敗の少ない考え方です。
犬用手作りハンバーグの作り方|味付けゼロで中まで火を通す
基本の材料は「ひき肉+つなぎ+野菜」の3つ
犬用ハンバーグの材料は、ひき肉、つなぎ、刻んだ野菜の3つで組み立てるとシンプルです。ひき肉は前の見出しで紹介した成分表を参考に、普段食べ慣れている肉を選びます。つなぎは溶き卵か水切りした木綿豆腐が使いやすく、パン粉や牛乳を使わなくても形がまとまります。
野菜を入れる場合は、玉ねぎやネギ類以外で、普段のトッピングとして食べても問題がなかったものを選びましょう。にんじんやキャベツのように、細かく刻めば肉だねに混ざりやすい野菜はよく使われます。大きいまま入れると消化しにくく、肉だねからもはがれやすいので、みじん切りかすりおろしにしてから加えます。
大事なのは「足さない」ことです。塩、こしょう、ナツメグ、コンソメ、ケチャップ、ソースは使いません。人の料理の感覚で「これを入れるとおいしくなる」と思うものほど、犬には不要なものが多いと考えておくと迷いません。材料の量は、犬の体格に合わせてひと口で食べやすい大きさに作れる分だけにすると、余りが出にくくなります。
| 分類・主な原材料 | 手作りのトッピング。ひき肉(牛・豚・鶏)+つなぎ(卵・木綿豆腐)+刻んだ野菜 |
| 栄養成分の目安 | 生のひき肉100g当たり、牛251kcal・豚209kcal・鶏171kcal(日本食品標準成分表) |
| 与えるときの注意 | 玉ねぎ・ネギ類・塩・香辛料は使わない。中まで加熱し、食べ残しはすぐ片付ける |
| 向いている犬・場面 | 総合栄養食を食べている健康な成犬のトッピング。持病のある犬・子犬は獣医師に相談してから |
中までしっかり加熱する焼き方のコツ
犬用ハンバーグで最も気をつけたいのは、中心まで火を通すことです。ひき肉は塊肉と違い、表面についた細菌が内部まで混ざり込んでいるので、外側に焼き色がついていても中心が生のままでは加熱の意味が薄れてしまいます。
厚みのあるハンバーグは中心まで火が通りにくいので、犬用は小さく薄めに作るのがコツです。焼き上がったら必ず1つ割って確認し、中心がピンク色なら追加で加熱しましょう。また、焼きたては中が熱いので、表面が冷めていても内側で口をやけどすることがあります。割って湯気が出なくなるまで冷ましてから与えてください。
豆腐・野菜を使ったアレンジの考え方
基本の形に慣れたら、豆腐の割合を増やしたヘルシー寄りのハンバーグや、野菜を多めに混ぜたハンバーグにアレンジすることもできます。アレンジを考えるときの軸は、「カロリーを抑えたいのか」「食べやすくしたいのか」をはっきりさせることです。
カロリーを抑えたいなら、鶏ひき肉に木綿豆腐を混ぜる組み合わせが成分表の値から見ても理にかなっています。食べやすさを優先するなら、野菜をすりおろして肉だねに混ぜると、加熱後もやわらかく仕上がります。シニア犬や歯が弱くなった犬には、焼いたあとにほぐして、ふやかしたフードと混ぜる与え方もあります。
やりがちなのは、栄養を足そうとして材料を次々に増やしてしまうことです。材料が増えるほど、どれが体に合わなかったのかがわからなくなります。アレンジは1回に1つの材料だけを変え、便の状態や食べたあとの様子を見てから次を試すようにしましょう。おからハンバーグなど、ネット上のレシピをそのまま試す場合も、つなぎに牛乳や調味料が使われていないかを確認してから作るのが安心です。
主食にしていい?与える量は「おやつ20%以内」で考える
手作りハンバーグだけでは栄養が偏りやすい理由
手作りハンバーグを主食にするのは、すすめにくい方法です。ひき肉はたんぱく質と脂質の供給源にはなりますが、犬に必要なビタミンやミネラルを過不足なく含んでいるわけではありません。環境省のガイドラインでも、手作りの食事を与えているときは栄養素の不足が起こりやすいため、栄養成分を計算した上で与えるよう書かれています。
総合栄養食のドッグフードは、そのフードと水だけで成長段階に応じた健康を維持できるように設計されています。いわば「計算済み」の食事です。そこに手作りハンバーグを主役として置き換えると、計算されたバランスが崩れてしまいます。
よくあるのは、愛犬がハンバーグばかり食べたがるようになり、フードを残すようになるパターンです。ハンバーグの香りに慣れると、フードだけでは物足りなく感じるのは自然なことです。これを防ぐには、ハンバーグを毎食出さず「たまに添えるもの」にとどめ、フードの上に少量のせる形にすることです。毎日の食事を手作り中心に切り替えたい場合は、栄養の計算が必要になるので、獣医師に相談しながら進めましょう。

1日に必要なエネルギー量の出し方と20%の考え方
手作りハンバーグを総合栄養食に添えるなら、おやつやトッピングと同じ扱いで量を決めるのがわかりやすい方法です。環境省のガイドラインでは、おやつは1日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、与えた分だけ主要な食事の量も減らすよう書かれています。ハンバーグもこの考え方に当てはめれば、上限と、フードを減らす量の両方が決まります。
1日に必要なエネルギー量は、ガイドラインに示された計算式で出せます。まず安静時のエネルギー要求量(RER)を「体重(kg)×30+70」で計算し、これに活動量や年齢などに応じた係数をかけて1日のエネルギー要求量(DER)を出します。係数は犬の状態によって変わるので、具体的な値は獣医師に相談すると確実です。
手作りハンバーグは、おやつと合わせて1日に必要なエネルギー量の20%以内に収め、その分だけフードを減らします。ハンバーグのカロリーは、使ったひき肉の量と成分表の値(100g当たり牛251kcal・豚209kcal・鶏171kcal)から見積もれます。体重は週1回程度測り、増えていたら量を見直しましょう。
失敗しやすいのは、おやつを普段どおり与えたうえで、さらにハンバーグを足してしまうことです。20%の枠はおやつとトッピングの合計なので、ハンバーグを出す日はおやつを控えめにするなど、枠の中でやりくりすることが大切です。
子犬・シニア犬・持病のある犬で変わること
手作りハンバーグの取り入れ方は、犬の年齢や体の状態によって変わります。ここでは読者のタイプ別に整理します。
成長期の子犬を育てている人は、手作りのトッピングは慎重に考えましょう。成犬用と子犬用では栄養設計が異なり、成長期は必要な栄養のバランスが大人とは違います。子犬期は総合栄養食を中心にし、手作りを加えるなら獣医師に相談してからがおすすめです。
シニア犬と暮らしている人は、食欲が落ちたときの「食べるきっかけ」としてハンバーグを使う場面があるかもしれません。その場合は小さくほぐして、やわらかく仕上げるのが向いています。ただし、年齢とともに必要なエネルギー量や体の状態は変わるので、量は獣医師と相談しながら決めると安心です。
腎臓や心臓などに持病がある犬の飼い主は、塩分を入れないことに加えて、脂質やたんぱく質の量にも配慮が必要になることがあります。療法食を食べている場合は、獣医師の指導のもとで与えるものなので、自己判断でハンバーグを加えないようにしましょう。体重管理中の犬なら、鶏ひき肉と豆腐の組み合わせで量を控えめにするのが現実的な選択です。
市販の犬用ハンバーグは「目的」欄を確認する
手作りする時間がないときは、犬用として売られているハンバーグ型のレトルトやウェットフードを使う方法もあります。このとき見てほしいのが、パッケージにある「目的」の表示です。ペットフード公正取引協議会の表示ルールでは、ペットフードは総合栄養食、間食、療法食、その他の目的食のいずれかに分類され、目的が表示されます。
「総合栄養食」と書かれていれば、そのフードと水で栄養がまかなえるように設計されたものです。一方、「間食」や「一般食(その他の目的食)」と書かれているものは、主食として与えることを前提にしていません。ハンバーグ型の製品は見た目が似ていても目的がさまざまなので、名前やパッケージの写真ではなく、目的欄の表示で判断しましょう。
間食や一般食のハンバーグを与えるときは、手作りと同じように1日に必要なエネルギー量の20%以内で考え、パッケージに書かれた給与量の目安も参考にします。ペットフード安全法では、名称・賞味期限・原材料名・原産国名・事業者名及び住所の表示が義務づけられているので、原材料名の欄で玉ねぎ類や香辛料が使われていないかも確認できます。
作り置きは何日もつ?冷凍・解凍と食べ残しの扱い
手作りハンバーグが傷みやすい理由
手作りハンバーグは、ドライフードとは比べものにならないほど傷みやすい食べ物です。環境省のガイドラインでは、水分の多いウェットフードや手作りフードは品質の低下が早いため、置きっぱなしにせず、食べ残しはすぐに片付けるよう書かれています。
ドライフードは水分を減らすことで菌が増えにくい状態にしていますが、ハンバーグは肉汁や野菜、豆腐の水分を多く含んでいます。さらにひき肉は空気に触れる面が多く、加熱後も室温に置いておくと傷みが進みやすい形状です。保存料も入っていないので、市販のフードと同じ感覚で扱うと品質が落ちてしまいます。
ここで覚えておきたいのは、においや見た目で判断しきれないことです。犬は多少においが変わっていても食べてしまうことがあるので、「食べたから大丈夫」は品質の目安になりません。作ったものは早めに使い切る、食べなかった分はすぐに片付ける、という2つの習慣が、手作りハンバーグを安全に続けるための土台になります。
冷蔵は「その日のうち」、それ以上は冷凍という考え方
手作りハンバーグの冷蔵・冷凍の保存日数について、公的な基準として示された数値は見当たりません。そこで参考になるのが、同じく水分の多いウェットフードの扱いです。環境省のガイドラインでは、ウェットフードが開封後に余った場合は別の容器に移して冷蔵庫で保存し、その日のうちに使い切ること、1日以上保存する場合は冷凍保存して与える際に解凍することが目安として示されています。
この考え方を手作りハンバーグに当てはめると、冷蔵で置いておくのは当日中まで、翌日以降に使う分は焼いて冷ましたらすぐ冷凍、という運用になります。1回に与える量ずつ小分けにしてラップで包み、保存袋に入れておくと、必要な分だけ取り出せて便利です。
冷凍したからといって、いつまでも持つわけではありません。冷凍庫の中でも乾燥や霜による品質の低下は進むので、作った日を袋に書いておき、早めに使い切るようにしましょう。ドライフードを冷蔵庫に入れると出し入れの際の結露がカビの原因になるとされていますが、これはドライフード向けの注意です。水分の多い手作りハンバーグは、冷蔵と冷凍を使い分けて管理します。

解凍と温め直しで気をつけたいこと
冷凍したハンバーグは、与える前に解凍して中まで温度を戻します。凍ったまま、または中心が冷たいまま与えると、食べにくいだけでなく、胃腸に冷たいものが一度に入ることになります。前日の夜に冷蔵庫へ移して解凍しておくと、温度の変化がゆるやかで、品質も保ちやすくなります。
電子レンジで温める場合は、加熱ムラに注意しましょう。外側は熱くなっていても中心が冷たかったり、逆に一部だけ高温になっていたりすることがあります。温めたら必ず割ってみて、手で触れて熱すぎないことを確かめてから与えてください。人肌程度が目安です。
やりがちなのは、解凍した分が余ったからといって再び冷凍することです。一度解凍したものを再冷凍すると、品質が落ちやすくなります。解凍は1回に食べ切れる分だけにし、余った場合は処分するほうが安全です。小分けにして冷凍しておく理由は、ここにもあります。
原因は、ドライフードの「置き餌」と同じ感覚で扱ってしまうことです。手作りフードは品質の低下が早いため、食べ残しはすぐに片付けるのが基本です。対策は、ハンバーグは食べ切れる量だけ出し、食事が終わったら器ごと下げること。少しずつしか食べない犬には、1回分をさらに小さく分けて出しましょう。
食べ残しが続くときに見直したいこと
ハンバーグを出しても毎回残してしまう場合は、量やサイズが合っていない可能性があります。大きすぎて食べにくい、硬く焼きすぎて噛みにくい、といった理由で残していることもあるので、小さくほぐす、焼き時間を調整してやわらかく仕上げる、といった工夫を試してみましょう。
一方で、普段はよく食べる犬が急に食べなくなった場合は、ハンバーグの問題ではなく体調の変化が関係していることもあります。食欲が落ちている、便がゆるい、吐いた、といった様子が続くときは、食べ物を変えて様子を見るより先に、動物病院で相談することをおすすめします。
まとめ
犬にハンバーグをあげていいかという疑問の答えは、「人用はNG、犬用は条件つきでOK」です。環境省のガイドラインがハンバーグを名指しで挙げているように、玉ねぎ入りの料理は加熱しても与えてはいけないものとされています。玉ねぎを炒めて取り除いても、エキスがしみ込んだ肉や肉汁、ソースまで同じ扱いになる点は覚えておきたいところです。
犬用に作るなら、ひき肉・つなぎ・刻んだ野菜だけで組み立て、塩や香辛料、牛乳は使わず、中心まで火を通すのが基本です。ひき肉は日本食品標準成分表で見ると、たんぱく質はどれも17g台で近い一方、脂質とカロリーは牛・豚・鶏の順に低くなります。体重管理が気になるなら、鶏ひき肉や木綿豆腐を組み合わせると軽く仕上がります。
与えるときは主食に置き換えず、総合栄養食に添えるトッピングとして、おやつと合わせて1日に必要なエネルギー量の20%以内に収め、その分フードを減らしましょう。作り置きは冷蔵ならその日のうち、それ以上は冷凍し、食べ残しはすぐに片付けます。子犬や持病のある犬、うっかり人用を食べてしまったときは、自己判断せず獣医師に相談してください。
最初の一歩としては、次に家族のハンバーグを作るとき、玉ねぎや調味料を入れる前に犬の分のひき肉を取り分けるところから始めてみてください。それだけで、家族と同じ食卓の時間を、安全な形で楽しめるようになります。
※記事の内容は公開時点の公的資料に基づいています。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

コメント