いつものドライフードを残すようになった。硬い粒を噛むのがつらそうに見える。そんなとき「手作りご飯なら食べてくれるかも」と考える飼い主さんは少なくありません。ただ、ネットで見つかるレシピは材料も分量もばらばらです。栄養は足りているのか、入れてはいけない食材が混ざっていないか、不安が残りますよね。
先に結論をお伝えします。老犬の手作りご飯は、総合栄養食のドッグフードを土台にして、味付けなしで柔らかく煮た食材を少しのせる「トッピング型」から始めるのが、簡単で失敗しにくい方法です。手作りだけで毎日の栄養を完結させるのは、フードの表示ルールの仕組みから見ても簡単ではないからです。
この記事では、環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」、文部科学省の日本食品標準成分表、ペットフード公正取引協議会の表示ルールといった一次情報をもとに、塩分の考え方、鍋ひとつで作れる簡単レシピ4品、食材6つの栄養比較、避けたい食材、噛む力が落ちた老犬の食べさせ方、作り置きの保存までを順番に解説します。
・老犬の手作りご飯を「総合栄養食+トッピング」で始めるべき理由
・味付けなし・鍋ひとつで作れる簡単レシピ4品と共通の下ごしらえ
・鶏むね肉・たら・かぼちゃなど食材6つの栄養を数字で比較した表
・ねぎ類やぶどうなど避けたい食材と、作り置きの正しい保存方法
老犬の手作りご飯、ドッグフードと何が違う?

「フードと水だけで健康を保てる」設計は家庭では再現しにくい
最初に押さえておきたいのは、手作りご飯だけで毎日の栄養を過不足なくそろえるのは、想像以上に難しいという点です。ペットフード公正取引協議会は「総合栄養食」を、毎日の主要な食事として与えることを目的とし、そのペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるよう、栄養的にバランスのとれたものと定義しています。
つまり総合栄養食は、たんぱく質やエネルギーだけでなく、ミネラルやビタミンの細かな量まで基準に合わせて設計された食事です。家庭の台所で鶏肉や野菜を煮る場合、たんぱく質やエネルギーは食品成分表で追えても、微量な栄養素まで毎日計算して合わせるのは現実的ではありません。
よくあるのが「鶏むね肉とかぼちゃを煮たものをよく食べるから、フードをやめてこれだけにした」というケースです。食いつきがよいぶん続けやすいのですが、足りない栄養素があっても見た目には表れにくく、しばらくたってから体重や毛づやの変化で気づく、ということも起こりえます。
土台にするフードは、パッケージの「目的」の欄に「総合栄養食」と書かれているかを確認しましょう。目的の分類はペットフード公正取引協議会の表示に関する解説ページで確認できます。手作りはそのうえに足す「おかず」と位置づけると、栄養の心配をぐっと減らせます。
総合栄養食=そのフードと水だけで、指定された成長段階の健康を維持できるよう栄養バランスが調整された表示区分。
一般食・副食=「その他の目的食」の一種。1日に必要な栄養を満たすには別の栄養補給が必要な旨、または一緒に与えるべきフード(総合栄養食など)や食材の名称を併記するルールがある。手作りご飯を足すときは、この「おかず」の位置づけに近いと考えるとわかりやすいです。
市販の「一般食」でさえ“別に栄養補給が必要”と書く決まりがある
手作りご飯の立ち位置を考えるうえで参考になるのが、市販フードの「一般食」「副食」の表示ルールです。ペットフード公正取引協議会のルールでは、一般食や副食の場合、1日に必要な栄養を満たすために別途栄養補給する必要がある旨、または同時に与える必要があるペットフード(総合栄養食など)や食材の名称などを併記することになっています。
ペットフードを専門に作るメーカーの製品でも、単独で栄養が完結しないものはパッケージにそう書かなければならない、ということです。家庭で作る鶏肉と野菜の煮物は、この一般食・副食と同じく「それだけでは栄養が完結しないもの」として扱うのが自然な考え方です。
やりがちなのが、ウェットタイプの缶詰やパウチを「柔らかくて食べやすいから」と主食にしてしまうケースです。パッケージの目的欄に「一般食」とあれば、それは単独で与える前提の製品ではありません。手作りご飯と一般食の缶詰だけで食事を組むと、栄養の土台がどこにもない状態になってしまいます。
確認するポイントは、パッケージの「目的」の表示と、その近くにある「〇〇と一緒に与えてください」といった併記の文言です。手作りを足すときも、同じように「土台は総合栄養食、手作りは副菜」という組み立てを意識しておけば、迷ったときの判断基準になります。
実は、老犬専用の「正しい量」は公的な計算式にも載っていない
意外と知られていないけれど、老犬に何kcal与えればよいかを示す公的な係数は、環境省のガイドラインにも載っていません。環境省の飼い主のためのペットフード・ガイドラインでは、安静時のエネルギー要求量(RER)=体重(kg)×30+70に係数をかけて1日に必要なエネルギー量を求める方法が紹介されていますが、係数は成長段階や活動量によって変わるため詳しくは獣医師に相談するよう案内されており、老齢期の係数は示されていません。同じガイドラインは、高齢になると内臓の働きや運動機能が低下するとともにエネルギー要求量も減ってくると説明しています。
老犬は運動量や体の状態の個体差が大きく、同じ体重でも必要な量が一律に決まりにくいことが背景にあると考えられます。ネット上には「老犬なら〇g」と分量を言い切るレシピもありますが、その数字がどんな根拠で出されたものかは確かめようがないことも多いのです。
そのため、この記事ではあえてレシピにグラム単位の分量を書いていません。「うちの子にはこの量」という答えは、体重の推移と体型のチェック(BCS)で飼い主さん自身が見つけていくものだからです。レシピの分量をそのまま信じて毎日与え続け、気づいたら体重が増えていた、というのがよくある失敗です。
量の目安は、土台にしている総合栄養食のパッケージの給餌量表を確認し、手作りで足したぶんをそこから差し引く考え方が基本です。年齢に合わせたフードの切り替えについては、下の記事で表示規約の仕組みから解説しています。

味付けはなしでいい?老犬ごはんの塩分と栄養の基本
味付けしないのが基本になる理由
手作りご飯の味付けは「しない」が基本です。環境省のガイドラインでは、人が味付けをしている食事や総菜、ハムなどを犬や猫に与えると塩分の摂取量が過剰になることがあり、人と同様に心臓や腎臓に負担をかけると説明されています。同じガイドラインの目安では、体重5kgの犬(避妊去勢済み)の1日の塩分摂取量は0.18gで、ロースハム10gに含まれる食塩(0.25g)よりも少ない量です。
しかも、食材そのものにもナトリウムは含まれています。たとえば文部科学省の食品成分表では、まだら(生)の可食部100gあたりのナトリウムは110mgです。素材だけでも一定の塩分はとれているので、塩や醤油、味噌、だしの素を足す必要はありません。味付けをしなくても、肉や魚を煮たときのうまみと香りで食べてくれる犬は多いものです。
やりがちなのは、家族用の煮物やスープを作るついでに「味付けの前に取り分けたつもり」で、実際には調味料を入れたあとの鍋からよそってしまうケースです。また、塩だらや甘塩の魚、ハム、ちくわなど、加工の段階で塩分が加えられている食材を「素材」と思い込んで使ってしまう失敗もよく見られます。
対策は、犬用の鍋を分けるか、家族用の料理を始める前に犬用を先に作り終えてしまうことです。魚を買うときは「生だら」のように、塩をしていない表示のものを選びましょう。
原因:調味料を入れたあとの鍋から取り分けてしまう、玉ねぎと一緒に煮た汁を使ってしまう、塩をした魚を「素材」と思い込む。
対策:犬用は家族の料理を始める前に作り終えるか、鍋そのものを分ける。材料は「味付けなし・ねぎ類なし・塩をしていないもの」の3つを買う段階で確認する。
たんぱく源は脂の少ない肉や白身魚を“必ず加熱”で
トッピングのたんぱく源には、脂の少ない肉や白身魚を加熱して使うのが扱いやすい選択です。食品成分表で見ると、鶏むね肉(皮なし・生)は可食部100gあたりたんぱく質23.3g・脂質1.9g、まだら(生)はたんぱく質17.6g・脂質0.2gで、どちらも脂質が少ない食材です。
「必ず加熱」にこだわる理由は、環境省のガイドラインにあります。魚やイカ、エビ、カニなどの魚介類は必ず加熱調理して与えるよう案内されており、生肉(生の豚肉や野生鳥獣肉)にも有害な寄生虫や細菌が存在する可能性があるため、加熱調理で予防するよう呼びかけています。生卵についても、生の卵白を与え続けるとビオチンが欠乏して皮膚炎や成長不良の症状を引き起こすことがあり、加熱調理をすれば問題はないとされています。
「新鮮な刺身なら大丈夫だろう」と、家族の刺身を少し分けてしまうのはありがちな失敗です。また、鶏肉の皮や脂身をそのまま残して煮ると、脂質が一気に増えてしまいます。老犬は体の状態によって脂っこいものでお腹がゆるくなることもあるので、皮と脂は下ごしらえで取り除いておきましょう。
加熱の目安は「中心まで火が通って、色が変わりきっていること」です。魚は小骨が残りやすいので、煮たあとに身を指でほぐしながら骨を探すと見落としが減ります。卵を使う場合も、生や半熟ではなく、しっかり固まるまで火を通してください。
1日1回は避けて数回に。食の細い老犬はどう分ける?
与える回数について、環境省のガイドラインは、1日1回だと慌てて飲み込んでのどに詰まらせたり、肥満の原因になったりすることから、1日分を数回に分けて与えるよう案内しています。子犬については、消化機能が未熟なため、1日量を3〜4回程度に分けて1回の量を少なくするのが一般的とされています。
この「1回に食べられる量が少なければ回数を増やす」という子犬の理屈は、食が細くなった老犬を考えるときのヒントになります。1回分を最後まで食べきれない、途中で飽きてしまう、という老犬なら、1日の総量は変えずに回数を分ける、という考え方ができます。
気をつけたいのは、回数を増やすときに「1回分の量をそのまま」にしてしまうことです。2回を3回にしたのに、1回の量を減らさなければ、1日の総量は1.5倍に増えてしまいます。手作りのトッピングを毎回のせる場合も、回数が増えたぶんだけトッピングの総量が増えている、ということが起こりがちです。
回数を変えるときは、先に1日の総量を決めてから、それを回数で割る順番で考えましょう。持病があって食事の時間や回数について指示を受けている犬は、その指示を優先し、変更したいときは主治医の獣医師に相談してください。
手作りで足したカロリーは、フードから差し引く
トッピングを始めるときにいちばん大切なのが、手作りで足したエネルギーのぶん、土台のフードを減らすことです。食品成分表では、鶏むね肉(皮なし・生)は可食部100gあたり105kcal、さつまいも(皮なし・生)は126kcalあります。いつものフードの量はそのままで、上に食材を足すだけでは、1日の総エネルギーがそのぶん増えてしまいます。
もうひとつの目安が、おやつの考え方です。環境省のガイドラインは、おやつを1日あたりに必要なカロリーの20%以内に抑えることが大切だと説明しています。トッピングもフードの栄養バランスの外側から足すものなので、同じように「主食のバランスを崩さない範囲の少量」にとどめると考えると判断しやすくなります。
よくある失敗は「野菜だからカロリーは気にしなくていい」と思い込むことです。にんじんは可食部100gあたり32kcalと控えめですが、かぼちゃは78kcal、さつまいもは126kcalと、同じ野菜でも差があります。いも類を毎回たっぷりのせていると、じわじわ体重が増える原因になります。
手作り分を正確に把握するには、キッチンスケールで食材の重さを量り、成分表の数値から計算するのが確実です。1日に必要なエネルギー量の出し方と、計算結果の使い方は下の記事で詳しく解説しています。
味付けはしない(体重5kgの犬の塩分の目安は1日0.18gとされる)。肉・魚・卵は必ず加熱する。回数は1日1回にせず数回に分け、分けるときは総量を先に決める。そして、手作りで足したエネルギーのぶんだけ土台のフードを減らす。この4つを守れば、トッピング型の手作りご飯は大きく外しません。
老犬手作りご飯レシピ簡単4品|鍋ひとつ・味付けなしで作れる

ここからは、総合栄養食にのせるトッピングとして使える簡単レシピを4品紹介します。どれも包丁と鍋ひとつで作れて、調味料は使いません。分量は前の章で説明した理由から、グラムで決めず「フードから差し引ける範囲の少量」で考えてください。まずは4品共通の下ごしらえの流れです。
レシピ① 鶏むね肉とかぼちゃのやわらか煮
最初の1品におすすめなのが、鶏むね肉とかぼちゃを一緒に煮るだけのやわらか煮です。脂の少ないたんぱく源と、甘みのある野菜の組み合わせで、香りが立ちやすく食べ始めのきっかけになりやすいのが特徴です。鶏むね肉は可食部100gあたりたんぱく質23.3g・脂質1.9g、西洋かぼちゃは78kcalで、どちらも成分表で数字を追いやすい食材です。
作り方は、皮と脂を除いた鶏むね肉と、皮と種を除いたかぼちゃを1cm角に切り、ひたひたの水から煮るだけ。かぼちゃに竹串がすっと通れば完成です。煮えたかぼちゃをフォークで潰して煮汁と混ぜると、自然なとろみがついて、鶏肉がばらけにくくなります。とろみ付けのために片栗粉などを足す必要はありません。
失敗しやすいのは、かぼちゃの皮を残してしまうことです。皮は硬く、噛む力の落ちた老犬には飲み込みにくい部分になります。また、鶏むね肉は火を通しすぎると繊維が締まってパサつき、かえって食べにくくなることがあります。煮すぎたと感じたら、煮汁ごと混ぜて水分を補いましょう。
完成したら人肌程度まで冷まし、土台のフードの上にのせます。鶏肉とかぼちゃは同じ鍋で煮るので洗い物が少なく、手作りご飯を「続けられるか」を試す最初のレシピに向いています。
レシピ② たらと豆腐のとろとろ煮
肉以外のたんぱく源を試したいときは、白身魚のたらと豆腐を煮たとろとろ煮が便利です。まだら(生)は可食部100gあたり72kcal・たんぱく質17.6g・脂質0.2gで、成分表の6食材の中でも脂質が少ない部類に入ります。身がほろほろと崩れやすいので、噛む力が落ちた老犬にも食べやすい食感になります。
作り方は、骨と皮を除いたたらを水から煮て、火が通ったら身を指でほぐしながら小骨がないか確かめます。そこへ木綿豆腐を小さく崩して加え、ひと煮立ちさせれば完成です。豆腐の水分と魚の煮汁が混ざって、スプーンですくえるくらいのやわらかさになります。
いちばん多い失敗は、塩だらや甘塩の切り身を使ってしまうことです。見た目は生だらとほとんど変わらないため、パックの表示を見ずに買うと、味付けしていないつもりでも塩分を与えてしまいます。もうひとつは小骨の見落としです。煮る前より、煮てほぐしたあとのほうが骨を見つけやすいので、確認は必ず煮たあとに行いましょう。
豆腐は、文部科学省の食品成分表で木綿豆腐のマグネシウムが可食部100gあたり57mgと、この記事の6食材の中ではいちばん多い食材です。環境省のガイドラインは、にぼしや海苔についてマグネシウムの過剰が尿路疾患の要因になることがあるとしています。毎日の定番にするより、たらだけの日と組み合わせる日を分けるなど、ほかのレシピと入れ替えながら使うと安心です。
レシピ③ さつまいもとにんじんのなめらかマッシュ
食が細くなって体重が落ち気味の老犬には、さつまいもとにんじんを煮て潰したマッシュが使いやすいレシピです。さつまいも(皮なし・生)は可食部100gあたり126kcal・炭水化物31.9gで、今回の6食材の中でもっともエネルギーが高い食材です。にんじんは32kcalと控えめなので、2つを合わせることで甘みと量のバランスをとれます。
作り方は、皮をむいたさつまいもとにんじんを1cm角に切って水から煮て、どちらにも竹串が通ったら湯を少し残してフォークで潰すだけです。煮汁で固さを調整すれば、ペースト状にもできます。ドライフードに混ぜると粒の表面にまとわりつき、ぱらぱらとこぼれにくくなるのも利点です。
気をつけたいのは、エネルギーの高さが裏目に出るケースです。「よく食べるから」とさつまいもを毎回たっぷり足していると、体重が増えてしまうことがあります。とくに室内で過ごす時間が長くなった老犬は、活動量の割にエネルギーが多くなりがちです。また、にんじんは火の通りがさつまいもより遅いので、先に鍋に入れると煮え具合をそろえやすくなります。
このマッシュは、体重を少し戻したい犬には心強い一品ですが、体重が増えている犬には向きません。使う前に体型チェック(BCS)で今の状態を確認し、「増やしたい犬向け」と割り切って使い分けましょう。
レシピ④ 鶏のゆで汁スープ(水分補給用)
いちばん手軽で、しかも老犬に役立つのが、鶏むね肉をゆでたときのゆで汁をそのままスープとして使う方法です。レシピ①で鶏肉を煮たときの煮汁を捨てずに取っておけば、追加の手間はほとんどありません。鶏のうまみと香りが溶け出しているので、ドライフードにかけるだけで食べ始めのきっかけになることがあります。
このスープの役割は、栄養を足すことより水分を足すことにあります。ドライフードの水分含量は約10%とされ、フードからとれる水分はわずかです。水をあまり飲まなくなった老犬でも、ご飯と一緒なら水分をとりやすくなります。ゆで汁でドライフードをふやかせば、粒がやわらかくなり、噛む力が落ちた犬にも食べやすくなります。
失敗しやすいのは、ゆで汁の表面に浮いた脂をそのまま使ってしまうことです。冷ますと脂が白く固まるので、スプーンで取り除いてから使いましょう。また、ふやかしたフードはドライのままより傷みやすくなります。器に入れたまま長く置いておくのは避けてください。
スープとしてかける量も、フードをふやかす量も、まずは少なめから始めて、飲みっぷりや便の様子を見ながら調整するのがコツです。水分補給の考え方は、後の章でもう少し詳しく解説します。
鶏むね肉とたら、どちらが低脂質?食材6つの栄養を数字で比べる
犬ごはんノート調べ:成分表の数字を1枚に並べると
レシピに使った6つの食材の栄養を、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値で並べてみました。数字で見比べると、「たんぱく源として向く食材」と「エネルギー源として向く食材」の違いがはっきりわかります。
| 食材 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 鶏むね肉(皮なし) | 105kcal | 23.3g | 1.9g |
| まだら | 72kcal | 17.6g | 0.2g |
| 木綿豆腐 | 73kcal | 7.0g | 4.9g |
| さつまいも(皮なし) | 126kcal | 1.2g | 0.2g |
| 西洋かぼちゃ | 78kcal | 1.9g | 0.3g |
| にんじん(皮なし) | 32kcal | 0.7g | 0.2g |
表の値はすべて「生」の状態のものです。煮ると水分が出入りして重さが変わるため、加熱後の重さで計算すると誤差が出ます。正確に把握したいときは、切ったあと・煮る前の生の重さを量っておき、その値で計算するのがコツです。各食材の詳しい数値は、文部科学省の食品成分データベース(鶏むね肉の例)で確認できます。
ありがちな失敗は、ネットのレシピに書かれた「加熱後の重さ」と、自分で量った「生の重さ」を混ぜて計算してしまうことです。どちらで量るかを最初に決めて、毎回同じ方法で量れば、日による差が小さくなります。
肉と魚は「脂質の差」で使い分ける
たんぱく源の鶏むね肉とまだらを比べると、たんぱく質は鶏むね肉が23.3g、まだらが17.6gと鶏むね肉のほうが多く、脂質は鶏むね肉1.9gに対してまだら0.2gと、まだらのほうがさらに少なくなっています。エネルギーは鶏むね肉105kcal、まだら72kcalです。
この差は、使い分けの目安になります。体重を増やしたくない犬や、脂っこいものでお腹がゆるくなりやすい犬には、まだらのほうが扱いやすい場面があります。一方、同じ量でたんぱく質をしっかり足したいなら鶏むね肉が向いています。どちらが優れているというより、その日の体調や体型で選び分けるイメージです。
気をつけたいのは、同じ鶏肉でも部位や皮の有無で数字が大きく変わることです。表の値は「皮なし」のむね肉のものなので、皮つきやもも肉で作れば脂質はこれより多くなります。スーパーで「鶏肉」とだけ見て買ってしまうと、計算した数字と実際の中身がずれてしまいます。
買うときは、パックの表示で部位と「皮なし」かどうかを確認しましょう。皮つきしか手に入らないときは、下ごしらえで皮と黄色い脂の部分を丁寧に取り除いてから使ってください。
いも・かぼちゃは“かさ増し”ではなくエネルギー源
野菜類3つを比べると、エネルギーはさつまいも126kcal、西洋かぼちゃ78kcal、にんじん32kcalで、同じ「野菜」の枠でも4倍近い差があります。炭水化物もさつまいも31.9g、かぼちゃ20.6g、にんじん8.8gと、エネルギーと同じ順番に並びます。
つまり、いもやかぼちゃは「量を増やしてお腹を満たすためのかさ増し」ではなく、れっきとしたエネルギー源です。食が細くなって体重が落ちてきた老犬にはこの性質が役立ちますが、体重が気になる犬に同じ感覚で使うと逆効果になります。かさ増しの役割を求めるなら、エネルギーの低いにんじんのほうが向いています。
もうひとつ、表には載せていないカリウムにも差があります。成分表ではさつまいも480mg、かぼちゃ430mg、にんじん300mg(いずれも可食部100gあたり)です。健康な犬で問題になる数字ではありませんが、持病のために獣医師から食事のミネラルについて指示を受けている犬の場合は、こうした数字も相談の材料になります。
いも類を使う日は、そのぶん土台のフードを減らすのを忘れないこと。野菜ならいくら足しても平気、という思い込みが、手作りを始めてからの体重増加につながりやすいのです。
豆腐はたんぱく源の“補欠”くらいに
木綿豆腐は可食部100gあたり73kcal・たんぱく質7.0g・脂質4.9g・カルシウム93mgです。やわらかく崩しやすいので、老犬の食事に使いやすい見た目ですが、たんぱく質は鶏むね肉の3分の1以下で、脂質は鶏むね肉やまだらより多いことが数字からわかります。
加えて、前述のとおり木綿豆腐はマグネシウムも6食材の中でいちばん多く含みます。こうした点から、豆腐は主役のたんぱく源というより、食感を整えたり、肉や魚に少し混ぜて変化をつけたりする「補欠」くらいの位置づけが扱いやすいでしょう。
やりがちなのは「豆腐はヘルシーだから」と、肉や魚の代わりに毎日たっぷり使うことです。人間の食事でのイメージをそのまま犬に当てはめると、たんぱく質は思ったほどとれず、脂質はむしろ増える、という結果になりかねません。
尿路のトラブルで通院中の犬や、過去に結石を指摘されたことがある犬の場合は、豆腐を使ってよいかどうかを事前に主治医の獣医師に確認しておくと安心です。
玉ねぎ・ぶどうだけじゃない?手作りで入れないほうがいい食材
手作りご飯でいちばん気をつけたいのが、入れてはいけない食材の混入です。まず一覧で整理しておきます。いずれも「必ずこうなる」と言い切れるものではなく、一次情報で注意が呼びかけられている内容をまとめたものです。
| 食材 | 問題とされる点 | 加熱・下処理で変わる? | 手作りでの扱い |
|---|---|---|---|
| 玉ねぎ・ねぎ類(ねぎ・にら・にんにく等) | 有害成分が赤血球を破壊するとされる | 変わらない | 煮汁も含め入れない |
| ぶどう・レーズン | 原因物質不明の急性中毒が報告 | 生でも乾物でも発症 | 入れない |
| チョコレート | テオブロミンが原因で嘔吐・けいれん等 | 変わらない | 入れない |
| コーヒー・緑茶・紅茶 | カフェインで下痢・嘔吐・多尿等 | 変わらない | 入れない |
| 砂糖 | 肥満などの原因になるため与えすぎに注意 | 変わらない | 味付けに使わない |
| 生卵 | 生の卵白を与え続けるとビオチン欠乏で皮膚炎・成長不良の恐れ | 加熱すれば問題ないとされる | 固まるまで加熱 |
| 生のイカ・タコ・エビ・カニ | 魚介類は必ず加熱調理して与えるよう案内されている | 加熱で扱いが変わる | 老犬には使わないのが無難 |
| ほうれん草 | シュウ酸がシュウ酸カルシウム尿石症の原因に | 茹でてアク抜きで減らせる | 使うなら必ず下茹で |
| にぼし・海苔 | マグネシウム過剰が尿路疾患の要因に | 変わらない | ふりかけ代わりにしない |
ねぎ類は「具を除いても煮汁に残る」と考える
玉ねぎ・長ねぎ・にら・にんにくなどのねぎ類は、手作りご飯に入れない食材の代表です。環境省のガイドラインでは、タマネギなどに含まれる有害な成分(アリルプロピルジスルフィド)が赤血球を破壊し、大量に食べると血尿や下痢、嘔吐、発熱などを引き起こすおそれがあると説明されています。
ここで大事なのは、加熱しても性質が変わらないとされる点と、具だけでなく煮汁にも注意が必要な点です。人間用の味噌汁やスープから玉ねぎだけを取り除いても、その汁を犬のご飯にかければ意味がありません。ハンバーグやコンソメスープ、カレーなど、ねぎ類が見えない形で入っている料理も多いので、取り分けは避けるのが確実です。
やりがちな失敗は、市販の「野菜スープ」や「だし」を手作りご飯の煮汁代わりに使うことです。原材料に玉ねぎエキスやガーリックが含まれていることがあり、塩分の問題も重なります。
対策はシンプルで、煮るときは水だけを使い、材料は自分で皮をむいて切ったものに限ることです。「うまみを足したい」ときは、鶏むね肉や白身魚を一緒に煮れば、それだけで十分に香りが出ます。
ぶどう・レーズンは量に関係なく入れない
ぶどうとレーズンも、手作りご飯やおやつに使わない食材です。県獣医師会の会誌に掲載された臨床報告では、ぶどう中毒はぶどうを摂取することによって起こる急性中毒疾患で、原因物質はいまだ不明であり、生で食べてもレーズンなどの乾物で食べても発症すると説明されています。
同じ報告では、臨床症状として食欲減退、嘔吐、下痢などが挙げられ、摂取から数時間後には症状が現れるとされています。原因物質がわかっていないということは、「この品種なら大丈夫」「少量なら平気」といった線引きができない、ということでもあります。
手作りご飯で見落としやすいのは、レーズンが入ったパンやシリアル、焼き菓子を「ご褒美に少しだけ」と与えてしまうケースです。果物のトッピングを考えているときに、ぶどうを「皮をむけば」と例外扱いしてしまうのもありがちな勘違いです。
果物を使いたい場合は、ぶどう以外の果物でも犬に与えてよいとされているかを一次情報で確かめてからにしましょう。誤って食べてしまった場合は、症状が出る前でも早めに動物病院に連絡して指示を受けてください。
チョコ・カフェイン・砂糖は「味付け」から入り込む
チョコレート、コーヒーや緑茶・紅茶などのカフェイン飲料、そして砂糖は、手作りご飯の材料として使うことはまずないはずですが、「味付け」や「香りづけ」の形で入り込むことがあります。環境省のガイドラインでは、チョコレートはテオブロミンが原因で嘔吐、下痢、発熱、けいれんの発作などを起こすと説明されています。
カフェインを含む飲料については、下痢、嘔吐、体温不調、多尿、尿失禁、てんかんの発作などを起こすことがあるとされています。砂糖については、犬は甘みのある食べ物が大好きで、肥満などの原因になるため与えすぎに注意するよう呼びかけられています。
よくある失敗は、さつまいもやかぼちゃの甘みを引き出そうとして砂糖やはちみつを加えることや、人間用のかぼちゃの煮物(砂糖と醤油で味付けしたもの)を取り分けることです。また、お茶で炊いたご飯やほうじ茶風味のおやつなど、カフェインが入っていることに気づきにくい食品もあります。
いもやかぼちゃは、よく煮るだけで十分に甘みが出ます。手作りご飯に使う液体は「水と、犬用に作った煮汁だけ」と決めておけば、こうした混入は防げます。
加熱・下処理で扱いが変わる食材の見分け方
一覧の中には、生卵やほうれん草のように、加熱や下処理で扱いが変わるとされる食材もあります。環境省のガイドラインでは、生の卵白によるビオチン欠乏は加熱調理すれば問題はないとされ、ほうれん草のシュウ酸は茹でてアク抜きをすることで量を減らせると説明されています。
一方で、イカ・タコ・エビ・カニなどの魚介類は、環境省のガイドラインで必ず加熱調理して与えるよう案内されていますが、加熱しても噛む力が落ちた老犬には弾力があって飲み込みにくい食材です。老犬の手作りご飯では、わざわざ選ぶ理由は少ないでしょう。にぼしや海苔は、マグネシウムの過剰が要因となって尿路疾患を引き起こすことがあるとされ、加熱で性質は変わりません。
やりがちなのは「ほうれん草は茹でればいい」と聞いて、茹でたあとの湯ごと使ってしまうことです。シュウ酸は茹で汁に出るので、湯は捨て、水にさらしてから使うのがアク抜きの意味です。同じように、にぼしでだしをとって煮汁に使うのも、マグネシウムの面から避けたい使い方です。
迷ったら「加熱すれば問題ないとされる食材だけを、必ず加熱して使う」「加熱しても変わらない食材は使わない」の2つで判断しましょう。
噛めない・飲み込みにくい老犬には?食べやすくする3つの工夫
「小さく・やわらかく・とろみ」をセットで考える
噛む力や飲み込む力が落ちてきた老犬には、食材を「小さく切る」「やわらかく煮る」「とろみでまとめる」の3つをセットで考えると、食べやすさが変わります。どれか1つだけでは足りないことが多く、たとえば小さく切っても硬ければ噛めませんし、やわらかくてもぱらぱらと散らばると口の中でまとまらず、飲み込みにくくなります。
とろみが役立つのは、食材を口の中でひとかたまりにまとめてくれるからです。この記事のレシピでは、かぼちゃやさつまいもを潰して煮汁と混ぜる方法で、とろみ剤を使わずにまとまりを出しています。たらと豆腐のとろとろ煮のように、食材そのものの水分でやわらかさを出すのも同じ考え方です。
失敗しやすいのは、食べやすくしようとして水分を増やしすぎ、さらさらのスープ状にしてしまうことです。さらさらの液体は、むしろ飲み込むタイミングが合いにくいことがあります。また、大きめの肉の塊が残ったまま与えると、丸のみしてのどに詰まらせる心配があります。
切る大きさは1cm角を目安に、噛む力が落ちている犬ほど細かく刻むか潰しましょう。仕上げにスプーンで持ち上げてみて、形を保ちながらゆっくり落ちるくらいのかたさが、ひとつの目安になります。
水分は「ご飯で飲ませる」発想で
老犬の食事で見落とされやすいのが水分です。環境省のガイドラインによると、水は犬や猫の体の60〜80%を占める重要な要素で、体に必要な水分のほとんど(90〜95%)は飲み水とフードからとられます。必要な量はフードの種類や気温、運動量などによっても大きく変わるため、いつでも新鮮な水を飲めるようにし、特にドライフードを与えるときは必ずフードのそばに新鮮な水を置くよう案内されています。
ここで効いてくるのが、フードの水分量の差です。ペットフード協会の区分では、ドライフードは製品水分10%程度以下、ウェットフードは水分75%程度です。つまり、ドライフード中心の食事では、必要な水分のほとんどを飲み水でとらなければなりません。水皿まで歩いていくのがおっくうになった老犬や、水をあまり飲まなくなった老犬では、ここが不足しやすくなります。
よくある失敗は、水皿の水が減っていないことに気づかず、「ご飯は食べているから大丈夫」と考えてしまうことです。食事の量と水の量は別々に確認する必要があります。
対策としては、レシピ④の鶏のゆで汁スープをフードにかける、ふやかして与える、たらと豆腐のとろとろ煮のように水分の多いトッピングを選ぶ、といった「ご飯で飲ませる」工夫が役立ちます。水皿は寝床の近くにも置いておくと、飲む機会が増えます。
食べないからと量や種類を増やすのは逆効果になりやすい
老犬がご飯を残すようになると、つい「もっとおいしいものを」「もっとたくさん」と、トッピングの種類や量を増やしたくなります。けれども、これが逆効果になることは少なくありません。食べない理由が、味ではなく、噛みにくさや飲み込みにくさ、体調の変化にある場合も多いからです。
トッピングを増やすと、食べた日は安心できますが、今度は「トッピングだけ食べてフードを残す」という状態になりがちです。すると栄養の土台である総合栄養食の割合が下がり、手作りだけで食事を組むのと同じ状態に近づいてしまいます。量を増やしたぶんだけエネルギーも増え、食べる日と食べない日の差が大きくなることもあります。
まず見直したいのは、食材の大きさとやわらかさ、温度、食器の高さや姿勢といった「食べやすさ」の部分です。首を下げる姿勢がつらそうな老犬なら、食器の高さを変えるだけで食べ方が変わることもあります。食器の素材や高さの考え方は、下の記事で解説しています。

そのうえで、食欲や便の様子がいつもと違う状態が続くとき、急に食べなくなったときは、食事の工夫で様子を見続けずに獣医師に相談してください。食べないことが体調の変化のサインである可能性もあるからです。
こんな飼い主さんには、この始め方
老犬の手作りご飯は、犬の状態と飼い主さんの生活によって、向いている始め方が変わります。代表的なケースを4つに分けて整理しておきます。
食が細くなって体重が落ちてきた犬には、エネルギーのあるさつまいもとにんじんのマッシュや、鶏むね肉とかぼちゃのやわらか煮が使いやすいでしょう。香りで食べ始めのきっかけを作り、そのままフードまで食べ進めてくれるかを見ます。硬い粒を噛みにくそうにしている犬には、まず鶏のゆで汁スープでフードをふやかすところから。手作りの食材を足すのは、それで食べ方が変わるかを見てからでも遅くありません。
体重が増え気味の犬には、脂質の少ないまだらや、エネルギーの低いにんじんを中心にします。いも類は控えめにして、足したぶんのフードを確実に減らしてください。仕事などで毎日作る時間がとれない飼い主さんは、週末にまとめて作って冷凍し、1回分ずつ解凍する方法が現実的です。保存の注意点は次の章で解説します。
どのケースでも共通しているのは、「土台は総合栄養食」「手作りは少量から」「体重と便で確認」の3つです。療法食を与えている犬については、次の章で扱います。
作り置きは何日もつ?保存・切り替え・体重チェックの続け方
冷蔵はその日のうち、翌日以降に使うなら冷凍
手作りご飯の保存について、環境省の現行ガイドラインに手作りフード専用の日数の目安はありません。ただ、同じく水分の多いウェットフードについては、使用期限の目安を「開封後1日」とし、余った場合は別の容器に移し替えて冷蔵庫で保存してその日のうちに使い切ること、1日以上保存する場合は冷凍保存して与える際に解凍する方法もあることが示されています。同じガイドラインは手作りフードも水分が多く品質の低下が早いものとして扱っているので、この目安に合わせるのが安全です。
手作りご飯は、ドライフードと違って水分が多く、保存料も入っていません。缶詰やレトルトと同じく、酸化や腐敗、有害微生物の繁殖といった品質の変化が早い食べ物だと考えておく必要があります。人間の作り置きおかずの感覚で「冷蔵庫で数日はもつ」と考えるのは危険です。
なお、同じガイドラインでは、冷凍保存したものは食味等を損なう場合がある、ともされています。冷凍すれば長くおいしさが保てるわけではない点も押さえておきましょう。
原因:人間の作り置きおかずと同じ感覚で、鍋ごと冷蔵庫に入れて数日かけて使ってしまう。
対策:作ったら冷ましてすぐ1回分ずつ小分けにし、当日分以外は冷凍する。使う日に1回分だけ冷蔵庫で解凍し、解凍したものはその日のうちに使い切る。
小分けにするときは、製氷皿や小さな保存容器を使うと、1回分の量がそろって計算も楽になります。容器には作った日を書いておき、古いものから使いましょう。
器に出したら20分で下げる
保存と同じくらい大切なのが、器に出したあとの扱いです。環境省のガイドラインでは、ウェットフードは食器に出した後の酸化、腐敗、有害微生物の繁殖等の品質の変化がドライフードに比べて早いため、20分程度を目安に片付けるよう説明されています。手作りフードも水分が多く品質の低下が早いとされているので、同じ目安で扱いましょう。
老犬は食べるペースがゆっくりになったり、途中で休んでからまた食べに来たりすることがあります。そのため「そのうち食べるだろう」と器を置いたままにしがちです。けれども、手作りのトッピングをのせたフードやふやかしたフードは、置いている間に傷みが進みます。とくに気温の高い季節や暖房の効いた部屋では注意が必要です。
やりがちな失敗は、20分たって残っていた分を冷蔵庫に戻し、次の食事で再び出すことです。一度器に出して犬が口をつけたものは、保存しても品質の変化を止めきれません。残した分は処分しましょう。
毎回残してしまう場合は、1回の量が多すぎるか、食べにくさに原因がある可能性があります。量を減らして回数を分ける、食材をもっとやわらかくする、といった見直しにつなげてください。
手作りを足すときの切り替えと、体重・BCSの確認
いつものフードに手作りを足し始めるときも、フードを切り替えるときと同じで、一度に大きく変えないことが基本です。急に食事の中身が変わると、お腹がゆるくなるなど、消化の面で負担がかかることがあるからです。少量から始めて、便の様子を見ながら進めましょう。
体型の確認に使うのがBCS(ボディコンディションスコア)です。環境省のガイドラインでは、1(痩せ)から5(肥満)の5段階で、3が理想的な体型とされています。理想の目安は、過剰な脂肪の沈着なしに肋骨が触れ、上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られ、横から見て腹部の吊り上がりが見られる状態です。
手作りを足してから体重が増えてきた場合は、まず足したトッピングのぶんも含めた1日の総量を見直しましょう。同じガイドラインでは、おやつを与えた分だけ主要な食事の量を減らすこと、本格的なダイエットが必要な場合は必ず獣医師の指導の下で行うことが案内されています。老犬は筋肉が落ちて体重が減ることもあるので、数字だけでなく触った感触もあわせて確かめましょう。

療法食を食べている老犬に手作りを足すときは
病気の治療のために療法食を与えられている老犬の場合、手作りのトッピングを自己判断で足すのは避けてください。日本獣医師会の資料では、療法食は、特定の疾病または健康状態の犬猫に対し、獣医師の診断に基づく治療の中で食事療法に利用することを目的とし、獣医師の指導のもとで与えることを意図したものとされています。
療法食は、治療に合わせて栄養の中身が調整された食事です。そこに鶏肉やいも類を足すと、たんぱく質やミネラルのバランスが、獣医師の想定とは違うものになってしまう可能性があります。ペットフード公正取引協議会も、療法食は病名の記載ができる唯一の区分である一方、あくまで治療の補助であり、フードで病気を予防・治療できるかのような表示はできないとしています。
よくあるのが「療法食を食べてくれないから、何かのせれば食べるかも」と、飼い主さんの判断でトッピングを始めてしまうケースです。食べてくれた安心感はあっても、治療の計画からは外れてしまいます。
療法食を食べない、手作りを取り入れたいと考えたときは、まず主治医の獣医師に相談しましょう。療法食は「獣医師の指導のもとで与えるもの」なので、足してよいものや量も、その指導の中で決めていくのが筋道です。療法食の位置づけは日本獣医師会の資料(PDF)で確認できます。
まとめ|老犬手作りご飯レシピを簡単に続けるコツ
老犬の手作りご飯というと、栄養計算をして毎日一から作るものと考えがちです。けれども、ペットフードの表示ルールを見ると、専門メーカーの一般食でさえ「別に栄養補給が必要」と書く決まりがあり、手作りだけで栄養を完結させるのは簡単ではありません。だからこそ、栄養の土台は総合栄養食にまかせ、手作りは食べやすさと香り、水分を足す役割に絞るのが、無理なく続けられる現実的な形です。
最初の一歩としておすすめなのは、鶏むね肉を水だけで煮て、そのゆで汁でいつものフードをふやかしてみることです。追加の食材も調味料もいらず、鍋ひとつで試せます。食べ方や便の様子に変化がなければ、次にかぼちゃを一緒に煮たやわらか煮、たらと豆腐のとろとろ煮、さつまいもとにんじんのマッシュと、少しずつ種類を広げていきましょう。そのときは、足したぶんのエネルギーだけ土台のフードを減らすことを忘れずに。
老犬に必要な量は、公的な計算式にも専用の係数がなく、犬ごとに違います。レシピの分量より、目の前の犬の体重とBCS、便と水の飲み方が、いちばん確かな判断材料です。療法食を食べている犬は、手作りを足す前に主治医の獣医師に相談してください。
※表示ルールや食品成分の数値は、環境省のペットフード安全法のページなど各公式資料の最新版もあわせてご確認ください。

コメント